リアルタイムで音声や映像をAI処理
クラウド連携可能なWebRTC開発キット NTTコミュニケーションズが提供
NTTコミュニケーションズが2019年1月に提供開始した「Media Pipeline Factory」は、クラウドサービスとの連携で音声・映像のAI処理などが可能なWebRTC開発キットだ。
NTTコミュニケーションズは2019年1月23日、通話で生じた音声・映像データをクラウドサービスで活用しやすくする開発キット「Media Pipeline Factory」を提供開始した(図1)。同社が企業向けのWebRTC(Web Real-Time Communication、詳細は後述)用SDK(ソフトウェア開発キット)として提供中の「Enterprise Cloud WebRTC Platform SkyWay」(以下SkyWay)の機能拡張を目的とする。SkyWayを使った通話で発生した音声・映像データを、AI(人工知能)技術を使った音声認識や画像認識などのクラウドサービスで、リアルタイムに活用できるようにする。
リアルタイム翻訳サービスが作れる
WebRTCはWebを介したリアルタイムコミュニケーション機能を実現するための技術仕様・機能群だ。Webアプリケーションやスマートフォンアプリの開発において、ビデオ通話などリアルタイムコミュニケーションの機能を実現する。SkyWayは、このWebRTCを使った音声・映像通信を実装するためのSDKだ。
Media Pipeline FactoryはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を備えた開発環境を提供。開発者はこの開発環境を使い、音声認識や機械翻訳といった分析エンジンやストレージなどのクラウドサービスで、音声・映像データを活用する機能を開発できる。クラウドサービス同士を連携させ、データを段階的に処理することも可能だ。Media Pipeline Factoryでは、どの処理をどの段階で実行するかといった処理の流れを「パイプライン」として定義する。開発者は開発環境の画面内で、各処理を示す「コンポーネント」のアイコンを追加したり並べ替えたりして、パイプラインを構築する。
開発者はMedia Pipeline Factoryを使うと、例えばデバイスから通話音声を取得してクラウドの音声認識エンジンで分析し、得られたテキストを機械翻訳に掛け、結果を提示するといった一連の処理を定義できる。SkyWayと連携させたクラウドストレージサービスに音声・映像データを保存し、アーカイブを作成するようにパイプラインを設計することで、録音・録画機能を実現することも可能だ。
マウス操作で一連の処理を定義
Media Pipeline Factoryの開発環境はマウスを使った直感的な操作が可能で、パイプラインの設計や接続するクラウドサービスのパラメーター、環境変数などを容易に設定できるようにした(図2)。利用頻度が高いと想定されるコンポーネントを「ビルトインコンポーネント」として用意。「Recognizer」(音声認識)、「Translator」(機械翻訳)、「Filewriter」(音声ファイル保存)などがあり、開発者が複雑な処理を記述する手間を省く。開発者が独自に処理を設定するカスタムコンポーネントも利用できる。
内部でコンテナ型仮想化技術を使用していることも特徴だ。各コンポーネントは個別のコンテナで動作するので、トラフィック数やアクセス数が増加した際に互いのセッションに与える影響を少なくできる。この仕組みはシステムの安定稼働を後押しする。
図2はMedia Pipeline Factoryで構築した、通話音声自動翻訳と音声アーカイブ機能を持つWebアプリケーション(画面)のパイプライン例を示す。通話で生じる音声データの受け入れ口となる「WebRTC gateway」(WebRTCゲートウェイ)を介して、データをシステムに渡し、図上段ではRecognizerで音声をテキスト化。下段ではFilewriterによる音声ファイルの書き出し、という指示を与えている。次にテキスト化したデータをTranslatorで翻訳する流れだ。さらにデータベースにデータを保存するコンポーネント「Dbwriter」(図では実際のデータベースである「Amazon DynamoDB」として表示)で、翻訳の結果をデータベースに登録する。同時に、パイプラインで発生したイベントを伝達できるGoogle Cloud Platformの非同期メッセージングサービス「Cloud Pub/Sub」で、処理が実行されたことを発信する。
今後の展開
NTTコミュニケーションズ担当者の大津谷 亮祐氏は、Media Pipeline Factoryは現在無償のトライアル版のみ提供しており、商用化の具体的な時期は決まっていないと説明する。一方で実際に企業での試験導入や実証実験が開始されているとも説明し、「現時点で10社以上とトライアルを実施する計画だ」と語る。
事例の一つがオンライン英会話サービスを提供するレアジョブだ。同社はMedia Pipeline Factoryを活用し、受講者の英会話習熟度の可視化に取り組むという。
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