「移行ツールがあるから安心」は危険?
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
Broadcomは2026年8月、VMwareの仮想マシンを扱うSDK「VMware Virtual Disk Development Kit」(VDDK)の一般公開を停止した。VMware環境から他の仮想化基盤への移行を検討する企業が確認すべきポイントを整理する。
VMware環境から別の仮想化基盤への移行を検討している企業に、新たな確認事項が浮上した。Broadcomは2026年8月25日、VMware仮想マシン(VM)を扱うためのSDK(ソフトウェア開発キット)「VMware Virtual Disk Development Kit」(VDDK)の一般公開を停止した。
VDDKは、Microsoftの「Azure Migrate」、Red Hatの「Migration Toolkit」、Nutanixの「Move」など、VMware環境から別の基盤へ移行するためのツールでも利用されてきた。Broadcomによる変更によって、こうした移行ツールを利用する際の条件や方法に影響が出る可能性がある。BroadcomはなぜVDDKの一般公開を停止したのか。企業が確認すべきポイントは。
「BroadcomがVDDKの一般公開を停止」で確認すべき点は
Broadcomは米TechTargetに対し、VDDKは本来、ライセンスを持つVMware顧客のVMをバックアップ、リカバリーするために、同社のTechnology Alliance Program(TAP)パートナーが利用するものだと説明した。
同社によれば、VDDKで認められている用途は以前からバックアップとリカバリーだ。今回の公開方法の変更は、そのライセンス条件を改めて徹底するものだという。Broadcomはさらに、VDDKはVMware製品を購入した顧客に付随する権利ではなく、独自の開発者向けライセンスが適用されるSDKだとしている。
VDDKは、これまでBroadcomの開発者向けWebページから無料でダウンロードできた。複数のITインフラベンダーは、このVDDKをVMware環境から他の仮想化基盤へ移行するためのツールに利用してきた。
公開ページからVDDKを取得できなくなったことで、一部のベンダーは対応を迫られている。Red Hatは、VDDKがプロプライエタリなソフトウェアであるため、そのままコピーしてオープンソースの代替物を用意することはできず、現時点では直接的な代替策がないとしている。
「VMwareから移行できなくなる」という意味ではない
注意したいのは、VDDKの一般公開停止が、そのまま「VMwareから他の仮想化基盤へ移行できなくなった」ことを意味するわけではない点だ。
外部ストレージシステムを利用するなど、VMware環境から別のプラットフォームへ移行する方法は他にも存在する。Broadcomの変更以前にVDDKをダウンロード済みの顧客もいる。
問題になり得るのは、これから移行方法や移行ツールを選定する企業だ。
Moor Insights&Strategyのアナリスト、マイク・レオーネ氏は、移行ツールが今後もVDDKを利用できるかどうかは、企業が契約しているベンダーがBroadcomとのライセンス条件の下でVDDKを正規に取得、利用できるかに左右される。そこでユーザー企業はベンダーに、VDDKをどのような方法で入手しているのかを確認すべきだとの見方を示した。
調査会社IDCのアナリスト、マシュー・フルーグ氏も、VMwareからの移行を検討する情報システム部門(情シス)は、移行支援ツールがVDDKにどの程度依存しているのかをベンダーに確認する必要があると指摘する。
フルーグ氏は、VDDKは本来VMwareから他の基盤への移行を支援する目的で提供されたものではないと説明する。一方、VDDKを利用できなくなることで、VMwareから他製品へ移行する際の選択肢が狭まり、ベンダーロックインにつながる可能性は高まるとの見方を示す。
VMware移行で情シスが確認すべきこと
VMware側の変更を受け、情報システム部門は「移行ツールがあるから移行できる」とだけ考えるのではなく、そのツールがどの技術やライセンスを前提にしているのかまで確認する必要がある。
特に確認したいのは、採用候補の移行ツールがVDDKに依存しているか、現在も正規の方法でVDDKを利用できるか、VDDKを利用できない場合に別の移行方法を用意しているか、といった点だ。
では、具体的に何を確認すればよいのか。まず移行ツールの提供ベンダーに、そのツールがVMwareの仮想ディスクを読み出す際にVDDKを利用しているのかを確認したい。VDDKを利用している場合は、どのような契約やライセンスに基づいてVDDKを取得、利用しているのかも確認する必要がある。
これらの確認事項は、VDDKの変更後も想定していた移行ツールを継続して利用できるのかを見極めるためだ。加えて、今後VDDKを利用できなくなった場合でも同じツールを使って移行を続けられるのか、それとも別の移行方式へ切り替える必要があるのかも確認しておきたい。
移行方式そのものの確認も必要になる。VMware環境の移行には、VDDKを利用する方法以外にも、外部ストレージを利用する方法などがある。
候補となる製品について、「VDDKを使えない場合にどのような代替手段があるのか」「代替方式に切り替えると追加の製品やストレージが必要になるのか」といった条件まで確認しておけば、VDDKの利用条件が変わった場合の影響を判断しやすい。さらに、移行方式が変われば停止時間や移行期間などに影響する可能性もあるため、自社環境で許容できる条件かどうかを併せて確認したい。
契約前に移行テストを実施しておくことも選択肢になる。ベンダーが「VMwareから移行できる」としていても、自社が利用するVMware環境やストレージ構成、VMの規模によって必要な手順や条件が異なる可能性がある。
代表的なVMを使って事前に移行を試し、必要な停止時間やデータ転送、移行後に正常に起動できるかを確認しておけば、本番移行の直前になって想定外の制約が判明するリスクを抑えやすい。
もう1つ確認したいのが、VMware契約の更新時期だ。BroadcomによるVMware買収直後に3年契約を結んだ顧客は更新時期を迎えつつある。契約更新をきっかけに他の仮想化基盤への移行を具体的に検討している企業は、更新直前になってから移行可否を調べ始めるのではなく、契約更新時期から逆算して、移行方式の調査や移行先の選定、必要に応じたPoCを進めておくことが重要になる。
VDDKの変更の影響を受けやすいのは、追加の移行製品やストレージを購入せず、ベンダーの移行ツールを利用してコストを抑えようとする比較的小規模な企業だとの見方もある。
アナリストのキース・タウンゼント氏は、大企業ではサポートされた移行ツールを利用するケースが多い一方、価格を重視する企業ほどVDDKを利用した方法を選択する可能性があると指摘している。
VMwareの契約更新を機に他の仮想化基盤を比較する企業にとって、製品価格や移行先の機能だけでは十分ではない。「その移行ツールは何に依存しているのか」「その技術を今後も正規に利用できるのか」「利用できなくなった場合の代替策はあるのか」まで含めて確認する必要がある。
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