復旧費は平均2億6300円

狙われるのは人だけではない 調査が示す「AIエージェントのID」管理不備の末路

AIエージェントの導入が進む裏で、システム間の連携に使われる「非人間アイデンティティー」(NHI)が攻撃の新たな入り口として悪用されている。企業が直面している“アイデンティティー管理の死角”とは。

 現代のビジネスの現場において、システムやデータへのアクセス権を証明するアイデンティティー情報は、サイバー防衛の最前線でありながら、最も狙われやすい脆弱(ぜいじゃく)な境界だ。クラウドサービスの利用拡大やテレワークの定着に伴い、社内LANの境界線が曖昧になっている。システムにアクセスする人だけでなく、システム同士が自動で連携するために使われる「非人間アイデンティティー」(NHI:Non-Human Identity)が急速に拡大している。その結果、攻撃者にとっての侵入経路も飛躍的に広がっている状況だ。

 セキュリティベンダーSophosは2026年第1四半期(1~3月)に、米国、日本、英国など17カ国におけるITおよびサイバーセキュリティの意思決定者5000人を対象とした調査を実施し、その結果を「State of Identity Security 2026 Report」にまとめた。それによると、調査対象企業の7割以上(70.9%)が、過去1年間で少なくとも1回のアイデンティティー関連のセキュリティ侵害を経験したと回答している。

 被害を受けた企業のうち14.4%は、システムに深刻な被害が発生する前に攻撃の兆候を捉えられず、その結果として攻撃を阻止できなかった。データの暗号化や暴露といった致命的な被害に発展し、平均164万ドル(約2億6300万円)に上る復旧費用の支出を余儀なくされている。

 なぜ攻撃の初期段階で阻止できないのか。アイデンティティー侵害がランサムウェア(身代金要求型マルウェア)被害に直結する理由や、攻撃の新たな侵入口になったNHIの管理における課題について、調査結果を基に解説する。

ますます管理不能になる「非人間ID」

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