教育機関の間で、ゲーム「Minecraft」を教育活動に生かす動きがある。学習教材としてMinecraftを活用する際の課題や不安を解消するためのヒントとして、東京都立三鷹中等教育学校の取り組み事例を紹介する。
キャラクターを操作してブロックで構造物を建築したり、モンスターを倒したりするゲーム「Minecraft」の教育利用が盛り上がりを見せている。教育機関がMinecraftに注目する理由の一つが、「レッドストーン回路」という仕組みで論理回路の基礎を学べる点だ。
Minecraftのバージョンの一つである「Minecraft: Education Edition」(以下Minecraft EE)は、教育機関が教材としてMinecraftを利用するために有用な幾つかの機能を搭載している。通常版との具体的な差異点として、ゲーム内の世界(ワールド)で処理を指示するためのプログラムを記述できる拡張機能「Code Builder」をあらかじめ組み込んでいたり(注1)、教員が児童生徒の行動を管理・制限できる機能(Classroom Mode)を備えていたりする。プログラミング用拡張機能では「エージェント」と呼ばれるロボットを利用でき、例えば児童生徒がエージェントに特定の行動をプログラミングで指示し、建築作業を自動化することを通じてプログラミングを学ぶといった活用方法がある。
※注1:Windows 10用Minecraft「Minecraft for Windows 10」では、拡張機能「Code Connection」を利用することで、Minecraft EEと同様のプログラミング環境を追加導入できる。
だが「ゲームを教育に使う」ことに難しさを感じたり、扱いに悩んだりする教員も少なくない。本稿はそうした教員に向けて、2019年6月開催の教育ITイベント「New Education Expo 2019」のセミナー内容を基に、Minecraft EEを教育に活用する東京都立三鷹中等教育学校、東みよし町立足代小学校、千葉大学教育学部附属小学校の事例を前後編に分けて紹介する。
三鷹中等教育学校で情報科を担当する能城茂雄氏は、PCを使ってプログラミングやコンテンツ制作に取り組む同校の「UNIX研究同好会」の顧問を務める。主に前期課程の1〜3年生(中学校の1〜3年に相当)の活動にMinecraft EEを取り入れた事例として、能城氏が紹介するのは「校舎の再現」だ。
能城氏は2018年8月開催のイベント「マラカン2018」を、UNIX研究同好会のMinecraft EEを使った活動に利用した。「マラカン」とは「マインクラフトでラーニングするカンファレンス」の略で、教員によるMinecraft EEの活用情報を発表・交換するためのイベントだ。同イベントは「マイクロソフト認定教育イノベーター」(MIEE)がMinecraft EEを使った教育活動を報告する場を設けていた。MIEEとはMicrosoftが教育でIT活用を推進する教員を認定するプログラムの認定者のことで、同氏もこの認定を受けている。
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