有料課金、広告配信、動画生成など
ゲーム業界のデジタルマーケティングに「AI」はどう活用されているか
ゲームにおける人工知能(AI)技術の活用は、キャラクターやゲーム世界の自動開発以外にも広がっている。ゲーム会社は既存プレイヤーと新規プレイヤーを対象とするマーケティングにもAI技術を活用している。
ビデオゲームは何十年も前から人工知能(AI)技術のテストプラットフォームの役割を果たしている。研究者はAIシステムの能力を試すため、次々と難しいゲームで人間と対戦させ、人間を打ち負かしてきた。
IBMのスーパーコンピュータ「Deep Blue」が1997年にチェスの世界チャンピオンに勝ったのを皮切りに、この20年でAI技術はゲームの世界で進歩を続けてきた。「Quake III Arena」や「リーグ・オブ・レジェンド」などのゲームを制し、最近ではポーカーでも勝利を上げている。
ビデオゲーム業界は、AIシステムのテスト環境の役割を果たすだけでなく、デジタルマーケティングやゲーム内開発にAI技術を活用し始めた。ゲームのデベロッパーやパブリッシャーは、AI技術を不正の排除や売り上げ向上、開発期間短縮に加え、キャラクターやゲーム世界、楽曲の制作に役立てている。
AIを活用したデジタルマーケティング
他の多くの業界と同様に、ビデオゲーム業界も収益拡大のため、パーソナライズしたデジタルマーケティングにAI技術を活用している。
AIスタートアップDiveplaneのCEOで人気ゲーム「フォートナイト」の開発元Epic Gamesの元社長としても知られるマイク・キャップス氏は、「AI技術はビデオゲームの収益拡大に貢献している」と語る。無料ゲームやアプリケーション内課金ゲームの間では、AIアルゴリズムを利用してプレイヤーに対してゲーム内課金に応じるよう促し、無料でプレイする場合は広告配信を見たり個人情報を提供したりするように働き掛ける動きが広がっている。
プレイヤーがゲームでできることは、ゲーム内課金の額によって変わる。例えば戦略系ゲームでは、何時間か何日もかかるプロセスを、金銭を支払うことによって数分に短縮できる。ロールプレイングゲームでは、ミッションをクリアする代わりに課金によってキャラクターの装備や属性を強化することができる。「ここでもパーソナライズが進んでいる」とキャップス氏は語る。「1カ月の支払い金額が1ドルか1000ドルかではできることが全く異なる。1ドルしか使わないプレイヤーは別のプレイヤーにすぐ負けて終わってしまうだろう」(同氏)
全てのゲームがそうなっているわけではないが、この傾向は広がってきているという。
例えばフォートナイトはPay to Win(支払いで有利になる)タイプのゲームではないが、プレイヤーにできるだけ長くプレイしてもらえるように作られており、そのためにAI技術でパーソナライズしたマーケティングでプレイヤーをつなぎ止めている。
ゲーム内広告
無料のアプリケーションやゲームに表示する広告にも、AI技術を使ったデジタルマーケティングが活用されている。ユーザーはこうした広告を視聴することでゲームを無料で楽しむことができ、これが一種のペイウォール(機能の一部を有料化し、対価を支払ったユーザーのみ利用可能にすること)の機能を果たす。
ゲームエンジンを開発するUnity Technologiesでデータサイエンスとマネタイズのディレクターを務めるサンプサ・ヤーティネン氏によると、同社のエンジンは10億人以上のユーザーに広告を配信しているという。
Unityは各ユーザーのデータを取得し、それぞれに合った広告を表示する。これにより、ユーザーにゲームを継続させるとともに、広告をクリックすることを促す。
広告主がUnityに支払う金額はそれぞれ異なる。より収益性の高い広告を表示しながらユーザーにゲームを継続させることが重要であるとヤーティネン氏は話す。
2019年1月、米カリフォルニア州サンタクララで開催された「Global Artificial Intelligence Conference」でヤーティネン氏は講演し、収益性の高い広告の種類と表示頻度を判断するアルゴリズムを使っていると語った。「広告によって収益性が異なるなら、収益性の高い広告を選んだ方がいいことは明らかだ。スマートな選択がより良い成果をもたらす」(同氏)
ゲームの外でのマーケティング
ゲームのデベロッパーやパブリッシャー、販売者がゲーム自体のマーケティングをゲームの外でする際にも、AI技術を利用している。
PC用ゲーム配信サービス「Steam」を運営するValveは、「Steam Labs」という新しいオープンβプログラムを開始した。このプログラムはマーケティング向けにAI技術を利用して、動画や予告編、インタラクティブなお薦め紹介を自動生成する。
Steam Labsは現在、「実験」と称する3種類のシステムを提供している。6秒間のミニ予告編を自動生成するシステムと、人気上位のゲームを紹介する短い番組を自動生成するするシステム、ユーザーごとのお薦めを紹介するスライド式のシステムだ。Steam Labsはユーザーからのフィードバックを集めている段階だが、次々と新しい動画を求めるユーザーに対してマーケティング効果を高める上で役立ちそうだ。
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