先駆的5社が証明した「IIoT」の底力【前編】
IoTで普通のポンプが「スマートポンプ」に変身? 重電大手Schneiderが挑戦(1/2 ページ)
産業用IoT「IIoT」で大きく前進した世界的な製造業は、製造プロセスの改善やコスト節約などのメリットを享受している。前編では先駆的な5社のうち、2社の取り組みを追う。
ITコンサルティング会社のAccentureが最近、IoT(モノのインターネット)とIIoT(産業用IoT)に関して大々的に宣伝し、最新の研究で「2030年までにIIoTによって生み出される経済価値は、世界中で15兆ドルに達すると推定できる」と発表した。
IT調査会社Forrester Researchでバイスプレジデントと主席アナリストを務めるフランク・ジレット氏によれば、この宣伝は真実に裏付けられたものだという。企業はコストとダウンタイム(サービス停止時間)を抑えて顧客のエクスペリエンス(経験価値)を高めたいと考えており、IIoTの話になると真剣な顔をするのだ。
「企業が望んでいるのは、より高いレベルで自社の製品について再考するチャンスを得られることだ」とジレット氏は語る。「新しいコンプレッサーにセンサーを取り付けるだけでは十分とはいえない。そのコンプレッサーを売り込み、新しい分析システムが生成するデータに基づいて顧客に従量課金モデルを提供するやり方を変えたとき、本当に状況を改善することができる」(同氏)
米マサチューセッツ州ニーダムに本拠地を置くIIoT団体Industrial Internet Consortiumで専務取締役を務めるリチャード・マーク・ソーレイ氏は、次のように述べる。「製造拠点が1980年代以降大きく縮小した米国にとって、IIoTを導入した企業は期待の星だ。製造業界を一気に回復させられる見込みがある」
企業はIIoTによって実際に前進している。大手化学製造業の3Mが導入した、交換パーツを自動で注文する水ろ過システムや、大手制御機器製造Honeywell InternationalのビジネスユニットHoneywell Process Solutionsによる、石油精製所のダウンタイム短縮を目指した再設計プロセスへの取り組みなどが、その代表例だ。
Schneider Electric
重電製造の世界的大手であるSchneider Electricは、分析によって現場の工場を近代化することで、生産部門の効率を高めようとしている。
フランスに本拠地を置くSchneider Electricの工業部門で戦略事業のシニアバイスプレジデントを務めるグレッグ・コナリー氏は、次のように語る。「IIoTを利用する企業や世界的な大型メーカーが享受できるデジタル化のメリットは、スマートな製造、設備のパフォーマンス管理、オペレーターの強化のいずれかに該当する」
製造業は工場の使用状況について詳細に分析することで、運用を強化すべきものと運用を控えるべきものについて、より良い判断が下せるようになるとコナリー氏は説明する。「以前は、工場から製品が出荷された後にデータマイニングをするのが通例だった。今では工場の状態をリアルタイムで分析できる。これによって市場にチャンスが到来した際の対応が早くなるだけでなく、製品品質や設備の可用性にもプラスの効果がある」(同氏)
IoTを生かした設備のパフォーマンス向上策の一例として、Schneider Electricはポンプのパフォーマンスを監視するデジタル処理装置を挙げる。インターネットに接続できるこのデジタル処理装置は、デジタル化ができていないハードウェアにインテリジェンス(知性)を付与するための“デジタルラッパー”として機能する。「ポンプ自体はスマートではないものが多い。だがこのデジタル処理装置に接続すれば、高いインテリジェンスを得ることができる」とコナリー氏は語る。
Schneider Electricは、オペレーターの強化も重視している。コナリー氏によれば、米国内の精製所作業員の約半数は、5~7年後に定年退職する。そのため同社は、若手世代の育成に向けたタブレットベースのアプリケーションを研究しているという。プラントの作業員がタブレットを使用して、作業の進行情報や設備の状態、技術マニュアルなど、現場のスタッフがオペレーターに伝えたい重要な情報にアクセスできるようにするためだ。
タブレットの活用で、エンジニアはプラントに居ながらマニュアルを読んだり、データを処理したり、メモを読んで追加したり、各デバイスの状態を確認したりできるようになる。調査によって、10時間シフトのメンテナンス作業者が実際に機器のメンテナンス作業をしている時間は、2.5時間程度しかないことが明らかになった。残りの時間はオフィスまで車で移動して、マニュアルを見つける作業に費やしている部分が大きいという。「この状況を踏まえれば、タブレットでマニュアルを読めるというのは大きな進歩だ」とコナリー氏は強調する。
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