「Minecraft」を教育に取り入れるための事例集【後編】
「マイクラならでは」を先生も子どもも意識 小中学校の「Minecraft」導入事例
ゲーム「Minecraft」を学習教材とした教育活動にまつわる課題や不安を解消するためのヒントとして、足代小学校と千葉大学教育学部附属小学校の事例を紹介する。
前編「三鷹中等教育学校が『Minecraft』を活用 ゲームに不慣れな先生でも使える?」では、ゲーム「Minecraft」を教育利用するための機能を備えた「Minecraft: Education Edition」(以下Minecraft EE)を教育活動に取り入れている、東京都立三鷹中等教育学校の事例を紹介した。三鷹中等教育学校は、PCを使ってプログラミングやコンテンツ制作に取り組む同校の「UNIX研究同好会」を中心に、Minecraft EEの活用を推進している。後編では徳島県三好郡にある東みよし町立足代小学校と、千葉大学教育学部附属小学校のMinecraft EE活用事例を紹介する。
理想の町を作る
足代小学校で副校長を務める中川斉史氏は、総合的な学習の時間にMinecraft EEを利用しているという。
小学5、6年生を対象とした2017年度の「総合的な学習の時間」の授業では、人口減少などの地域が抱える課題をテーマに取り上げた。児童はそれらの課題を解決するために、町にどんな施設を造ればよいか、実際の地図を見ながら考えた。そうして検討した施設を、Minecraft内の世界(ワールド)に再現した東みよし町に建造することを通じ、地域に対する理解を深めた。
児童は東みよし町の再現から着手した。町には高速道路が通っている。Minecraftのワールドで「高速道路の敷設」をするには、規則的なパターンでセンターラインを引き、アスファルトのブロックを敷き詰める繰り返し作業が発生する。この単純作業を効率化するために、プログラミングを別の科目で学習していた児童が「エージェント」(Minecraftのワールド内での特定の行動をプログラミングで指示できるロボット)によるブロックの自動配置に着目し、作業の自動化を図った。「『プログラミングを問題解決の手段として生かせるのはどのような場面か』を具体的に学ぶことができた」と中川氏は述べる。
町にある建造物や、児童が想像した建造物の制作で共同作業の大切さを学んだり、現実世界とMinecraft内のワールドとの間で「縮尺が合わない」問題に直面して厳密な設計に取り組んだりした点は、前編の三鷹中等教育学校の事例と共通する成果だ。完成した作品を使って、児童は町並みの紹介動画を制作し、全校集会で発表した(図1)。
翌2018年度は、小学6年生が前年度の地域調査で「町に城があった」という情報を入手していたことを踏まえ、かつて町に存在していた「足代城」をMinecraft EEで再現する課題に取り組んだ。城の詳細な設計図は残っていなかったものの、児童は歴史の資料集を参考に当時の城の様子を想像した。
Minecraftのワールドにはさまざまな種類のブロックがあり、児童は「どの種類のブロックが足代城の再現にふさわしいか」を考えるのに、社会科で習った知識を役立た。繰り返し作業には前年度の経験を生かし、プログラミングを使って効率化した。
「現実では作れないもの」を作る
中川氏は「『Minecraftを使う必然性』を意識する」ことの大切さを強調する。「想像したものを実際に作る」ことは現実世界では難しいが、Minecraftであれば高い自由度で制作できる。「なぜMinecraftを使うかということを教員だけでなく児童が意識することで、遊びではなく学びの一貫であるということに立ち返り、本来の目的を見失わなくなる」と同氏は言う。
中には造った建造物をわざと壊したり、「透明な爆弾」を仕掛けたりといったいたずら行為に及ぶ児童がいたと、中川氏は明かす。「統制が取れていない場合、そうした『幼稚園児の砂場』のような光景が見られるようになってしまう。共同作業を通じ、協働的に問題を解決することへの意識や道徳観を育成できるとよい」(同氏)
論理回路の基礎知識を身に付ける
千葉大学教育学部附属小学校で生活・総合準専科教員を務める小池翔太氏は、中学校の技術科や高校の情報科を見据えた「論理回路の学習」にMinecraft EEを活用している。
2018年度に実施した4年生の総合的な学習の時間の授業で、小池氏は「自動ドアの製作」を通じて論理回路の基礎を学ぶ10こま分のカリキュラムを組んだ。児童に論理回路の基礎について学んでもらった後、児童の興味を引くために「Minecraftでしかできないこと」を実践してもらった。同級生の操作するキャラクターが一定の場所に立つと、板でそのキャラクターを挟む仕掛けの作成だ。次にその仕掛けを逆にし、一定の場所に立つとドアが開く自動ドアを作るにはどうすればよいかを考えてもらった。
児童が自動ドアの仕組みと実装方法を理解したところで、小池氏は「『人のため』になる自動ドアを考え、実際に作る」という目標を設けた。現状の自動ドアにおける問題点は何か、そのための解決策は何か、実現するにはどうすればよいかを児童に考えてもらった。例えば「高齢者のための自動ドア」は、「ドアを長い時間開く」という解決策があり、「キャラクターが立ったことを伝えるセンサー(感圧板)の面積を広くする」ことでそれを実現できる、といった具合だ。
児童はMinecraft EEで店舗を模した建造物を作り、キャラクターが前に立つと開く自動ドアを設置した。そこで「自動ドアを動かす仕組みが、建物内に見える状態で存在するのはおかしい」と気付き、回路部分を地中に埋める工夫をしたという。「自動ドアという身近な構造物を題材にすることで、世の中のブラックボックスになっている物事の裏側にも仕組みがあることを、児童が意識できるようになる」と小池氏は効果を語る。
現実世界との対比を常に意識
小池氏は「マイクラならでは」というキーワードを設定し、「Minecraftを使ってできること」を児童に考えさせるようにしている。「現実世界の仕組みとMinecraftのワールド内の仕組みを対比させながら課題解決のプロセスを踏ませることが大切」だと同氏は述べる。その際、教員は最低限のガイダンスのみ実施し、「児童に任せる」ことを意識しているという。「『教わらないとできない』状態をなくすことが、知識や技能を駆使して課題を解決する力を養う」というのが同氏の主張だ。
セミナーで講演者が口をそろえて強調したのは「Minecraftで何ができるのか」、ひいては「なぜMinecraftを使うのか」を教員と児童生徒の両方が意識することだ。小池氏は「児童が『文房具のように』Minecraft EEを使える状態を目指す」と話す。使うものが紙と鉛筆であれ、PCとゲームであれ、目的を見失わなければ達成する手段を制限する必要はない。時代の変遷とともに多様な手段が登場する中、適材適所で活用するスキルは教員にも子どもにも不可欠だといえるだろう。
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「Minecraft」を教育に取り入れるための事例集
プログラミング教育に通じる学習教材として「Minecraft」が注目を集めている。これを教育現場に取り入れるヒントとして、東京都立三鷹中等教育学校、東みよし町立足代小学校、千葉大学教育学部附属小学校の活用事例を紹介する。
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