クラウド勤怠管理システムの選び方
クラウド勤怠管理システム各社の特徴や得意分野を、公式情報から探るコツ
クラウド勤怠管理システムのベンダー各社は、公式Webサイトの情報を充実させている。複数のベンダーが「シェア1位」をうたうなど、判断に迷う情報があるのも事実だ。膨大な情報を効率良く読むコツを紹介する。
本稿では具体的に幾つかのクラウド勤怠管理システムをピックアップし、ベンダーが自社Webサイトに掲載している情報を基に、それぞれどんなユーザー企業に向いているのか、サービスベンダーはどんなユーザー企業に使ってもらいたいと考えているのかを考察する。
公式発表資料から見る、各サービスが得意とするユーザー規模
クラウド勤怠管理システムの中で、ユーザー企業数とエンドユーザー数を公表しているサービスが幾つかある。ここで公表しているエンドユーザー数をユーザー企業数で割ると、そのサービスのユーザー企業1社当たりの平均エンドユーザー数を知ることができる。
エンドユーザー数÷ユーザー企業数=1社当たりの平均エンドユーザー数
当然ばらつきもあるので一概には言えないが、それでもそのクラウド勤怠管理システムが「主に何人くらいの規模の企業で使われているか」を知る目安にはなる。
公式Webサイトでユーザー企業数とエンドユーザー数を公表しているサービスをピックアップし、以下の表にまとめた。
| サービス名 | ユーザー企業数 | エンドユーザー数 | ユーザー企業1社当たり平均エンドユーザー数 | ベンダー名 |
|---|---|---|---|---|
| バイバイ タイムカード | 約110社 | 約20万人 | 約1800人 | ネオレックス |
| CYBER XEED 就業(注1) | 約2300社 | 約40万人 | 約170人 | アマノビジネスソリューションズ |
| TeamSpirit | 約970社 | 約14万人 | 約144人 | チームスピリット |
| KING OF TIME | 約1万2500社 | 約75万人 | 約60人 | ヒューマンテクノロジーズ |
※注1:CYBER XEED製品群全体の延べ数。「CYBER XEED 就業」のユーザー数については非公開。
こうして並べてみると、ユーザー企業1社当たりの平均エンドユーザー数には大きな違いがあることが分かる。実績をWebで公表していないベンダーも、コールセンターや営業担当者に問い合わせれば、ユーザー企業数とエンドユーザー数を聞くこともできるだろう。自社の規模に合った勤怠管理システムを選択するためにも、検討対象システムの1社当たり平均エンドユーザー数は把握しておくことをお勧めする。
なお参考までに、非クラウドのiPad用タイムレコーダーアプリ「タブレット タイムレコーダー」のユーザー企業数は1167社、エンドユーザー数は1万9590人、ユーザー企業1社当たり平均エンドユーザー数は17人である。このように、クラウド勤怠管理システム各社の平均エンドユーザー数から見れば半分以下となるような、小規模ニーズに応える新たな選択肢が出てきていることも、紹介しておきたい。
導入事例から見る各社の得意分野
クラウド勤怠管理システムベンダー各社のプロモーションサイトには、それぞれのサービスを利用している企業の事例が紹介されている。これらの事例は、サービスを検討している人たちに興味を持ってもらうことを目的としており、できるだけ自社の獲得したい企業が関心を持ってくれそうな事例を選択しているはずだ。
Webサイトで社名付きの事例を公開しているベンダー4社について、各社が紹介している事例を表示順で3社までピックアップした。以下がその一覧である(2018年10月時点の公開情報に基づく)。
ネオレックス「バイバイ タイムカード」
- 事例1 イケア・ジャパン
- 業種:店舗・流通業
- エンドユーザー数:約2300人
- 事例2 西武ホールディングス
- 業種:ホテル・旅館業、運輸・倉庫業など
- エンドユーザー数:約3万人
- 事例3 キャメル珈琲
- 業種:店舗・流通業
- エンドユーザー数:約7500人
アマノビジネスソリューションズ「CYBER XEED 就業」
- 事例1 菅原工芸硝子
- 業種:製造・販売業
- エンドユーザー数:約120人
- 事例2 世田谷自然食品
- 業種:食品・化粧品の製造・通信販売
- エンドユーザー数:約250人
- 事例3 オリエント オーバーシーズ コンテナ ライン リミテッド 日本支社
- 業種:海運業
- エンドユーザー数:約250人
チームスピリット「TeamSpirit」
- 事例1 ミツワ電機
- 業種:電設資材商社
- エンドユーザーID数:約1160個
- 事例2 ISパートナーズ
- 業種:Web制作
- エンドユーザーID数:約40個
- 事例3 toBeマーケティング
- 業種:マーケティングオートメーション
- エンドユーザーID数:約70個
ヒューマンテクノロジーズ「KING OF TIME」
- 事例1 日本アレフ
- 業種:製造業
- エンドユーザー数:約290人
- 事例2 アール・アンド・エー・シー
- 業種:システムの企画・開発・導入コンサルティング事業
- エンドユーザー数:約23人
- 事例3 シオ井
- 業種:飲食業
- エンドユーザー数:約350人
製品検討時にまず注目すべきなのは、紹介事例の業種だ。同業種、あるいは働き方の特性が自社に近いと思われる業種や企業の事例をチェックしてほしい。ここでピックアップされている事例によって、ベンダー各社が得意としている業種や業態を知ることも可能だ。例えばバイバイ タイムカードは、パート・アルバイトの多い現場で働く人の勤怠管理を得意としているため、店舗やホテルなどでの活用事例を紹介している。CYBER XEED 就業は、1つ目の事例も2つ目の事例も製造業が紹介されていることから、工場など製造現場で勤務する人たちの勤怠管理が得意だと推測できる。TeamSpiritの事例を見てみると、商社、Web制作、マーケティングオートメーションなどが挙がっており、オフィスワーカーが1人1台PCを使っている、IT活用が進んだ職場で働く人の勤怠管理が得意だと考えられる。KING OF TIMEは、製造業、コンサル、飲食業など多様な職種を挙げていることから、業種業界にこだわらないサービス提供を目指しているといえるだろう。
