現場を変え過ぎないDXの裏側
見た目はそのまま、中身はデジタル 西尾市が挑む“現場の負担を増やさない”行政DX
愛知県西尾市役所は、帳票デジタル化サービス「そのままDX」の活用を開始したと発表した。同市がそのままDXを導入した決め手は。
自治体のデジタル化では、紙の申請書や「Microsoft Excel」を使った帳票(以下、Excel帳票)を新しいシステムに置き換えても、職員や市民が操作に慣れず、現場に定着しないことがある。既存の業務フローを大きく変えれば、研修や問い合わせ対応の負担も増えかねない。
愛知県の西尾市役所は、使い慣れた書類の見た目を保ったままデジタル入力フォームに変換できる「そのままDX」の活用を開始した。サービスを提供するcodeless technologyが2026年7月22日に発表した。
導入の経緯、サービスの強みとは
西尾市は、外国語対応フォームや市民向けの申請受付、庁内管理業務などへの活用を検討する。既存の紙書類やExcel帳票を生かしながら、現場の負担を抑えて行政業務を段階的にデジタル化する狙いだ。
そのままDXは、既存の帳票を一から作り直すのではなく、紙やPDF、「Microsoft Word」、Excelなどのレイアウトを維持したまま入力フォームに変換するサービスだ。
ユーザーは、従来の書類に近い画面で情報を入力できる。受け付ける側は、入力された情報をデータとして蓄積し、一覧表示や検索、CSV・PDF形式での出力、承認フローなどに利用できる。既存の業務フローを大きく変えなくてよいことも強みだ。
紙やExcelによる業務では、記入内容を別のシステムへ転記したり、複数のファイルを集めて集計したりする作業が発生しやすい。情報が担当者ごとのPCや紙の書類に分散すれば、検索や共有にも時間がかかる。
帳票をデジタルフォームに変換し、入力内容をレコードとして蓄積すれば、転記や集計、検索の負担を減らせる可能性がある。データを一元的に確認できるようになることで、情報共有や管理精度の向上にもつなげられる。
codeless technologyは、こうした仕組みを単なるペーパーレス化にとどめず、将来的なAI活用に向けたデータ基盤の整備にも役立てる考えだ。
外国語対応や市民向け申請に活用
西尾市役所では今後、音声入力や多言語翻訳に対応した外国人向け受付フォームへの活用を検討する。
外国人住民への対応では、申請書の記入方法や必要事項を日本語だけで案内することが難しい場合がある。音声入力や多言語翻訳を組み合わせることで、窓口担当者と申請者双方の負担を軽減できる可能性がある。
この他、市民向けの申請受付や庁内の管理業務、確認・承認、記録保管などへの展開も想定する。全ての業務を一度に置き換えるのではなく、既存の書類や業務フローを生かしやすい領域から段階的にデジタル化する方針だ。
情シスが注目したい「変え過ぎないDX」
行政や企業のDXでは、新しいシステムを導入すること自体が目的になりやすい。しかし、現場の業務や帳票を大幅に変更すると、操作研修や問い合わせ対応、データ移行など、別の負担が生じる。
西尾市の取り組みは、既存の帳票を維持しながら入力データだけを蓄積、活用できるようにするものだ。情報システム部門にとっては、新しいシステムへ業務を全面的に合わせるのではなく、現場が使い慣れた仕組みを残しながら段階的にデータ化する選択肢といえる。
一方、帳票の見た目を維持するだけでは、業務そのものの無駄が解消されない可能性もある。導入後は、入力や承認、集計にかかる時間が減ったか、必要なデータを検索・再利用できるようになったかといった効果を確認する必要がある。
西尾市役所は今後、実際の行政現場で使いやすい運用方法を検討しながら、外国語対応、市民向け申請、庁内管理などへ活用範囲を広げる予定だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「西尾市役所、『そのままDX』を活用した受付・報告業務のデジタル化を開始」(2026年7月22日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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