NANDフラッシュの世代交代はいつ?
3D XPointだけじゃない NANDやDRAMに代わる新たなメモリテクノロジー(2/2 ページ)
3D XPointについて
2015年にIntelとMicron Technologyが「3D XPoint」という新たな種類のメモリを発表した。このテクノロジーはこれまでとは異なり、ダイナミックRAM(DRAM)とNANDフラッシュとの間の価格で、DRAM並みの速度を確保する。DRAMメインメモリとNAND型SSDとの間に新たなメモリ層を設け、PCのコストとパフォーマンスを向上させることが目標だ。
3D XPointはNANDフラッシュやDRAMに代わるものではなく、あるレベルのパフォーマンスを実現するためにシステムに必要なDRAMの量を減らすことが目的になるだろう。これは、過去に登場した新たなメモリテクノロジーとは大きく異なる。以前のテクノロジーは、フラッシュやDRAMがスケーリングの限界に達した後、それらに代わるものとして登場した。
今のところ、3D XPointはPCIe NVMe(NonVolatile Memory express)インタフェースでしか利用できない。NVMeはSSD向けの高速インタフェースだが、3D XPointメモリ本来の速度に比べれば低速だ。それもかなり遅い。ただ、IntelとMicronが3D XPointはNANDフラッシュの1000倍高速だと公表しているが、本稿執筆時点のIntelの「Optane」SSDは、同スペックのNANDフラッシュよりも6~8倍しか高速になっていないのが事実だ。
3D XPointのDRAM並みの速度を引き出し、そのコストとパフォーマンスのメリットを生かすには、DIMM(Dual Inline Memory Module)インタフェースが必要になるだろう。IntelはDIMMフォーマットの3D XPointメモリを出荷すると約束したが、そのような製品はまだ一般公開されていない。
半導体市場調査を担うObjective Analysisが2015年に公開した3D XPointメモリに関する報告書では、3D XPointメモリの最も大きな市場はサーバ向けDIMMになるだろうと予測されていた。この調査結果に異論はない。だが、本稿執筆時点の3D XPointメモリ市場は比較的小さく、主にゲーマーが、ゲームでの反応速度を上げてパフォーマンスを改善するために利用されている。
新たに登場したその他のメモリテクノロジー
3D XPointは研究が進められている新メモリテクノロジーの1つにすぎない。相変化メモリ(PCM)など、長期にわたって開発されているテクノロジーもある。PCMは、今から約50年前の1970年にIntelのゴードン・ムーアが共同執筆した記事で取り上げられている。
こうしたテクノロジーは高パフォーマンス、低電力、不揮発性を目指している。中でも最も重要なのは、DRAMとNANDフラッシュのスケーリングの限界を超える能力だ。だが、NANDフラッシュとDRAMの開発者は、スケーリングの限界をもたらす障害を取り除く方法を探し続けている。その最たる例が「3D NAND」だ。このような背景から、NANDやDRAMに代わる新たなテクノロジーの開発は先送りになっている。
新しいテクノロジーを生み出す可能性が高いのは内蔵メモリ市場だと考えられるが、そのようなテクノロジーがDRAMやNANDフラッシュに取って代わる機会が訪れるまでには長い時間が必要かもしれない。内蔵メモリは新たなテクノロジーを取り入れるのが早い。それは、ASIC(特定用途向け集積回路)、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサの製造に使用するプロセスを構築するためには、チップ(ロジックチップ)上のメモリを容易かつ経済的にしなければならないためだ。
ロジックチップの不揮発性メモリとして最も一般的なのが「NORフラッシュ」だ。NORフラッシュは、研究段階のプロトタイプでは14ナノメートルという小さなプロセスで構築された実績がある。だが、45ナノメートルを上回るスケーリングは難しい。同様に、スタティックRAM(SRAM)でも、ビットサイズがプロセスに比例してスケーリングできないことが実証されている。そのため、チップのSRAM部分が大きくなり、ASIC、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサのプロセスを小さくスケーリングすることで実現できるコストの優位性が制限される恐れがある。
NORもSRAMも、新たなメモリテクノロジーに置き換わる可能性がある。こうした新しいテクノロジーの例を以下に幾つか示す。
磁気抵抗メモリ(MRAM)
