高性能CPUや高速スケールアウトが必要なら
専用OS、3つの選択肢――Unikernel、Microkernel、Exokernelとは?
大量のデータ処理を必要とするアプリケーションには、専用OS、すなわちリアルタイムOS(RTOS)の方が役に立つかもしれない。この種のOSには幾つかの選択肢がある。
高性能のCPUや高速スケールアウト機能が求められるアプリケーションでは、汎用(はんよう)OSを排して専用OSを使うメリットがあるかもしれない。
現在、一般的なOSには「Windows」「macOS」「iOS」「Android」「Linux」などがある。こうした汎用OSは、いずれも独立して開発された各種のアプリケーションに対応し、幅広い機能が利用できる。
アプリケーションは大抵の場合、IT部門が採用するOSと連動する形で開発される。たとえDockerコンテナで運用するWebアプリケーションであっても、一般的には特定のOSやWebサーバやデータベースと連動させる。クロスプラットフォームアプリケーション開発という選択肢もあるものの、IT部門がいずれ採用する予定のOSやライブラリスタックを使ってアプリケーションを開発した方が効率のいいこともある。汎用OSを使ってアプリケーションを構築した方が、開発ツールが充実していることからプログラミングの生産性が高く、利用できる人材も豊富なため開発コストを抑えられるかもしれない。
ただし本番環境では生産性が低下する。これは、汎用OSが極めて非効率的で、そのアプリケーションが必要とせず、使うこともない機能のためにリソースを大量に消費することが原因だ。
利用可能なOSに関しては、IT業界が検討すべき選択肢は他にもある。
汎用OSの難点
筆者は自分のキャリアのほとんどを、汎用OS搭載のアプリケーション開発などの業務に費やしてきた。一方で、約15年間かかわってきた通信機器は、そのアプリケーション独自のニーズに合わせた専用OSを搭載していた。
そうした端末は大抵が小型から中型の装置で、コストの制約があるためハードウェアは最低限に抑えてある。筆者がアプリケーション開発の際に利用したのは、必要なもののみを搭載し、それ以上は何も搭載していない手製のOSだった。OSとアプリケーションはPROM(Programmable ROM)に保存し、ファイルシステムさえも必要としない。メモリは固定量のみを割り当て、ガベージコレクションの必要性をなくすことによって、極めて単純なメモリ管理を実現した。
仮想マシン(VM)のコンセプトの人気が高まると、筆者はこのハードウェアで対応できるVMの数について考えるようになった。個々のアプリケーションを専用OS上でホスティングすれば、非常に効率は高い。だがわれわれは誰もが最もシンプルな方法、すなわちWebサーバベースのアプリケーションと、恐らくはデスクトップをクラウドに置く方法を重視していたことから、その考えは捨てた。個別のVMよりも高速でオーバーヘッドが少ない代替として導入されたコンテナは、現実的にはパフォーマンスよりも、インフラ共有のセキュリティの側面にとっての重要性の方が大きい。
だが、ストレージよりもはるかに多くのコンピューティングリソースを消費するアプリケーションの場合はどうなのか。あるいは、新しいインスタンスができる限り瞬時に起動できる能力が求められる場合、そしてクラウドサービスのコストモデルがよりCPU指向になった場合は。かつてない量のデータを処理する機械学習への関心が高まる中で、そうした疑問の重要性は増している。
専用OSの選択肢
汎用OSの代替には複数のオープンソース製品と商用製品があり、以下の3陣営に分類できる。
Unikernel
「MirageOS」アーキテクチャと呼ばれることもある「Unikernel」は、仮想メモリおよびユーザーとカーネルモードの切り替えに伴うオーバーヘッドを避けるというコンセプトに基づく。アプリケーション開発者はライブラリの中から必要とする機能を選ぶこともできる。そうしたライブラリは、高速起動に適した単一のイメージとしてアプリケーションに組み込まれる。ハイパーバイザーで運用しなければならないアプリケーションであれば、開発者はハードウェアデバイスドライバの代わりにハイパーバイザーとの通信に対するサポートを組み込まなければならない。こうしたシステムは、LinuxやXenベースのハイパーバイザーに使われる傾向がある。
UnikernelベースのVMはサイズを5~10MB程度と非常に小さくでき、起動時間はわずか20ミリ秒まで短縮できる。だが、いったん起動すると、そのアプリケーションはCPUやネットワークやファイルシステムをフルに活用できる。このOSはフルシステムコンパイラ最適化が可能なことからオーバーヘッドが少ないだけでなく、実行されるコードは極めて効率性が高い。
Unikernelを実装しているOSの実例としては、Linux FoundationとXen ProjectのMirageOS、Microsoft Researchの「Drawbridge」、NEC Laboratories Europeの「ClickOS」、Galoisの「HaLVM」、Cloudius Systemsの「OSv」などがある。
Microkernel
「Microkernel」もやはりライブラリをベースとしているが、汎用OSが使っている従来型のリングプロテクションをベースとしたセキュリティアーキテクチャに対する依存度が大きい。違いはこのカーネルが最小限の機能のみを直接サポートしていることと、機能をオプションのユーザーモードライブラリにプッシュすることにある。例えばこのアーキテクチャでは、ハードウェアデバイスドライバはユーザーモードコードになる。そうしたライブラリは、単一用途のアプリケーション用に直接的なユーザーモード機能コールとして実装され、コンテキスト切り替えとリング横断の両方を避けることによって、従来型のカーネルに比べてパフォーマンスが向上する。
Microkernelのコンセプトはかなり以前から存在していたが、初期の実装の中には期待されたようなパフォーマンス向上を実現できないものもあった。だが、例えば通信機器のような小型デバイスに搭載される単一用途のアプリケーションとしては非常に人気が高く、リアルタイムOS(RTOS)と呼ばれることもある。
Microkernelを実装しているOSの実例には、BlackBerry社の「QNX」やGreen Hills Softwareの「Integrity」などがある。
Exokernel
「Exokernel」のコンセプトでは、従来通りのやり方でOSを構築しながら、アプリケーションとハードウェア間の抽象化レベルを低くすることによって、効率性を追求する。抽象化を伴わないパススルーのサポートというExokernelのコンセプトは、ハイパーバイザーにおける準仮想化とよく似ている。
Exokernelは大部分が研究的なコンセプトで、現時点で知られている商用版は存在しない。
エンタープライズにおける機械学習やIoTアプリケーションが成長する中で、組織やIT部門は、汎用OS上のコンテナと比較した専用OSによる運用コスト削減の可能性について検討する必要がある。
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