クラウド移行の先に何があるのか
2019年のクラウド市場5大動向 マルチクラウドが常態化する新時代が幕開け
マルチクラウドの急速な普及、企業のクラウド移行戦略の変更などが新たに注目されている。2019年のクラウドコンピューティングの動向について専門家に予想を聞いた。
調査会社IDGが実施した「2018 Cloud Computing Survey」によると、企業のクラウド利用は拡大を続けており、クラウドへの平均投資額は2年前に比べて約36%増加した。また回答企業の10社中9社は、既にアプリケーションやインフラのいずれかでクラウドサービスを活用している、または1年以内に活用を開始する計画だという。
2019年のクラウドコンピューティングの動向について専門家に予想を聞いてみたところ、マルチクラウドの導入が進み、企業のクラウド移行は「リフト&シフト」方式に代わる新たな移行方法が検討され、AI(人工知能)技術によってクラウドコンピューティングはさらに進化し、クラウドコンピューティング分野の技能者不足は相変わらず続く、といったことが分かった。以下で7人の専門家によるその見方を紹介する。
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クラウドコンピューティングの動向予測:マルチクラウドの導入拡大
BMCのシニアバイス・プレジデント兼CIO(情報技術責任者) スコット・クラウダー氏
2019年にはパブリッククラウドとプライベートクラウドのシェア争いの話題が下火になるか、別の角度からの議論に変わっていくだろう。これまではどのクラウドベンダーが勝者になるかに関心が集まり、Amazon Web Service(AWS)、Google、Microsoftがその有力候補と目されていた。
だが、2019年には目的別にクラウドサービスを比較するようになる。クラウド業界は大きく成長しており、大手ベンダーも新興ベンダーも参戦できる規模になった。マルチクラウドが常態化し、市場全体におけるシェア獲得よりも独自性や機能を競う時代が始まる。
Cloud Technology Partnersのバイスプレジデント兼プリンシパルアーキテクト エド・フェザーストン氏
2019年にはマルチクラウドやハイブリッドクラウドが定着する。ただ、特定のクラウドベンダー1社を中核パートナーとして選ぶことは今後も続くだろう。オンプレミス環境もある程度残るだろう。どうしてもクラウドに適合しないワークロードがあれば、オンプレミスとクラウドのハイブリッド構成が必要になる。
ワークロードの種類に応じて必要な機能が異なるため、企業は複数ベンダーを検討する。大半のワークロードはベンダー1社のサービスで必要な機能を賄えると思われるが、特殊なワークロードには別のベンダーを採用するという選択も目立ってくる。第2、第3のベンダーを併用する複合的なマルチクラウド構成が爆発的に増えるだろう。
Cloud Academyのコンテンツ責任者 アンドリュー・ラーキン氏
企業が利用できるクラウドサービスの種類は多岐にわたっているため、個々のクラウドベンダー特有の機能を企業が利用し始めることで、マルチクラウドの採用が進むだろう。適切な環境を整えれば、用途に合わせて複数サービスを併用することが可能になっている。例えば、AWSのオブジェクトストレージ「Amazon S3」や高速コンテンツ配信ネットワーク「Amazon CloudFront」を利用すると同時に、Microsoft Azureのコンピューティングサービスを事業の中核的なアプリケーションまたはレガシーアプリケーションに利用する。クラウドサービスのスケーラビリティや移植性を実現するための、APIを利用した新たな手法の開発がマルチクラウド成功の鍵となる。
クラウドにおけるAIと自動化
DynatraceのCEO(最高経営責任者) ジョン・バン・シクレン氏
ますます複雑になり、さまざまな環境が混合するWebスケールのクラウド環境を簡素化するために、企業のIT専門家はAI技術を活用した自動化の取り組みを推進するだろう。
クラウドで実行するワークロードが増えると、IT部門と事業部門の両責任者がユーザーエクスペリエンスの重要性に再び注目するようになる。現在こうした責任者はクラウド環境を導入してワークロードを移行させることを最も重視し、ユーザーエクスペリエンスは二の次になっている。クラウド環境へワークロードを移行させるプロセスが一段落すれば、ユーザーエクスペリエンスがIT部門と事業部門の共通課題になる。
CIOはスピードやアジリティー(敏しょう性)、カスタマーバリュー(顧客価値)を重要視するようになる。これらを実現するために、CIOの関心はクラウドへの移行から、クラウド環境の運用自動化や「NoOps」(運用をなくすこと)など、新しい取り組みへ移っていく。
Interxionのエンタープライズ担当バイスプレジデント ビル・フェニック氏
2019年は競争力を高めるためのビジネス変革として、音声認識や画像認識、自然言語処理や機械学習といったAI技術を取り入れる企業が増え、これに伴ってクラウドの活用がさらに拡大するだろう。
リフト&シフト方式からの脱却
フェザーストン氏
企業の既存システムをそのままクラウドに移す「リフト&シフト方式」は下火になっている。リフト&シフトに代わり、システムのリファクタリング(システムの動作は変えずに内部構造を変更すること)と、ITシステム基盤の再構築を進める動きが既に始まっている。2019年はこの動きが加速するだろう。リフト&シフト方式では求める効果を得られないと、気付き始めた関係者が少なくない。
フェニック氏
クラウドは急速に企業の間で普及した。初期の頃にワークロードを全面的にクラウドに移行したものの、クラウド環境に適合しないアプリケーションが見つかったり、リフト&シフト方式がうまくいかなかったりすることが目立った。2019年にクラウド移行が進むことは変わらないが、同時にクラウドへの移行手法が改善されるだろう。
クラウドコンピューティングの技術者不足
Kudelski Securityのグローバルリスクソリューション担当ディレクター オリビア・ローズ氏
クラウド移行が拡大すればするほど、そのために必要な技術を持った人材の需要が高まるため、技術者の人材不足が拡大している。高いスキルを持った技術者は見つけにくい上、需要が拡大しているため、人件費は高くなる。
この傾向は2019年も続くと予想される。しかし報酬の高い求人が増加していることで、そうした職にありつくためにAWSやMicrosoft Azureに関連する認定資格を取得する人材が増えている。そのため2020年以降、こうした人材は獲得しやすくなるだろう。
「Kubernetes」の採用増加
DigitalOceanのプロダクト担当バイスプレジデント シベン・ラムジ氏
クラウドサービスのユーザーが「Kubernetes」を採用する動きが拡大しており、今後もその傾向は続くだろう。そのためクラウドベンダーはコンテナアプリケーションの管理や展開を容易にするためのサービスを重視し始めている。これはKubernetesがさらに使いやすくなる大きなチャンスであり、使いやすくなればその注目度も高まるだろう。
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