次に狙うのはAI駆動型開発
レガシーコードを捨てJavaで勘定系を再定義 ソニー銀行、フルクラウド化の全容
ソニー銀行は勘定系を含む全てのシステムをクラウドに移行した。今後は生成AIを活用して開発期間の大幅な短縮を目指す。同行執行役員の福嶋達也氏が、クラウドシフトの全容と、AIが加速させる次世代開発の姿を語った。
ソニー銀行は2025年5月、勘定系システムのクラウドネイティブ化を完了させた。2013年のAWS(Amazon Web Services)導入から12年。同行が掲げた「ビジネスアジリティの向上」という目的は、ITインフラの全面刷新によってどう具現化されたのか。同行執行役員の福嶋達也氏が、戦略的クラウドシフトの全容と、AIが加速させる次世代開発の姿を語った。
本稿は、2026年5月20日に開催された「Enterprise IT Summit 2026 spring」のセッション「ソニー銀行におけるビジネスアジリティ向上のためのクラウドシフト戦略」の内容を記事化したものです。
「守り」から「攻め」へ、12年で完遂したフルクラウド化の裏側
ソニー銀行は、銀行システムの本丸である勘定系を含め、全てのシステムをクラウド上で稼働させる「クラウドオンリー」の体制を確立した。福嶋氏はこの転換の背景を「予測不能で不確実性が高い時代において、新サービスのスピーディーな導入や既存商品のクイックな改良を可能にする『ビジネスアジリティ』の向上は不可欠だった」と説明する。
同行の歩みは、AWSの本格利用開始にさかのぼる。当初は周辺系システムから着手し、2019年には財務会計システム、2025年5月に勘定系システムの移行を完遂した。この過程で福嶋氏は、金融機関としての堅牢(けんろう)性を担保するため、AWSに「国内第2リージョン」の必要性を数年にわたり訴え続けてきたという。その後、AWSは2021年に大阪リージョンを開設。東京、大阪のマルチリージョン構成を通じて高い可用性を確保した。
「かつてはオンプレミスで密結合な状態にあり、勘定系に機能が偏重していた」。福嶋氏はこう振り返る。この「守りのIT」にリソースを奪われる構造を打破するため、ソニー銀行は機能を周辺系へ切り出した。さらに、段階的にクラウド化を進めることで、戦略的なIT投資へシフトした。
資産流用ゼロ、Javaで再定義した「銀行の心臓部」
勘定系システムのクラウドネイティブ化最大の特徴は、既存の資産を一切流用せず、全ての業務ロジックをJavaで1から書き直した点にある。多くの金融機関が既存資産をクラウドへ持ち込む「リホスト」を選択するなか、ソニー銀行はマイクロサービス化とコンテナ化を前提とした「クラウドネイティブ」な構築を断行した。
刷新に当たってソニー銀行が採用したのは、富士通が提供するクラウドネイティブ勘定系システム「Fujitsu Core Banking xBank」だ。同行独自の最適化を施し、旧来の勘定系を取引単位のマイクロサービス/APIにまで分解してAPIプラットフォーム化することで、チャネル系や外部サービスを勘定系にベタ付きさせず、疎結合なアーキテクチャを実現した。「既存のコードを1行も再利用せず、一括変換も行わなかった。手間はかかったが、システムアーキテクチャの美しさと生産性を追求した結果だ」と福嶋氏はその意義を語る。
本番移行に際しては、4回の移行リハーサルを実施した。10カ所のチェックポイントを設けて経営層が判断を下す慎重なプロセスを経て、大きなトラブルなく移行を完了させたという。これにより、最新のテクノロジーを即座に取り込めるITプラットフォームが完成した。
開発期間大幅短縮を目指す「AI駆動型開発」の衝撃
クラウド化を完遂したソニー銀行が次に見据えるのは、生成AIを活用した「AI駆動型開発」への進化だ。同行はすでに、Anthropicの「Claude Code on Amazon Bedrock」などの生成AIツールを活用し、実際の勘定系開発案件で検証を実施している。
福嶋氏は「基本設計から結合テストまでの期間を大幅に短縮していく」と明かした。今後はこの取り組みを全ての勘定系開発案件に適用し、さらには要件定義などの「超上流工程」や、保守運用、セキュリティ領域にもAI活用の幅を広げる方針だ。
「クラウド化は目的ではなく、あくまで新たな価値をアジャイルに提供するための手段だ」と福嶋氏は強調する。AIをフル活用した開発体制の構築により、次世代インターネット「Web3」やデジタル証券といった新領域への展開、さらには異業種との柔軟な外部連携を加速させ、ITを通じて銀行としての競争力を担保していく構えだ。
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