秘密分散技術による「セキュアFAT」を導入
デスクトップ仮想化コストは6分の1に 星野リゾート系が“脱シンクライアント”
高額なライセンス料やビデオ会議の不安定さ。VDIの限界に直面した星野リゾート・アセットマネジメントが選んだのは、VDIを捨てる「逆転の発想」だった。
星野リゾート・アセットマネジメントは、業務端末の運用コスト削減と生産性向上を目的に「ZENMU Virtual Drive Enterprise Edition」を採用した。2026年3月3日、ZENMU Virtual Driveを提供するZenmuTechが発表した。従来のVDI(デスクトップ仮想化)環境から秘密分散技術を活用したセキュアFATクライアントへ移行したことで、運用コストを6分の1に低減した。オフライン環境での業務継続を可能にし、社員の利便性とセキュリティ対策の両立を図る。
ZENMU Virtual Drive Enterprise Editionを選んだ決め手とは
併せて読みたいお薦め記事
セキュリティ運用の問題とは
星野リゾート・アセットマネジメントは、星野リゾートの100%子会社として不動産投資や資産運用を担う企業だ。日本初の観光特化型REIT(不動産投資信託)である星野リゾート・リート投資法人の資産運用など、金融商品を扱うため、金融庁のガイドラインに沿った厳格なセキュリティ対策が求められていた。
同社は2021年から2022年にかけて、リモートワーク時の情報漏えい対策を強化するため、全社員の業務端末をクラウド型VDIベースのシンクライアントへ切り替えた。しかし、VDI環境は同社のワークスタイルに十分適合していなかった。同社の社員は全国各地の不動産物件へ赴くことが多く、ネットワークが不安定な場所や移動中には業務が停滞する問題が頻発していた。また、Web会議の際にカメラやマイクの接続に制限があり、VDI環境外のネットワークを使用しなければならないといった複雑な運用も課題となっていた。
これらの課題を解決するため、同社はVDIの代替ソリューションとしてZENMU Virtual Drive Enterprise Edition(ZEE)を選定した。選定の決め手となったのは、端末のデータレス状態を維持しながら、オフラインでも業務を継続できる利便性だ。ZEEは独自の秘密分散技術により、データを無意味な2つの断片に分割し、端末のローカルディスクと外部機器(スマートフォンやクラウドストレージなど)に分散して保存する。2つの断片が揃わない限りデータとして復元できないため、万が一端末を紛失しても情報が漏えいするリスクを抑えられる。
同社経営企画本部の高本智之氏は、ZEEベースのセキュアFATクライアントは理想的だったと指摘する。ユーザーは仮想ドライブにデータを保存するだけで自動的に分散保存され、ネットワークが切断されても端末とスマートフォンがあれば業務を継続できる。データの断片は非常に小さいため、ネットワークや端末の性能に悪影響を与えない点も魅力だった。また、金融業界での導入実績があり、リモートからのロックにより情報漏えいを阻止できる強固なセキュリティ機能が同社の要件に適合していたことも採用を後押しした。
導入プロジェクトは2024年6月に始動し、検証を経て同年11月から全社員約80名を対象に本番運用を開始した。導入後の効果は顕著で、運用コストはVDI利用時と比較して6分の1にまで削減された。運用面でも、ネットワークに関する社員からの問い合わせがほぼ解消され、システム担当者の対応負担が1日平均20分程度減った。
さらに、セキュリティインシデント発生時の対応にもメリットが生まれている。万が一端末の盗難や紛失が発生した場合でも、意味のあるデータを端末に残さない仕組みにより、確実な情報漏えい阻止策を講じていると報告できる。高本氏は、これによって企業への信頼性が大きく変わると見ている。
社員の生産性向上も大きな成果だ。移動先で業務を止めずに済むようになったほか、Web会議の運用が容易になり、リモート環境での情報共有が効率化したという声が多く寄せられている。高本氏は、以前はセキュリティ維持のために社員に不便を強いてきたが、ZEEの導入によりその必要がなくなったことを評価している。今後はZEEのような革新的な技術を積極的に取り入れ、ITを活用した業務改革を継続していく。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「星野リゾート・アセットマネジメント、秘密分散技術で運用コストを6分の1に削減し生産性向上」(2026年3月3日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社キーエンス] PCが苦手でも自動化できる ポポラマーマなど4事例に学ぶ「ナビ搭載型RPA」活用 -
製品資料
[株式会社クレオ] IT部門を“価値創造組織”へ転換 IT管理プロセスの改革で戦略的リソースを確保 -
製品資料
[株式会社クレオ] Excel管理が限界に――ITサービス管理の脱・属人化と運用高度化を実現する方法 -
製品資料
[株式会社クレオ] 西武グループやイオングループも実践 事例に学ぶ「ITサービスデスク業務」改善 -
製品レビュー
[株式会社クレオ] 「使われないITシステム」から脱却 現場が求める業務改善を実現する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
2
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
世界PC出荷数が20%急減 情シスを直撃するPC先行調達の反動と価格高騰
-
5
326のIPアドレスで1200超のアクセス AIエージェント関与が疑われる攻撃の中身
-
6
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
7
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
IT業界の女性は9割が10年で消える 人材枯渇を招く“見えない壁”の正体
-
10
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
6
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー