約8割が着手も完了は1割未満 中小製造業の「ペーパーレス化」が停滞する理由皮肉にも業務負荷が増加?

中堅・中小製造業において、生産性向上を目的に進められるペーパーレス化はあまり進んでいない。調査によると、取り組みが定着せず、逆に負担が増加したケースも散見される。何が現場の足かせになっているのか。

2026年06月18日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

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 生産性向上やデータ活用の推進を背景に、企業は書類業務のデジタル化を進めている。しかし、取引先とのやりとりや現場業務の特性が、抜本的な業務プロセスの変更を難しくしており、デジタル化による業務効率化を阻む要因になっている。

 コミュニケーションツールベンダーのLINE WORKSは2026年3月22日から3月30日にかけて、全国の従業員数1000人未満の製造業で働く従業員225人を対象に、紙書類の利用実態に関するインターネット調査を実施した。

 調査結果によると、全体の80.9%の企業がペーパーレスに取り組んでいる。しかし、「ほぼ全ての業務で問題なくペーパーレスが完了している」と回答した企業は、わずか8.9%にとどまった。多くの企業がデジタル化を目指してはいるものの、全面的な移行には至っていない実態が浮き彫りになった。

 なぜ、ペーパーレスは思うように進まないのだろうか。現場の業務プロセスを分析すると、紙書類を完全になくすことの難しさと、「無理しないペーパーレス」という新たな潮流が見えてくる。

「ペーパーレス化で業務負荷が増加」という皮肉

 ペーパーレス化はしばしば効率化の代名詞として語られるが、現実には想定通りの成果を上げられていない。ペーパーレスに取り組む企業のうち、「思うように進んでいない」「紙に戻すことを検討している」「現在は縮小している、やめた」と回答した企業の割合は44.2%に上る。

 特に、取り組みを「縮小した、やめた」企業(4.4%)の生の声からは、デジタル化がもたらす新たな摩擦がうかがえる。その理由として「システム入力・確認作業など、ペーパーレス化によって新たな工数が増えたため」や「コストに見合う効果を感じられなかったため」といった課題が挙がった。本来は業務を削減するためのデジタル化が、皮肉にも現場の作業負荷を増やしてしまい、定着を阻んでいる。

 2025年3月からの過去1年間の紙書類の使用量についても、「大幅に減少した」と感じている企業は14.4%にとどまる。一方で「やや増加した」や「一時的に減少したものの元に戻っている」など、事実上紙の使用量が増加または回帰している企業も23.9%に達しており、ツール導入と既存プロセスの不整合が浮き彫りになっている。

「対外業務」と「現場業務」で分かれる明暗

 ペーパーレスの進み具合は、業務の性質によっても大きく異なる。調査によると、業務で利用している紙書類は平均6.0種類に上る。業種別に見ると、素材・化学が平均7.4種類、自動車・輸送機器が6.8種類、食品・飲料が6.4種類と続く一方で、医薬品・医療は4.2種類と、業種間で差が生じている。

 書類の種類に目を向けると、「請求書」「納品書、領収書」「見積書」といった対外的なやりとりに関わる取引関連書類において、紙での運用が根強く残っている。自社内だけでプロセスを完結できない取引先とのやりとりでは、相手のシステムや慣習に合わせる必要があり、一足飛びのデジタル化が難しい。

 一方で、「点検チェックリスト」や「品質検査記録」「図面」など、現場の保守や品質管理に関連する社内完結型の書類については、他の種類に比べてペーパーレス化が進んでいる。自社のコントロールが及ぶ範囲から、着実にデジタル化の恩恵を享受しようとする姿勢が見て取れる。

インタフェースとしての「紙」の優秀性

 ペーパーレス化が足踏みする最大の理由は、システムの問題だけではない。紙という媒体自体が持つ「インタフェースとしての優秀性」を手放すことが難しいという側面もある。

 デジタルデータと比較して紙書類に感じるメリットを尋ねたところ、「書き込みやメモがしやすい」が53.8%で最多となった。次いで「一目で全体を確認できる/一覧性の良さ」が49.3%、「共有、回覧しやすい」が28.4%と続く。現場の作業員にとって、直感的に扱えて視認性に優れる紙は、依然として使い勝手の良いツールだ。

 「システム障害時でも業務を継続できる」(23.1%)や「電源やネットワークに左右されない」(21.8%)といった、インフラに依存しない堅牢(けんろう)性も評価されている。「取り扱いに気を使わなくてよい」という現場視点ならではの利点も挙がっており、物理的な強靭(きょうじん)さも紙が選ばれる理由の一つだ。

 一方で、「確認ミスが少ない」「安価に使える」といった項目に対する支持は約1割にとどまっており、正確性や費用面ではデジタルデータに優位性があるという認識が浸透している。

完全なデジタル化から「無理しないペーパーレス」へ

 こうした現場の実態は、今後のペーパーレス推進に向けた企業の意向にも表れている。

 今後の推進意向については、「完全なペーパーレス化を目指す」と回答した企業は16.0%にとどまる。「現状維持」(16.0%)や「今後も紙中心で進める」(9.3%)といった慎重な姿勢も見られるが、過半数を占めたのは「必要な紙業務は残しつつも、帳票読み取りツール等を利用してデジタル化を推進する」(50.7%)という現実的なアプローチである。多くの企業は紙をゼロにする「完全なペーパーレス化」という理想を追い求めるのではなく、紙の利便性を残しながら業務効率化を実現する「無理しないペーパーレス」を志向しているということだ。

 これらの結果を踏まえると、中堅製造業が目指す今後のペーパーレス像は、現実的な路線へとシフトしつつあると言える。既存の業務フローや現場の使い勝手を無視してシステムを導入しても、新たな工数を生むだけで定着しない。紙の強みを認めつつ、データ化すべき部分には画像認識などの最新技術を適用する。自社の業務特性に合わせた適材適所のデジタル化こそが、これからの製造業における生産性向上の推進力になる。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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