文法の習得に終始していないか?
最初に学ぶのに最適なプログラミング言語が存在しない理由
開発者が最初に学ぶのに最適なプログラミング言語はJavaだという意見がある。だが本当にそうだろうか。どの言語でも構成要素はほぼ変わらない。
プログラミング言語の入門としてJavaを教える価値について、企業向けのJava専門Webメディア「TheServerSide」が2018年11月に記事として取り上げた。その記事では、機能、複雑性、他のプログラミング言語との比較という点からJavaをうまく分析していた。
編集注:TheServerSideは本記事の原文を掲載している。
その記事は読み物として優れており、お薦めできる。だが「最初に学ぶのに最適なプログラミング言語が存在する」という、その記事の前提には議論の余地がある。プログラミングに不可欠な要素はどの言語でも変わらない。そのため、どの言語を最初に学ぶかは問題ではないというのが本稿の見解だ。
見方を変えてみよう。生まれたばかりの子どもが最初に学ぶ言語は重要だろうか。中国語や英語を学ぶのが適切なのだろうか。アラビア語やスウェーデン語では駄目なのか。実際には、子どもが最初に学ぶ言語は決まっていない。言語を学ぶことは人間の進化の一部だ。本当に気にすべき問題は、子どもがその言語を習得できるかどうかだ。
言語の仕組み
大まかに言えば、名詞、動詞、副詞、接続詞など、言語を構成する要素はどの言語でも変わらない。言語の違いは、語句の発音、文法、語法に現れる。「人間は生まれつき言語を習得する能力を備えている」と主張する言語学者さえいる。
プログラミング言語についても同じことが言える。大まかに言えば、変数、演算子、ステートメント、構造体など、プログラミング言語を構成する要素はどのプログラミング言語でも変わらない。もちろん、スレッド処理など、特殊なテクノロジーを扱うための機能を持つプログラミング言語もある。だが構成要素のレベルでは、「最初に学ぶのに最適なプログラミング言語」の候補になる言語はどれも驚くほど似ている。If-then-elseステートメントには条件が必要だ。ループには何らかの反復メカニズム、演算子には作用(計算結果)が伴う。納得していただけるだろうか。
プログラミング言語の教育では、コードをコンパイラやインタープリタが解釈できるようにすることに多くの時間を費やしているように思える。重視されているのは文法だ。だがセマンティクス(意味や意図)の習得に関しては、教える機会があったとしてもはるかに優先順位が低い。「プログラミング言語の教育と同じやり方で英語を教えたら、学習者は動詞の時制の一致を決して習得できないだろう」というもっともな意見もある。
価値をもたらすのは文法よりもセマンティクス
言語を使うために文法は重要だ。しかし言語を習得する目的は文法の習得ではないことも非常に重要だ。意欲的なプログラマーでも、printステートメントの文法を学ぶことには熱中しない。だがprintステートメントを使って最初の「Hello World」プログラムを作成すると、一気に理解が進む。
開発者の大半は、意味のあるコードを作成したいと考えている。「文法の習得は必要だが面倒な作業だ」と伝えたいのではない。文法を優雅に使えば、間違いなく美しい文章になる。非常に複雑でも効率的なソートアルゴリズムを作成するプログラマーも同じだ。言語の仕組みを理解していなければ、そうしたテクニックは使えない。だがこうしたコードの真価は、そのアルゴリズムが生み出す動作とコードが表現する考え方にある。コードに価値を与えるのはセマンティクスだ。
「ジョークはいかが?」
私が初めて学んだプログラミング言語はPL/Iだった。ターミナルからの入力を受け取り、簡単な算術演算をする程度のことを学んだ。入力に応じてif-thenステートメントとprintステートメントを使う方法も学んだ。初めて作成したのは、ジョークを出力するプログラムだった。以下がその実行例だ。
> Want to hear a joke? [Enter yes or no]
> yes
> Two peanuts were walking down the street. One was assaulted.
> ジョークはいかが? [はい または いいえ を入力してください]
> はい
> 2つのピーナツが道を歩いていた。片方は殺された。
編集注:assaulted「殺される」と同じ発音のa salted「塩味」をかけたジョーク。
これだけだ。「このジョークは果たしてジョークと呼べるのか」「著者の文法の習熟度合いは初級レベルではないか」という意見もあるだろう。それでも、そのセマンティクスは私にとって大きな価値があった。そして意外にも、他の人にとっても価値があった。結果として、人々はこのジョークを気に入った。その後筆者はこれを土台にして、幅広い用途に使える、強力かつ対話型の創造的表現を生み出す手法を理解した。コンピュータプログラミングは、他では見つけるのが難しいような創造的表現を提供する。それは今も変わらない。
プログラミングというテクノロジーに、専門家としての関心を持つようになるまで10年以上かかった。だが今でもこの小さなジョークプログラムを覚えている。このプログラムが私の考え方を変えた。PL/Iから学び始めたのは間違いだったのだろうか。COBOLから学び始めるべきだっただろうか。そうすれば、もっと優秀なプログラマーになっていただろうか。そうは思わない。取りあえずどこからか手を付けなければならず、その出発点がPL/Iだった。
筆者にとって、言語の文法が一番の重要事項だったことはない。いつも文法の習得を重視してはいたが、文法の習得を目標にしたことはない。「文法が表現を豊かにする」という考えは大切だ。とはいえ、どこからか手をつけなければならない。「初心者が最初に学ぶのに最適なプログラミング言語は何か」と聞かれたら、目の前にある言語だと答えるだろう。
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