re:Invent 2025で語られた「自動化」と「予防」の鉄則
「AWS予算超過」の戦慄 “金曜朝のアラート”で冷や汗をかかない技術
AWSの年次イベント「re:Invent 2025」で、コスト最適化をテーマにしたセッションが開催された。開発者が即実践できる削減手法や自動化戦略とは。
「金曜の朝、今週は順調だと思っていたら、AWSの予算が超過しているというアラートが自分と上司に届いた。慌てて調査すると“異常はない”と表示された」――悪夢をこう切り出したのは、AWSのステフ・グーチ氏(シニアオプティマイゼーションアーキテクトアドボケート)だ。
グーチ氏は2025年12月、Betsson Groupのケネス・アタード氏(エンタープライズアーキテクト)とともに、今すぐ実践できるAWSのコスト最適化、AIを使った最適化の高速化、無駄を生まない仕組み作りの3点を解説した。同社は、24の国と地域でアミューズメントサービスを展開する企業だ。この内容は、米ラスベガスで開催されたAWS(Amazon Web Services)の年次イベント「AWS re:Invent 2025」のセッション「Optimize AWS Costs: Developer Tools and Techniques」で共有されたものだ。
AWSのコスト最適化は「削る」→「自動化」→「防ぐ」の3段階で進める
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登壇者の2人は、以下のサービスや手法を使ったコスト最適化について共有した。
「AWS CloudTrail」
AWS CloudTrail(以下、CloudTrail)は、AWSアカウント内での設定変更履歴や、管理イベントの記録を提供するログ監視サービスだ。「Trail」(証跡)は、ログの収集単位を指す。CloudTrailには無料プランが用意されているが、以下に注意が必要だ。
- 2つ目以降のTrailを作成、運用するごとに料金が発生する。
- CloudTrailのイベントをSQLクエリで高速で分析できるツール「CloudTrail Lake」も有料だ。CloudTrail Lakeを、どのログを収集しているか整理しないまま使っていた場合、同一のログを何重にも保存して課金される恐れがある。
対策は?
- 組織に存在するAWSアカウントにひも付くCloudTrailの数とCloudTrail Lakeの使用実態を棚卸しする。
- 不要なCloudTrailを各アカウントから削除する。
- アカウント管理サービス「AWS Organizations」の管理アカウントで作成し、組織内全アカウントのイベントを一元記録するOrganization Trailに統合する。
「Amazon Elastic Block Store」
AWSのブロックストレージサービスAmazon Elastic Block Store(以下、Amazon EBS)は、同社の仮想マシンサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)のインスタンス1台に1対1で接続して使う。Amazon EBSのボリューム(ストレージの論理的な保存領域)がEC2のインスタンスと接続していなくても、存在するだけで課金される。
対策は?
- EC2のインスタンスと接続していない(未アタッチ)状態のAmazon EBSを洗い出す。
- 重要なデータが格納されている場合、スナップショット(ファイルやストレージのある時点の状態を記録したもの)を取得する。
- それ以外は削除する。これにより、「保険として残していたAmazon EBS」が課金され続けないようにできる。
不要なネットワーク
この目的は、通信経路を作り過ぎていないか確認することにある。
ロードバランサー
AWSのロードバランサー(負荷分散装置)「Elastic Load Balancing」(ELB)は、「スキーム設定」で、インターネットからアクセス可能であることを意味する「Internet-facing」という設定を選択できる。インターネットからアクセス可能な、“PublicなELB”には、時間当たりの基本料金などの利用料だけでなく、「IPv4」アドレスの利用料も発生する。つまり、PublicなELBを立てることと、パブリックIPv4アドレス利用料の二重課金構造になる。
ネットワークアドレス変換(NAT)ゲートウェイ
NATゲートウェイは、仮想ネットワーク内部での通信が可能なサブネット(IPアドレスの範囲)である「プライベートサブネット」と、インターネットの間に制限付きの一方向接続を構築する。このゲートウェイの問題は、起動中に毎時課金されることだ。
「AWS Transit Gateway」
AWS Transit Gateway(以下、TGW)は、AWS内の論理的な隔離ネットワーク「Amazon Virtual Private Cloud」(Amazon VPC)と、オンプレミスのネットワークを接続するハブとなるサービスだ。「実験的に構築したTGWを本番移行し忘れたままにした」「複数のTGWを作成し、経路が重複した」といった場合も、利用時間で料金が発生する。
対策は?
- 使われていないロードバランサー
- 役目を終えたNATゲートウェイ
- 不要なTransitGW
を一括棚卸し、削除する。
Right-sizing
「性能に対してインスタンスが大きすぎないか?」と疑問を持つことが出発点になる。例えば、
- CPUの使用率は5%なのに、m6i.4xlarge
- メモリも全然使っていない
といった場面だ。
m6i.4xlargeは、EC2の汎用インスタンス(M6iファミリー)の「4xlargeサイズ」で、第3世代インテルXeonスケーラブルプロセッサを搭載した高性能サーバだ。m6i.4xlargeは以下のスペックを備える。
- 仮想CPU(vCPU)
- 16コア(32スレッド)
- メモリ
- 64GB
m6i.4xlargeは大容量インスタンスであるにもかかわらず、CPUの使用率が平均5%という状態は、実使用率が極端に低い状態を指す。この状態はRight-sizing(適切なサイズ設定)を実施し、コストを削減できる可能性がある。
対策は?
- 「AWS Compute Optimizer」
- AWSの各クラウドサービスのコスト削減を支援するツール
- 「Cost Optimization Hub」
- AWSのコスト最適化ツール
を使用する。
- 過剰なサイズになっているEC2を小さくする。
Graviton
サーバプロセッサを「Intelのままで放置していないか?」と立ち止まって考えるのがポイントだ。例えば、x86系プロセッサを搭載したサーバ(x86サーバ)を使い続けているのであれば、Armが設計した64bitのプロセッサアーキテクチャ「ARM64」を基盤とするサーバプロセッサ「Graviton」に変えるだけで以下のメリットを享受できるという。
- 価格の安さ
- 性能
対策は?
- EC2
- リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)
- 「AWS Lambda」(サーバレスコンピューティングツール)
を以下のインスタンスタイプに置き換える。
- m6g
- Graviton、Graviton 2を採用したインスタンスタイプ
- c7g
- Graviton3を採用したインスタンスタイプ
- t4g
- Graviton 2を採用したインスタンスタイプ
Amazon S3/EBSストレージ
- 何年も前のログ
- 二度と見ない検証データ
があった場合、「捨てられるデータを捨てているか?」という考え方を持つことが肝要だ。そこで、
- 不要な「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)のデータを削除する。
- 必要だが低頻度なデータは「Amazon S3 Glacier」やAmazon S3の自動階層化機能「Intelligent-Tiering」へ移行する。
登壇者の2人は他にもさまざまなコスト最適化手法を紹介している。
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