「労働力の高齢化」という課題も
「産業用IoT」に失敗する企業が陥る5つの落とし穴
製造業の企業にビジネスチャンスをもたらす産業用IoT(IIoT)。最新の技術を使っても幾つかの課題を解決しないと、そのメリットを享受できない。5つの課題を紹介する。
物質世界ではデジタル化が進んでいる。常に相互通信を行い、膨大な量のデータを生み出すスマートデバイスが急増している。このデータは、今日のビジネスのあり様を変化させている。データ分析のリアルタイム性を後押ししている産業用IoT(IIoT)は、ビジネスリーダーに新しいチャンスと課題を同時にもたらしている。あるレポートでは、調査対象となった工業または医療に従事する企業の幹部職員の半数が、自社設備に点在する多種多様なデータを統合して解釈するのに必要な人材が不足していると答えている。にもかかわらず、そのうち72%の企業は、1年以内にビッグデータ戦略を導入できなければ自社の市場シェアを失うことを危惧している。では、そのような企業がビッグデータにひるんでいる理由は何だろうか。本稿では、IIoTの時代に企業が直面している課題トップ5を以下に紹介する。
1.生産設備の可視性
生産目標を達成するには、運用担当者がリアルタイムで生産設備を監視して、最適なレベルで生産設備が運用されるようにしなければならない。さらに、運用担当者には、機器に異常が発生する前に異常を検知して問題に対処できるべく機器の状態をより詳しく確認して、より正確に理解することも求められている。運営担当者は生産設備のパフォーマンスを管理することで、設備に障害が発生する頻度といった非常に重要な疑問への答えが得られる。その答えに基づいて、設備の保守方法、障害やダウンタイムの回避策に優先順位を付けることができる。
2.テクノロジーの統合
これまで、産業テクノロジーの管理は、情報テクノロジー(IT)と運用テクノロジー(OT)との間で分けられていた。ITはデータドリブンなインフラを導入して保守するというトップダウン方式で運用される。一方のOTは土台から作り上げる方式で、まず設備と資産ありきで、その後に監視や産業統制システムに着手する。しかし、機器がスマート化し、IIoTが普及したことで、ITとOTの領域は融合するようになっている。それぞれ異なる独立したシステムアーキテクチャで開発されたITとOTは、データの損失や脆弱(ぜいじゃく)性をもたらすことなく、安全に統合できなければならない。
3.労働力の高齢化
米国の労働統計局は、米国労働者の年齢の中央値が2024年までに42.4歳になると予測している。こうした労働力の高齢化が、多くの業界に影響を及ぼすのは想像に難くない。経験豊富な従業員が定年退職を迎えると、スキル不足が生じることが予想される。若い世代が新しいスキルをもたらす中で、年長の従業員が退職するまでに、彼らが蓄積してきた知識を取り込んで、新しい従業員がそれを参照できるようにすることは非常に重要だ。企業は近い将来起こる労働力の高齢化に備えなければならないが、デジタルテクノロジーを使って、労働力の遷移をスムーズに行うことはできる。
データの管理プロセスに変化をもたらしている高度なクラウドコンピューティングとソフトウェア技術は、高齢層よりもデジタルに詳しい若い世代に受け入れられている。モバイルで使用できるシンプルなインタフェースを備えたデータ管理と分析のテクノロジーにより、企業全体の生産性は大幅に向上し、データを手作業でまとめて見直すのにかかっていたコストも削減されている。そして、保守の問題をより正確に予測して、設備に起こる不測の事態を防ぐことができれば、業界全体で年間数十億ドルのコスト削減が実現するだろう。
4.データアイランド
どんな企業でも、膨大な量の情報に遅れず対応するのは難しい。ほとんどの企業は、低コストのストレージテクノロジー、検出テクノロジー、通信テクノロジーから寄せられる大量のデータに四苦八苦しており、データの正しい活用方法を特定している企業は少数だ。コストを抑えた従来のコンピューティング方式で、構造化も文脈化もなされていないビッグデータ全体を保管して分析するのは容易でない。その結果、データアイランドが生じる可能性がある。
データアイランドは、より大きなデータ戦略の背景を考慮せずに運用の意思決定を下した際の副産物か、データガバナンスシステムを用いずに新しいテクノロジーをレガシーシステムに適用した結果として生じるものだ。こうしてデータがサイロ化することで、技術的にも組織的にも厄介な問題が現れる。例えば、工場やオフィスの各所にデータが分散していると、それを手作業でまとめて分析するのは手間もコストもかかる。実際にデータがまとまる頃には、そのデータの価値は既になくなっていることもある。
5.サイバーセキュリティ
何十億もの資産がスマート化し、ネットワークに接続されてクラウド上にデータを保存するようになると、デジタルプライバシーのリスクが生じることになる。サイバー攻撃は、個人のデバイスや企業のITシステムをさまざまな脅威にさらし、個人や団体を問わず、財政や業務にダメージを与えやすくする。ビジネスリーダーの間では、このようなリスクを緩和する必要性が認識されるようになり、ベンダーはサイバー事件を防ぐためのソリューションを導入するようになっている。だが、産業組織はデジタルテクノロジーに投資を続ける中で、セキュリティ機能も選択基準に含めて考えなければならない。
産業組織が現在直面しているIIoTに関する課題は、かなり手ごわいものであるように思えるかもしれない。しかし、最新のインテリジェントなデータ管理システムと分析システムを導入して体系的に取り組む意思がある企業なら、このような課題は生産性を高めて成長するための革新的なビジネスチャンスにもなり得る。
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