アクセンチュアが調査
若手をAIで代替する企業は、10年後にスキルが断絶する
AIによって10年以内に仕事が消えると危惧する労働者が急増する一方、企業の対応は致命的に遅れている。アクセンチュアの調査によれば、スキル監査済みの企業はわずか26%にとどまり、現場では「勝手AI」が横行している。
2030年までに自分の仕事が消滅するか、原型を留めないほど変わると予測する労働者は31%に上る。これは18カ月前の調査と比較して2倍の割合だ。
アクセンチュアが発表した報告書「Generating impact」で、この実態が明らかになった。労働者の79%がスキルの再習得(リスキリング)が必要だと考え、55%が職種を変える可能性があると回答している。
労働者の危機感と企業の支援不足
労働者の不安が広がる一方で、企業側の対応は遅れている。AIが各職務に与える影響を評価するために「スキル監査」を実施済みの企業は、わずか26%にとどまる。
また、27%の企業は組織規模でのAIトレーニングを提供していない。リスクのある職務の従業員に、再教育や配置転換の経路を確保している企業も30%にすぎない。
経営者の意識にも変化が見られる。2024年初頭には「AIが国内の労働力を減少させる」と考える経営者は3分の1だったが、現在は49%へと上昇した。経営者が「人員削減は避けられない」と仮定すれば、従業員の移行を支援する投資意欲は減退する。AIによる効率化を、リスキリングや新たな雇用創出といった「包括的な成長」につなげることが大きな課題だ。
若手採用の縮小が招く「スキルの断絶」
特に深刻なのは、ジュニア層の採用への影響だ。2024年には経営者の40%がエントリーレベルの採用需要が増えると予測していたが、現在は15%にまで急落している。
逆に、需要が減るとの回答は22%から37%に上昇した。これは、企業が若手人材を雇用して育成する代わりに、AIでその役割を代替しようとしていることを示唆している。将来のスキルを支える人材パイプラインが細くなる恐れがある。
労働者の54%はAIに対応するためのリスキリングに意欲的だ。しかし、従業員がエージェンティックAI(自律型AIエージェント)を使いこなす準備ができていると回答した経営者は、わずか7%だった。
ワークフロー再設計なき個別最適のわな
AIの導入は、企業の正式なシステム外でも進んでいる。従業員の24%が自らツールを調達して業務に利用している。これは現場が個別のタスク単位でAIを導入している一方、組織側がシステムやワークフローを再設計できていない証拠だ。
過去1年間にチームの主要なプロセスをAIに合わせて再設計したと答えた従業員は、約4分の1にとどまる。再設計がなければ生産性の向上は一部とどまり、企業全体の業績には結び付かない。
一部の部門だけがAIで効率化し、他は従来通りの手法で働く「組織の二極化」が進むリスクがある。
アクセンチュアの英国・アイルランド部門責任者であるマット・プレブル氏は、次のように警鐘を鳴らす。「AIによる生産性の向上は、企業業績だけでなく経済全体のレジリエンス(回復力)の核となる。現状では、労働者が組織よりも速く動いている状態だ」
プレブル氏は、AIの導入を真の経済価値に変えるには、仕事の進め方そのものを再考する必要があると強調している。
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