F1日本GPで「途切れない」大規模通信 ソフトバンクとエリクソンが挑んだ「スピードの向こう側」
F1日本グランプリでソフトバンクとエリクソンが5G SAとミリ波を用いた大規模実証を実施した。国内最多となる5つのネットワークスライスを同時運用し、混雑下でも決済端末の安定稼働やXRの低遅延化を実現。上り速度を最大14倍超に引き上げた、次世代通信インフラの「正解」を解剖する。
F1は長らく最先端の工学設計と製造のショーケースとなってきたが、現在は通信分野の最先端を体現する場でもある。直近の事例として、エリクソンとソフトバンクは、2026年のF1日本グランプリで、5Gスタンドアロン(SA)とミリ波を活用した先進通信サービスの共同実証実験を実施した。
この実証実験は、2026年3月27日から29日まで鈴鹿サーキットで開催された「2026 FIA F1世界選手権シリーズ Aramco 日本グランプリレース」(F1日本グランプリ)のイベントサポーターとしての活動の一環だ。1つの物理的なネットワークを仮想的に分割し、用途やサービスごとに最適化された「専用ネットワーク(スライス)」を複数構築する「ネットワークスライス」が国内イベントで同時に利用された数としては過去最多を記録したという。
5つのネットワークスライスで通信速度はどう変わった?
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大規模なイベント会場では、多様な通信需要が同時に発生する。放送用映像の送信やキャッシュレス決済の処理に加え、来場者によるSNS投稿、動画の視聴やアップロードなどがその例だ。
実証実験では、特定の用途ごとに品質を改善する「ネットワーク制御」の有効性を、ソフトバンクの商用ネットワークで検証した。両社はミリ波通信を含む5つの独立したネットワークスライスを構築し、会場のユーザーに提供した。
実証に向け、エリクソンとソフトバンクは3バンド対応の「Massive MIMO(AIR6476)」を導入し、大容量通信を実現した。さらにミリ波対応無線機(AIR1281)を増設し、詳細なネットワーク設計を実施した。
このアプローチにより、特定用途に最適化した接続が可能になった。一般のソフトバンクユーザーにおける2025年大会との比較では、5G SAの利用者は通信速度がダウンリンクで4倍、アップリンクで14倍以上向上。5G NSA(ノンスタンドアロン)の利用者もそれぞれ約1.5倍、約6倍向上したという。
実証されたユースケース
実証実験には、5G SAユーザー向け高品質通信、拡張現実(XR)、決済支援、公衆Wi-Fi用ミリ波バックホール、ミリ波によるワイヤレスカメラ映像伝送が含まれる。
具体的には、5G SA契約者により多くの帯域を割り当てて性能を向上させた。また専用スライスにより、広帯域・低遅延が求められるXR体験イベントを実現した。一部店舗の決済端末には安定したプライベート5G接続を提供し、公衆Wi-Fiは固定無線アクセス(FWA)で構築した。
さらに、エリクソンの「5G Advanced機能」(スループット制御・低遅延最適化・ミリ波制御など)を活用することで、用途に応じたリソース割り当てを最適化。一般ユーザーに安定したサービスを提供しつつ、混雑時でも決済端末の処理をスムーズに進めることができたという。
特に、低遅延が求められるXRでは、下りの無線区間の遅延を同時刻の一般ユーザーと比較して10分の1に抑制したことを確認したとしている。
放送・ライブ配信への貢献
ライブ放送用のワイヤレスカメラと映像伝送環境も提供された。決済処理と同様に映像品質を維持し、前年比で通信速度と接続容量が劇的に向上したという。
高トラフィック環境下でも、ユーザーがSNS投稿やライブ配信をシームレスに行える環境が確認された。エリクソンとソフトバンクは、今回の成果をモバイルネットワーク全体の最適化に役立てるとしている。
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