AI技術はビジネスに有用だという見方は一般化しつつあるが、「仕事を奪われるのではないか」という考えもいまだにある。実際にそうなのか。ある介護事業者がAIチャットbotを人材採用に活用して得た利点を紹介する。
人工知能(AI)技術のビジネス利用を巡る懸念事項の一つが、従業員が抱く「自分の仕事が奪われるのではないか」という不安だ。こうした不安は杞憂(きゆう)に終わる可能性がある。今のところ、AI技術を使ったシステムは仕事を補完するツールであり、従業員にとってプラスになると人事部門は見なしている。
介護事業者Help at Homeは人材採用業務のために、Paradoxのチャットbotを導入した。このチャットbotはAI技術を搭載しており、テキストメッセージで求職者とやりとりをする中で、求職者の資格情報を収集し、求職者をふるい分け、面接のスケジュールを組む。採用担当者に面接の予定をリマインドする機能もある。
Help at Homeの介護職採用担当バイスプレジデントであるサラ・アンダーソン氏によると、このチャットbotを導入する以前は、採用担当者が求職者追跡システムにログインして求職者に電話をかけ、面接のスケジュールを組む必要があった。「AI技術は人事の面倒な事務作業を処理してくれる」とアンダーソン氏は言う。
2022年10月に調査会社Gartnerが主催したカンファレンス「Gartner ReimagineHR Conference」の場で、アンダーソン氏はAI技術について「本当に、人と人との対話のために時間を解放してくれる」と語り、人材採用にかかる時間も短縮できると強調した。Gartnerのアナリストであるクリストファー・ロング氏は同カンファレンスで、「AI技術は仕事を改善する機会を与えてくれる。従業員はより有意義で戦略的な仕事に時間を割くことができるようになる」と語った。
「人事部門はAI技術が仕事に与える影響と、その論議の在り方を見直すべきだ」とロング氏はアドバイスする。「人間対AI」という考え方から、人間とAI技術とが補完し合う「コラボレーティブインテリジェンス」という考え方へと切り替える必要があるというのが、同氏の主張だ。
後編は、AI技術のビジネス活用で若手従業員が影響を受ける可能性について考察する。
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