もう一つの観点はエンドユーザー数だ。ベンダー各社がどのくらいの従業員規模の企業へアピールしたいと考えているのかは、事例の選択に表れている。ユーザー企業1社当たりの平均エンドユーザー数よりも、各サービスが対象とするユーザー規模を推測する指標になるだろう。
「1位」「ナンバーワン」という表記をよく見かけるが、本当はどれが1位なのか
クラウド勤怠管理システムベンダー各社のWebサイトを見ると、さまざまなベンダーが「1位」や「ナンバーワン」という言葉を使っている。実際に筆者も勤怠管理システム検討中のお客さまから「本当はどこがナンバーワンなの?」と問い合わせを受けたことがある。そこでナンバーワンをうたっているベンダー各社が何を根拠としているのかを、各社のWebサイト公開情報から整理した。以下は、各社Webサイト(2018年12月時点)に記載されていた「ナンバーワン」についての記述である。
| 社名 | アマノビジネスソリューションズ | ヒューマンテクノロジーズ | ネオレックス | Donuts |
|---|---|---|---|---|
| サービス名 | CYBER XEED 就業 | KING OF TIME | バイバイ タイムカード | ジョブカン |
| 表記(原文ママ) | 国内シェアNo.1 | 勤怠管理クラウド市場シェア No.1 | クラウド勤怠管理1000人以上シェアNo.1 | ITトレンド年間ランキング 勤怠管理・就業管理 総合第1位 |
| 各社の説明文 | ERPフロントソリューション市場の実態と展望2018年度版クラウド型勤怠・就業ソリューション出荷金額シェア:ミック経済研究所 | 2017年富士キメラ総研調べ:勤怠管理SaaS市場利用ID数 | 2018年ミック経済研究所調べ:クラウド勤怠管理システム1000人以上規模市場で4年連続シェア1位 | ITトレンド(IT製品の比較・資料請求サイト)の「勤怠管理・就業管理」部門で、資料請求数が2年連続1位 |
CYBER XEED 就業とKING OF TIMEは、それぞれミック経済研究所と富士キメラ総研の調査に基づいてナンバーワンをうたっていることが分かる。バイバイ タイムカードはCYBER XEED 就業と同様にミック経済研究所の調査に基づいたデータだが「従業員数1000人以上」の市場においてナンバーワンとなっている。ジョブカンはIT製品の比較・資料請求サイトである『ITトレンド』の「勤怠管理・就業管理」部門で、資料請求数がナンバーワンだったと説明している。
このように、各社必ずどこかに「どこの調査でナンバーワンなのか」を掲載している。小さな文字までよく読んで、各自で判断してほしい。
クラウド勤怠管理システムの導入を検討する方々にとって、国内ベンダーだけでも数十あるサービスの中から自社に合ったサービスを見つけるのは大変な作業だ。各社Webサイトから得られる情報を基に、まずは自社に合いそうな企業を複数ピックアップし、その中から選定を進めていくのがよいだろう。
勤怠管理システムは、パート・アルバイトから正社員、経営者まで、社内のほとんどの人が毎日使うシステムであるだけに、問題が起きると多くの人にストレスを与えることになってしまう。勤怠管理システムの選定は、担当者にとって気の重い大変な仕事である。今回の記事が少しでも選定担当者の助けになれば幸いだ。
追記(2018年12月19日)
「表2 ベンダー各社の『ナンバーワン』表記と根拠」につきまして、アマノビジネスソリューションズの公開情報の変更に合わせ、表記を12月19日時点の情報に準じて次のように変更いたしました。
変更前)ご利用人数国内シェアNo.1/2018年ミック経済研究所調べ:クラウド型勤怠管理市場利用者数
変更後)国内シェアNo.1/ERPフロントソリューション市場の実態と展望2018年度版クラウド型勤怠・就業ソリューション出荷金額シェア:ミック経済研究所
駒井拓央(こまい・たくお)
ネオレックス取締役社長。ASP・SaaS・IoTクラウド コンソーシアム(ASPIC)理事。MIJS(Made In Japan Software & Service)コンソーシアム 人材育成委員会副委員長。ネオレックスはクラウド勤怠管理システム「バイバイ タイムカード」を提供する名古屋のITベンチャー企業であり、2017年に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞した。
このコラムについて
パート、アルバイト、正社員など、社内で働く全てのメンバーが利用する勤怠管理システムは、一度導入したら他のシステムに変更するのはなかなか大変だ。だからこそ、できるだけ多くの方が、自社にぴったりの勤怠管理システムに出会えるよう、サービス選びのポイントを紹介する。
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クラウド勤怠管理システムの選び方
パート、アルバイト、正社員など、社内で働く全てのメンバーが利用する勤怠管理システムは、一度導入したら他のシステムに変更するのはなかなか大変だ。だからこそ、できるだけ多くの方が、自社にぴったりの勤怠管理システムに出会えるよう、この連載を進めていきたい。
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