調査で浮かび上がった「信頼の赤字」への懸念
金融機関が「予測分析」に基づく意思決定をためらう理由
“ある懸念”が、金融サービスでの予測分析の導入を妨げているという。その懸念とは何か。BIツールベンダーのQlik Technologiesによる調査結果から探る。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールベンダーのQlik Technologies(以下、Qlik)が実施した調査によると、コンプライアンスについての懸念が、金融サービスでの予測分析の導入を遅らせている。Qlikの広報担当者によると、この調査は2021年6月と7月に、独立系調査会社のCensuswideに委託して実施したものだ。調査対象は金融サービス担当者503人。そのうち銀行関係者は200人、保険担当者は201人だった。
金融機関が悩む「システムが下す決定に偏りがないと信じられるのか」問題
この調査結果をまとめたレポート「Unleashing the potential of predictive analytics in financial services」によると、英国の金融機関の38%は、予測分析を5個以下の用途にしか活用していない。それに対して、50個超える用途に予測分析を利用する最先端の金融機関は7%にすぎない。
Qlikユーザーのリチャード・スペイガル氏は「予測分析をBIツールに組み込めば、分析のメリットを生かして、従業員の意思決定を改善できる」と話す。保険会社のNationwide Mutual InsuranceにおいてBI専任チームを率いるスペイガル氏によると、Nationwideは案件の優先順位付け支援など、人間の意思決定のサポートに予測分析を利用しようとしている。「この分野においては今のところ完全自動化のニーズはない。だが長期的なテーマにはなり得る」と同氏は語る。
Nationwideは、顧客や従業員が自社にとってどのような意味を持つのかを非常に明確にしようとしている。その対象は意思決定のプロセスにも及ぶ。「説明できない決定が下されたと顧客に感じさせたいとは思わない。その決定を人間が説明できなければならない」(スペイガル氏)
レポートによると、予測分析システムが下す決定に偏りがないと信頼している回答者は半数(50%)しかいない。予測分析ソフトウェアが自動的に導き出す決定に対して個人的に責任を負うこと恐れている回答者は約44%にとどまるが、資金と投資に携わる回答者に限定するとその数値が81%に跳ね上がる。全体の46%の回答者は、予測分析がもたらすメリットよりも負担の方が上回ると答えている。
予測分析を利用する際の障壁として挙がったのが、データマネジメントの問題だ。レポートによると、データマネジメントの問題に直面している回答者は約4割に上る。具体的にはデータ品質(40%)、データのサイロ化(40%)、データ統合の速度(36%)を問題だと認識している。関連する懸念事項として、データのプライバシー(30%)と不正確なデータセットや古いデータセットの利用(30%)を挙げている。予測分析を実装するスキルがないことを懸念する回答も4割強(43%)あった。
明らかになったもう一つの問題は、組織におけるデータリテラシーの欠如だ。回答者の76%は、従業員がITの限界を認識するためにデータリテラシーを高めることが不可欠だと答えている。ほぼ同数の回答者(77%)が、意思決定の課程で予測分析がどのように使われたかを、顧客や他の利害関係者に説明できることが重要だと考えている。
Qlikでシニアマネジャーを務めるアダム・メイヤー氏は「金融サービス業界では急速なデータ変換が進んでいる。従業員が多くの情報に基づいて行動を取れるようにするには、予測分析が重要な役割を果たす」と語る。予測分析は意思決定の際に、何が起きる可能性があるか、以前にどのようなことが起こったかを検討するのに役立つ。とはいえ「多くのITリーダーはまだ、予測分析で得られる洞察と、そうした意思決定が顧客に与える影響を完全には信頼していない」とメイヤー氏は語る。「当社の調査が示しているのは、そういうことだ」(同氏)
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