児童虐待の相談件数増加に伴い、相談を受ける施設の業務負担も増加している。八王子市の子ども家庭支援センターがAI関連技術を使った電話応対支援システムで実証実験を開始した。実験の背景と概要を整理する。
NTTテクノクロス、NTT東日本、東京都八王子市は2023年5月22日、「児童虐待対応の標準化及び人材育成に向けた実証実験に関する連携協定」を締結した。3者はこの取り決めに基づき、人工知能(AI)技術を取り入れた音声認識の機能を使った電話応対支援システム(AI電話応対支援システム)を、「児童虐待防止」の取り組みに利用する実証実験を開始した。
八王子市で子どもと子育て家庭を支援する「子ども家庭支援センター」(以下、支援センター)は、事業の一つとして児童虐待防止に向けた相談を受け付けている。相談対応件数の増加に伴い業務量が増える傾向にある中で、経験年数の短い職員の早期育成が課題だ。支援センターは複数の相談拠点を持っており、拠点間で迅速な情報共有を実施できるようにすることも課題の一つだ。
そこで3者は、支援センターの業務にAI電話応対支援システムを活用する実証実験を通じて課題の解消を目指す。支援システムには、NTTテクノクロスの「ForeSight Voice Mining」(フォーサイト・ボイス・マイニング)を使う。ForeSight Voice Miningは、コールセンターといった膨大な音声が飛び交う環境で音声認識を実現する機能を持つ。
実証実験では、AI電話応対支援システムの文字起こし機能で通話内容をリアルタイムにテキスト化し、それを基に管理者が電話応対中の職員を遠隔地から即時支援する。この取り組みで拠点間での迅速な情報共有と職員の育成を促す。注目すべきキーワードや関連するマニュアルを通話内容に沿って自動で表示することで、通話中に相談者から聞き取りすべき項目の確認を強化することもできる。これによって業務の標準化が進むことが期待できる。
NTTテクノクロス、NTT東日本、東京都八王子市は、本実証実験を2023年6月30日まで実施する計画だ。
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