費用削減だけではない「DaaS」の真価
「PCのお守り」から情シスを解放せよ 日立が17万台の運用を手放した真意
従業員用PCの調達から廃棄まで、IT担当者は日々PCの「お守り」業務に追われている。日立グループが最大17万台規模のPC運用を外部化した理由から、脱・雑務のヒントを探る。
「またPCが壊れた」「新入社員の端末手配が間に合わない」――。企業のIT部門において、従業員用PCのライフサイクル管理(調達、キッティング、配備、保守、廃棄)は、想像以上に担当者の時間と気力を奪う“見えない負債”だ。
グローバル展開やハイブリッドワークの普及に伴い、各拠点やグループ会社がばらばらに管理しているIT資産は、ガバナンスの死角を生みやすい。これが監査手続きの遅れやセキュリティリスク、複数ベンダー管理による間接費の肥大化を招いている。
この「PC管理の泥沼」に対し、日立製作所は抜本的な決断を下した。同社は、2028年度(2029年3月)までにグローバルグループ全体で最大約17万3000台のPC運用を、従来の購入・レンタル中心のモデルから、月額課金型のDaaS(Device as a Service)へと全面的に切り替える計画を発表した。
Lenovoが提供するDaaSは、発注手続きの代行や日立社内システムへの登録作業、エンドユーザーからの故障報告への対処といった「IT部門の事務作業」も一括してマネジメントするサービスだ。単なるアウトソーシングの枠組みを超え、日立グループが目指したグローバルIT運用最適化の全貌と意思決定プロセスを解き明かす。
日立が17万台のPC運用を手放した「戦略」
日立製作所は、グローバルにおけるPC調達と運用の最適化を目的に、Lenovoのサブスクリプション型サービス「Lenovo TruScale DaaS」を採用した。2026年5月28日、レノボ・ジャパンが発表した。2028年度までに日立グループ各社向けに最大約17万3000台のPCを同サービス経由で調達する計画で、調達から配備、運用、サポートまでを一元管理することで、ITインフラの標準化とコストの最適化、運用負荷の軽減を図る。
日立グループは、クライアントPC戦略の目標として、従業員の生産性やモチベーションの向上、業務の俊敏性(アジリティ)とセキュリティの強化、コスト最適化を掲げている。この方針の下、PCの調達手法を従来の購入やレンタル中心から、IT機器の利用と管理を月額課金で提供するDaaS(Device as a Service)モデルに切り替える取り組みをグローバルに進めてきた。
今回のDaaS導入によって、従来は拠点やグループ会社ごとに個別対応していたPCの調達、配備、運用、保守、サポートを、サービスとして一括して利用できるようになる。これによって、機種選定や発注・更新管理といった調達関連業務にかかる工数に加え、IT資産管理や障害対応など運用面の負荷を抑える狙いだ。グループ共通のセキュリティ標準に沿ったPC構成を提供し、監査対応の効率化やコンプライアンス水準の平準化を進める。なお、調達対象のPCにはLenovo製だけではなくサードパーティー製品も含まれ、Lenovoが一括調達と提供を担う。
サービス選定の過程では、100カ国以上にサービス網を持つLenovoのグローバル展開体制と、安定したデバイス供給体制、ファイナンススキーム、サービス提供力、サポート体制などを評価した。各国・地域で別々に実施していた調達や運用を集約することで、ベンダー調整や契約管理などにかかる間接費用を削減できると見込む。海外拠点を含む工場でのキッティングサービスを活用することで、現地でのセットアップ作業の負荷軽減やPC配備までのリードタイム短縮、運用効率の向上を図る。
大規模なPC運用を安定して進めるための中核として、日立グループ向けにカスタマイズした専用運用管理体制「セントラルオペレーション」を構築した。これは、営業、サービスデリバリー、サポートの各部門に加え、グローバルの製造・物流拠点など複数の組織が連携し、Lenovoが一元的にマネジメントする仕組みだ。専任のサービスデリバリーマネジャーが、日立グループ全体のPCライフサイクル管理を統括し、発注や在庫管理などの事務手続きの代行、日立社内システムへの登録作業、ヘルプデスク業務といった運用をカバーする。これによって、供給計画の最適化や標準的な品質の維持、要件変更に素早く適応可能になる。
地域やタイムゾーンをまたぐサポート体制を整備したことで、日本を拠点にグローバル展開する日立グループの従業員が、世界各地で同じ水準をPC利用でき、サポートを受けられる体制が整った。障害発生時の対応窓口を明確にし、どの拠点でも共通のプロセスでサポートを受けられるようにすることで、運用のばらつきを抑える狙いもある。
日立製作所 ITデジタル統括本部エンプロイーエクスペリエンス本部 本部主管の清水裕樹氏は、「Lenovoは長年にわたって日立グループのPC運用を支援してきたパートナーだ」と評価した上で、「Lenovo TruScale DaaSによって、これまで個別に処理していたPCの調達、購入、サポート、廃棄の一連の業務を一括で任せられるようになった」と述べる。納期短縮や要件変更への適応を含め、運用上の自由度が高まった点をメリットとして挙げている。LenovoのAI PCを、今後の日立グループにおけるAI活用のインフラとしても活用する計画だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「日立製作所、最大17万3000台規模のPC運用をサブスク化してグローバルIT運用最適化」(2026年6月1日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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