2026年は接続性の年
AnthropicのMCP共同作成者が明かす「MCPの現在地とつながる未来」
AnthropicのMCP責任者、デビッド・ソリア・パラ氏が、MCPの普及が進む現状と、AIエージェント設計の新指針を紹介した。
AIエージェントと外部ソースを連携させるMCP(Model Context Protocol)を巡る議論が、新たな段階に入りつつある――。AnthropicのMCP共同作成者、デビッド・ソリア・パラ氏は2026年4月20日、登壇した講演でこのような見通しを示した。
MCPは、AIモデルと外部システムを接続するための標準プロトコルだ。Anthropicが標準化を進め、OpenAIやGoogle、LangChainなど多数のAI関連ツールがMCPの採用を進めている。ソリア・パラ氏によれば、MCP関連のSDKやフレームワークは、月間1億1000万ダウンロード規模に達したという。では、MCPはこれからどうなっていくのか。
MCPの現在地と未来
ソリア・パラ氏は、2026年のAIエージェントでは「接続性」(コネクティビティ)が最大のテーマになると説明する。財務分析やマーケティングなど、実際のナレッジワーカー業務をこなす“汎用エージェント”としてのAIエージェント活用が広がると予測しているためだ。ただし、その接続方式に“単一の正解”は存在しないという。
同氏は、AIエージェントのコネクティビティを向上させるのであれば、「Skills」「CLI」(コマンドラインインタフェース)、「MCP」を用途や状況に応じて使い分けたり、シームレスに組み合わせたりすることが重要だと説明する。
「Skills」は、ドメイン知識や業務ノウハウをまとめた比較的シンプルな仕組みだ。「CLI」は、ローカル環境で動作するコーディングエージェント向けに適しており、GitやGitHubのように事前学習済みのツールと相性が良い。
一方、「MCP」は、認証やガバナンス、リッチUI(ユーザーインタフェース)、長時間のタスク実行、プラットフォーム非依存性といった“エンタープライズ向け要件”を重視する場合に適しているという。
つまり今後のAIエージェントは、「MCPだけ」「CLIだけ」で動くのではなく、用途に応じて複数の接続方式を組み合わせながら動作する形へ向かうというのがソリア・パラ氏の見立てだ。
AIエージェント実装で重要になる“2つの改善”
ソリア・パラ氏は、AIエージェントを本格運用するには、クライアント側の実装改善が必要だと指摘する。
その対策としてソリア・パラ氏が重視するのが、「プログレッシブディスカバリー」(段階的発見)と「プログラムによるツール呼び出し」だ。
プログレッシブディスカバリー
プログレッシブディスカバリーは、必要になったタイミングでツールを動的に読み込む考え方だ。従来のように、全ツールを最初からコンテキストウィンドウへ投入すると、コンテキストの消費量は肥大化する。そこで、AIモデルが「必要だ」と判断した時だけツールをロードする方式へ移行すべきだという。
プログラムによるツール呼び出し
プログラムによるツール呼び出しは、AIモデルに1つずつツールを実行させるのではなく、スクリプトを書かせ、「REPL」(1行入力すると、その場で実行する対話型のプログラミング環境)で一括処理させることで、遅延とコストを抑える。MCPの「structured output」(構造化出力)機能を使うことも有用だ。AIエージェントがツールの戻り値の型やデータ構造を理解できるようにする仕組みであるstructured outputを使えば、複数ツールの実行結果を組み合わせた処理をしやすくなる。
「REST APIをそのままMCP化」は“悪手”
サーバ側の設計についても、ソリア・パラ氏は問題を提起する。
同氏は、「REST APIをそのままMCPサーバに変換するのは悪手だ」と語る。既存のREST API(外部システムがHTTP経由でアクセスするためのAPI)を1対1でMCPツール化すると、AIエージェントにとって扱いにくい大量のツールが並び、推論負荷やコンテキスト消費量が増大するためだ。
重要なのは、「API視点」ではなく「人間がどう使いたいか」という視点でAIエージェントを設計することだという。例えば「顧客情報を取得する」「承認フローを完了する」といった業務単位でツールをまとめることで、AIエージェントは扱いやすくなる。
Anthropicが進めるMCP拡張
Anthropicは今後、MCP自体の拡張も進めるという。
その1つが、OktaやGoogle Workspaceなどの企業IDプロバイダ(IdP)と連携する「cross-app access」だ。一度ログインすれば、複数のMCPサーバへ再認証なしでアクセスできる仕組みを目指している。
さらに、「server discovery」機能も追加予定だ。これは、Webサイトへアクセスした際に、利用可能なMCPサーバを自動検出する仕組み。ブラウザやAIエージェントによる利用を想定している。
さらに同社は、「Skills over MCP」と呼ばれる機能にも取り組む。これは、大規模なMCPサーバに対して、単なるツール群ではなく、「どう使うべきか」というドメイン知識や運用ノウハウも一緒に配布する仕組みだ。
ソリア・パラ氏は、「2026年は接続性の年だ」と強調する。企業IT部門にとって重要なのは、「どのAIモデルを導入するか」だけではなく、「AIエージェントにどのシステムを、どの権限で、どの接続方式を使って接続させるか」という設計そのものが、新たな管理対象になり始めている点かもしれない。
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