HDDのヘッドの製造に用いられている磁気テクノロジーを基に構築。このテクノロジーは既に大量生産されている。半導体製品を扱うEverspin Technologiesはこの不揮発性テクノロジーを約5年にわたりスタンドアロン(独立)型メモリとして製造している。MRAMはDRAMと同様の単一トランジスタセルを利用するため、NANDフラッシュではなく、DRAMとのコスト競争が可能だ。
相変化メモリ(PCM)
IntelとMicronの3D XPointメモリの基礎になっている。PCMは約10年前、NORフラッシュの代替として製造された。だが、導入したのはIntel、Samsung Electronics、STMicroelectronicsのみで、その他は全て製造を取りやめた。
強誘電体メモリ(FRAM)
20年以上前に製造されたメモリだ。鉛ベースの素材を利用し、基盤となるシリコーンの完全性を損なうため、採用は限定的だった。こうした状況にもかかわらず、富士通がFRAMベースのチップを製造した。同社のFRAMチップの製造量は、他の全代替メモリ合計量よりも多かったと考えられる。新たな研究では、強伝導体層との親和性が高い素材として酸化ハフニウムが浮上したことで、新たな関心が寄せられている。
伝導ブリッジ型メモリ(CBRAM)
カルコゲナイドガラスを通じた金属フィラメントの移動を利用したメモリだ。このタイプのメモリを出荷している唯一の企業がAdesto Technologiesだ。
抵抗変化型メモリ(ReRAM)
半導体企業Crossbarがサンプル出荷している。同社のテクノロジーではカルコゲナイドガラス層を通じてナノメタルフィラメントを拡大する。ReRAMでは、内部セレクターを含むタイプのビットセルが開発されたため、ビットセルと連携するセレクターを別途開発する必要がなくなり、製造プロセスが簡素化された。
OxRAM(Oxygen depletion RAM)
CBRAMと同様の現象に基づき、カルコゲナイドガラスから酸素イオンを取り除き、伝導経路を形成する。このテクノロジーは製造までは至っていない。Hewlett Packard Enterpriseは2017年まで、メモリベースの最新サーバ「The Machine」にOxRAMを使用する計画を立てていた。「Memristor」と呼ばれるこのアプローチは、最近まで先延ばしになっている。
ナノチューブRAM(NRAM)
カーボンナノチューブの層を利用した半導体企業Nanteroのテクノロジーだ。カーボンナノチューブは、電気的に圧縮/拡大して、抵抗状態の高低を作り出せる。
これらのテクノロジーはMRAMを除く全てが、2端子セレクターを基にしている。このようなセレクターはチップ上にプリントされる最小機構の4倍のサイズで利用できる。3D XPointメモリと同様に層を積み重ねることで、コストの削減が可能だ
最近、FRAMの製造に酸化ハフニウムを利用できることが発見されるまでは、上記のテクノロジーは基盤となるシリコーンとの親和性が十分ではなく、新素材の利用を必要としていた。こうした新素材は大量生産への移行が難しく、導入の妨げになっている。
こうしたテクノロジーが実績のあるメモリに取って代わるのを妨げている一番の要因はコストだ。全てのテクノロジーのコストは、DRAMやNANDフラッシュよりも桁違いに高くなる。そのため、技術的な機能が高価なコストを相殺するようなニッチな応用分野にしか使われない。FRAMの場合、低電力で高速書き込みが必要な分野に使われる。MRAMの場合は、高速書き込みが必要で、信頼性の低いバッテリーを必要としない不揮発性が求められる分野に適している。PCMは放射線への耐性が高いため、衛星に利用されている。CBRAMも同様の理由で、放射線量の高いエックス線で殺菌される手術器具に使用される。
だが、こうしたテクノロジーのいずれかが大量生産されるようになるまでは、実績のあるメモリテクノロジーに取って代われるだけの低コストを実現できる可能性はほとんどない。市場がなければ大量生産できない。価格が下がらなければ市場は成長しない。
今後10年への期待
NANDフラッシュもDRAMも少なくとも今後10年は利用されると思われる。Intelが3D XPointに想定している同社の目標を達成すれば、大量生産に向かうだろう。ただしそうなるまでの早い段階に、危機を乗り越えるためこのテクノロジーを売却しなければならなくなるだろう。他の新しいメモリテクノロジーは近い将来オンチップメモリとして成功を収めるだろう。だが、当面はスタンドアロン型のDRAMチップやNANDフラッシュチップの競争相手になる可能性はないだろう。
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