“今”安全かどうかをリアルタイム監視
「脆弱性診断の直後」の死角をどう解消? 住信SBIネット銀行のクラウド運用術
住信SBIネット銀行は、マルチクラウド環境のセキュリティリスクを一元管理する「Cloudbase」を導入した。定期診断による「点」の監視から脱却し、設定ミスや脆弱性を継続的に可視化する体制を構築している。
「クラウドファースト」の方針が定着している企業では、用途に応じてクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドの運用が本格化している。こうしたシステム構成のセキュリティ対策として、外部ベンダーによる定期的な脆弱(ぜいじゃく)性診断やペネトレーションテストを実施し、「重大なリスクなし」というお墨付きが出れば安心だと考えるのは早計だ。
アジリティー(機敏性)が高いクラウドシステムは、日々新しいコンピューティングリソースが追加され、設定が変更される。監査を実施した数秒後に、現場のエンジニアが意図せず脆弱な設定を反映すれば、自社の機密情報が危険にさらされかねない。定期診断はあくまで「対策を講じた時点ではセキュアだったかどうか」を調べるものに過ぎず、「今この瞬間も安全である」ことを保証するものではない。
インターネット専業銀行として、セキュリティを経営上の最重要課題と位置付ける住信SBIネット銀行も、「点での確認」にとどまっていることに強い危機感を抱いていた。SaaS(Software as a Service)などのクラウドサービスの設定ミスを原因とした情報漏えい事故が相次いで報じられている。
万が一の事態が起きれば、経営層から「なぜ防げなかったのか」「今、当社のシステムは安全だと言い切れるのか」と厳しく問われるのはIT部門だ。この課題に対し、住信SBIネット銀行がたどり着いた「リアルタイムな可視化」とはどのようなものか。
「今が安全」をどう証明するか? 住信SBIネット銀行の決断
住信SBIネット銀行は、マルチクラウド構成におけるセキュリティ状況のリアルタイムな可視化を目的に、マルチクラウド構成の設定ミスや脆弱性などのセキュリティリスクを一元的に可視化、管理できる日本発のセキュリティシステム(CNAPP:Cloud Native Application Protection Platform)「Cloudbase」を採用した。2026年4月8日、Cloudbase社が発表した。設定ミスや脆弱性の継続的なモニタリングを可能にすることで、迅速なリスク対処と部門間連携の強化を実現した。
インターネット専業銀行である住信SBIネット銀行は、セキュリティを経営上の最重要課題に位置付け、業務系システムやOA(オフィスオートメーション)システムなどでマルチクラウドを活用している。従来は、構築時の確認や定期的な脆弱性診断を実施していたが、診断直後の設定変化によるリスクをカバーし切れない「点」での確認にとどまっていた。相次ぐクラウドサービスの設定ミスによる事故を背景に、「今この瞬間も安全かどうか」を常に把握できる仕組みが必要だと判断した。
Cloudbaseの採用に当たっては、将来的な拡張性やサービスの進化への期待に加え、検出結果や修正方法が日本語で明確に提示される点を評価した。海外製品と比較して、専門知識が十分ではない関係部署への展開が容易であり、組織全体のスピード感に寄り添った並走パートナーとしての価値を重視した。
導入後は、システムリスク管理部のCSIRTグループがハブとなり、検出されたリスクを開発やインフラ部門へ共有する体制を構築した。日本語による具体的な修正指示によってコミュニケーションの手間が大幅に削減され、各部門が自律的にリスク対処を進められるようになった。AWSのネイティブ機能を利用して多層的に確認することで、セキュリティ対策への確信と安心感の獲得にもつながっている。
可視化された情報は、経営層への月次報告にも活用されている。単なる数値の報告にとどまらず、継続的な監視と統制ができている実態を共有することで、経営とのコミュニケーションも強化された。今後は、SBOM(ソフトウェア部品表)機能などの活用も視野に入れ、セキュリティを事業成長の土台としてさらに進化させる。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「住信SBIネット銀行、Cloudbaseでクラウド環境を可視化 リアルタイム監視体制構築」(2026年4月10日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
5
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
6
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
7
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
8
AI導入後に発覚する「社内文書を読めない」問題 情シスは何を直せばいい?
-
9
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
10
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー