多要素認証(MFA)の抜け道をふさぐ【前編】
「Microsoft 365」を狙うフィッシング攻撃は“あの基本機能”を悪用していた
Microsoftのセキュリティ研究チームは、「Microsoft 365」ユーザーが標的となったフィッシング攻撃「AiTM」について調査結果を公表。攻撃はどのように展開し、何が悪用されたのか。
2022年7月、Microsoftのセキュリティ研究チームは、フィッシング攻撃「Adversary-in-the-Middle」(AiTM)についての調査結果を公表した。同チームによると、2021年9月以降、1万社を超える企業がこの攻撃の標的となっている。
本稿は、Microsoftのサブスクリプション型オフィススイート「Microsoft 365」を標的とした、AiTMの一連の攻撃を解説する。
AiTMは誰もが使う“あの基本機能”を悪用
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「Microsoft 365」とセキュリティ
Microsoftのセキュリティ研究チームによると、AiTMは以下のような特徴を持つ。
- 多要素認証(MFA)といった認証プロセスを迂回(うかい)する
- フィッシングサイトを利用してパスワードを盗み出す
- セッションハイジャック(利用者を識別するための情報であるセッションIDを盗取して、本人になりすまして通信すること)を実行する
Microsoft 365を標的にしたAiTMにおいて、攻撃者が最初に仕掛けたわなは、ボイスメールメッセージの受信を被害者に通知する電子メールだった。被害者がボイスメールを開封した後の一連の攻撃は、ほぼ全てのWebサービスに組み込まれている、ある機能を悪用していた。その機能とは、ユーザー認証後に用いる「セッションCookie」だ。セッションCookieは、ユーザーがWebサービスで認証済みであることを証明し、再度認証しなくてもセッションを続けられるようにする。
攻撃者は、情報を盗みたいWebサービスと被害者の間にプロキシサーバを配置し、被害者とサービス間のHTTPのパケットを受け取った。これにより攻撃者は、被害者からユーザー認証のための資格情報を、Webサービスからは正規のセッションCookieを盗み出した。
今回の調査によると、攻撃ではMicrosoftのID・アクセス管理システム「Azure Active Directory」のサインインページがプロキシサーバを配置する対象となったが、他のWebサービスでもこの手法は機能する。
攻撃者は資格情報とセッションCookieの両方を盗み出し、それらを自身のブラウザに適用することで、MFAが有効になっていたとしても認証プロセスをスキップできる。一方、それに気付かない被害者は、その状態のまま業務を継続してしまう。
この手口は攻撃者にとって便利なものだ。ユーザーが信頼するWebサービスのURL部分のみを変更して偽のWebサービスを被害者に提示するため、通常のフィッシング攻撃のようにフィッシングサイト自体を作成する必要がないからだ。
攻撃者は、盗み出した資格情報とセッションCookieを使って被害者のメールボックスにアクセスし、入手した個人情報を悪用してビジネスメール詐欺(BEC)を仕掛けている。
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