企業が“マルチベンダーAI”を使う理由
Microsoft 365一強に挑むAnthropic 2万社データで判明した企業AIの使い分け
特定のAIツールだけに頼るリスクや限界が指摘されている。2万社以上のアクセスデータを分析したOktaの調査によると、過半数の企業が単一ベンダーに固執しない選択をしているという。「適材適所」のAI活用法とは。
生成AIの登場以降、企業は「自社にどのAIツールを、幾つ導入すべきか」という複雑な判断を迫られている。
この課題に対する実際の企業の回答を探るために、ID管理ツールベンダーのOktaは、自社サービスを利用する2万社以上の企業における匿名化されたアクセスデータを分析し、その結果を「Okta Enterprise AI Index」として発表した。本調査は2022年6月から2026年6月までの4年間を対象とし、ナレッジワーカーや開発者向けのAIツールの利用動向を追跡している。
調査から浮かび上がったのは、適材適所のアプローチだ。2026年6月時点で、過半数となる57.1%の企業が2つ以上のベンダーのAIツールを同時に運用している。特定の単一ベンダーに依存するのではなく、業務に合わせて最適なツールを組み合わせる構成が標準となっている。具体的には、Microsoftの圧倒的な導入規模や、Anthropicの急成長というエンタープライズAI導入の実態が判明した。
王者と新興勢力が入り交じるこのマルチベンダー構成において、企業はどのようにAIツールを使い分け、新たなセキュリティ課題にどう立ち向かおうとしているのか。
Anthropicの急成長とMicrosoftの底力
本調査は、調査期間内の企業アカウント純増数に基づいてAIツールの成長率をインデックス化している。主要なAIツールや提供ベンダー別の成長率を見ると、最も急成長したAnthropicの成長率を100.0とした場合、2位のOpenAIが66.9、3位のGoogle Workspaceが59.8、4位のGitHubが56.6、5位のCursorが42.4という結果になった。
Oktaは、成長率が4.0倍を超えたAnthropicやCursorなどを生成AIを中核とする「AIネイティブ」、4.0倍以下のMicrosoft 365などを「AI強化型」と分類した。この4.0という閾値は、機械学習を用いたデータ解析で特定した客観的な境界線だ。
AIネイティブ勢のトップ3(Anthropic、OpenAI、Cursor)がどの既存ブランドよりも多くの新規アカウントを獲得して急成長を見せる一方、総アカウント数ではAI強化型の既存システムが市場を圧倒している。2026年3月にAnthropicは企業アカウント数でOpenAIを追い抜き、翌4月には月間アクティブユーザー数(MAU)でもOpenAIを上回った。それでも、トップの成績を収めるAnthropicのMAUは、Microsoft 365の10.0%未満にとどまっている。企業は、新しい特定の用途にはAIネイティブのツールを採用しつつ、全社的な定型業務には既存のAI強化型ツールを拡張させるという使い分けを進めている。
分析対象の集約と自律型AIへのパラダイムシフト
企業が複数ベンダーのAIツールを導入する背景には、機能的な進化がある。2025年5月のClaude CodeやCursorの登場以降は、「自律型AIエージェント」の時代へと移行した。自律型AIエージェントは他システムと連携し、人が指示を与えなくても自律的にソースコード群を読み解き、複数ステップのタスクを実行できる。
本調査の併用状況は提供元ベンダー単位で集計されており、例えばMicrosoft 365とGitHubの両方を導入していても「1つ」と見なされる。それでも、単一のベンダーのみを利用する企業は42.8%にとどまり、2ベンダーが27.5%、3ベンダーが18.3%、4ベンダーが11.3%に上るなど、マルチベンダー化の波は着実に加速している。
デジタルワーカーのアイデンティティー管理が急務に
複数ベンダーのAIサービスを併用することは、生産性を高める一方で新たなセキュリティ上の課題を生み出している。AIツールが単に命令を待つだけのソフトウェアから、自律的に行動するAIエージェントへと進化するにつれて、「自社のAIエージェントがネットワーク上のどこに存在し、どのシステムに接続し、どのような権限を持っているのか」を正確に把握することが困難になっている。
企業は今後、AIエージェントを新たな「デジタルワーカー」として扱い、従業員や既存システムと同等に、独立したIDを持つ存在として明確に管理・制御する必要がある。単なるツールの一機能として捉えるのではなく、アクセス権限を個別に付与・監査できる体制を整えなければならない。
複数ベンダーのAIツールを安全かつ長期的に運用するためには、特定のベンダーやサービスに依存しない、中立的なID管理・認証システムの整備が不可欠だ。人、システム、AIエージェントを一元化できるシステムの構築が、これからのIT担当者が担う最重要課題となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
インシデント発生後に最も重要な「最初の48時間」 どう乗り切る? -
製品資料
急激なデジタル化の裏で増大するデバイスのリスク 東急建設はどう対処した? -
製品資料
「フロンティアAI」実践解説:セキュリティ対応に向けた5つのステップ -
製品資料
WSUS非推奨化でさらに混迷 複雑化するサーバ環境の運用負荷をどう解消する? -
市場調査・トレンド
数百万台規模のデータで判明、企業のIT環境に潜む「見えない課題」とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
4
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
5
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
6
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
7
メインフレームは死なず AI活用で20年来の高収益をたたき出す基幹システムの底力
-
8
GitHub Copilotを使いこなす第一歩 初めてのプロンプト6つのコツ
-
9
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
10
脱VMwareでライセンス費用を削減 VMもKubernetesで動かす「KubeVirt」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー