意思決定者としてのAI【後編】
「AI」による意思決定、課題は働き手からの信頼
ビジネスプロセスの意思決定にAI技術を活用することについて、働き手は警戒している。どうすれば信頼を得ることができるか。専門家が解説する。
「現在導入されている最新のAI(人工知能)ツールは、正確性または説明可能性もしくはその両方の点においてまだ理想には達していない。AI技術がうまく機能したとしても、特定のケースでは正確性が低下する恐れがある」。米サンフランシスコでRE-WORK X(Re・Work)が開催したカンファレンス「Applied AI Summit San Francisco」において、AI技術企業Afreshの共同設立者兼最高技術責任者(CTO)を務めるウォロディミル・クレショフ氏は聴衆に警告した。
AI技術による自動化の対象として、どのビジネスプロセスに関する意思決定が適切かは、現在のAIツールの機能だけでなく、企業の能力にも左右される。企業はリスク許容度やAIのトレーニング、テストの厳しい条件に対処しなくてはならない。
拡張分析システムを開発するMarvelous共同設立者兼CEOのダニエル・デイブレル氏は「機械に食べさせるしかないと思える平たいパンを作るようなプロセスがある」と話した。AIエンジンの質が低下しても、そのプロセスはわずかでもパンを作り出す。だが、飛行機や車の運転ではそうはいかないと同氏は言う。
リスクの低い意思決定のワークフローであっても、時折人が調査して新たな問題を特定し、意思決定エンジンに送られるデータを整理する必要がある。「データ収集の初期段階や意思決定プロセスの後半に人手が必要になる可能性がある」とデイブレル氏は話す。
AIによる意思決定の正確性と説明可能性
アルゴリズムの正確性が低下するほど、高い説明可能性が必要になる。AIアルゴリズムの正確性が99.9%であれば、従業員が説明可能性について問い掛けることはあまりないとクレショフ氏は言う。だが正確性が90%しかなければ、説明を求める可能性は高くなる。正確性にはばらつきもある。「特定の母集団では正確性が低下する可能性がある」とクレショフ氏は話す。
特定の種類の母集団やトランザクション用のトレーニングデータが不足していると、こうした正確性のばらつきが生まれることがある。その場合は、不足しているトレーニングデータを補う方法をデータサイエンティストが見つける必要がある。
企業はAIエンジンによるレコメンデーションをユーザーに提案する場合、そのような決定を下した理由の説明を添えることを重視する必要がある。そのためにはアプリケーションのユーザーインタフェース(UI)を改善して、そのアプリケーション内でユーザーが説明を参照できるようにする必要がある。そうすれば、そのツールがどのような場面に優れているかについて、信頼を築くのに役立つだろう。ユーザーは、アルゴリズムが提案する意思決定のレコメンデーションを受け入れるか、他のデータを探すかを決めるのに必要な文脈が得られる。
Kaleido Insightsの共同設立者兼インダストリーアナリストを務めるジェシカ・グループマン氏は「説明可能性はデータサイエンスの課題と見なされることが多い。だが広くいえば、ユーザーエクスペリエンス(UX)の課題でもある」と強調する。
AIによる意思決定を評価するための優れた指標の開発
意思決定にAI技術を利用することが業績にどのような影響をもたらすかを把握することこそが重要だ。「企業は明確に定義した一連のメトリクスを用意する必要がある」と、Afreshのクレショフ氏は話す。そのためには、さまざまな部門の協力を得て、自社の目標を反映するメトリクス(指標)を見極める必要がある。
Marvelousのデイブレル氏も、人の関与が重要であることに同意する。AI技術がもたらす結果に同意するかしないかを決めるプロセスには、人が加わるべきだというのだ。その上で、機械の意思決定と人の意思決定の違いを計測し、その結果を用いてアルゴリズムを改善しなければならない。
「そうすることで、ワークフローにAI技術を取り入れやすくなる。AIエンジンが人の作業に取って代わるものではなく、人の仕事を助けるものだと理解することができる」(デイブレル氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー