MFAやOAuthの落とし穴

アスクルはなぜ侵害されたのか クラウドの安全神話を崩す「例外」の正体

組織がクラウドサービスを導入するにつれて、セキュリティ管理はますます複雑になる。アスクルなどの著名企業も、現場のやむを得ない事情で生じた「例外」から侵害を受けた。なぜ対策のセオリーは崩れるのか。

 企業におけるクラウドサービスの利用は、もはや不可欠なものとなっている。ビジネスを加速させる一方で、そのセキュリティ管理は複雑化の一途をたどっている。

 セキュリティ人材の育成を手掛ける川口設計で代表取締役を務める川口洋氏は、大手セキュリティ企業でのSOC(セキュリティ監視センター)業務や、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)での行政機関向けインシデント処理など、サイバーセキュリティの最前線で活動してきた専門家だ。

 川口氏は、クラウドサービス利用時のセキュリティ対策の「セオリーと現場の実態」について言及し、組織が「守っているつもり」になっていても、実際には防御が崩れてしまうポイントとして以下の5つを挙げた。

  • クラウドベンダーと自社の責任分界点の曖昧さ
  • 誰がどのシステムにアクセスできるかというIDや権限の管理不足
  • 公開範囲や管理者権限などの設定ミス
  • データ保管場所の把握とバックアップの復旧体制の不備
  • 異常なログインや設定変更を検知する監視体制の欠如

 ほとんどの組織はこれらのセオリーを理解し、対策を講じているはずだ。しかし、現実には大規模なインシデントが後を絶たない。

 実際のインシデント事例から見えてくるのは、現場のやむを得ない事情で生まれた「例外」が、いかにして致命的な事故を招くかという実態だ。以下では、具体的な3つの事例と現場の裏側、組織が直ちに取り組むべき対策を紹介する。

アスクルの事例:委託先と「MFA未適用」の例外

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