法務レビューを「1日以上」から30分にも
別画面へコピペはもう不要 AnthropicはClaude Tagを業務でこう使う
Anthropicは、同社における「Claude Tag」の従業員活用例3つとその成果を公開した。
生成AIを使うために、業務システムから別のチャット画面へ移動し、必要な情報をコピー&ペーストする――。こうした使い方ではなく、普段仕事をしているチャットそのものにAIを参加させたら、業務はどこまで変わるのか。
Anthropicは2026年8月28日(米国時間)、チャットツール「Slack」のスレッド上でAIアシスタント「Claude」を呼び出せる「Claude Tag」の社内活用例3つを公開した。
SlackにAIを呼び出す「Claude Tag」の実力
1つ目は、Slack上の議論から顧客向け資料を作る用途だ。
Anthropicで製品マーケティングを担当するヘマ・サンキ氏は、新機能のローンチに際して、営業担当者から「顧客や見込み客向けに、技術的ではない説明資料が欲しい」と依頼を受けた。
関連するSlackのスレッドには15件を超えるメッセージが投稿され、複数の担当者から要望が寄せられていた。そこでサンキ氏は、Claudeにスレッドを読み込ませ、依頼者が求めている1枚ものの資料を作成するよう指示した。
その結果、Claudeは約2分で2ページのドラフトを生成した。ドラフトには、機能の概要、ビジネス上のメリット、導入時に必要な作業、詳細情報をまとめた付録などが含まれていた。
ただしサンキ氏は、AIが生成した文章をそのまま利用したわけではない。Claudeに対し、記載内容が事実として正しいかどうかも確認させた。
Claudeはその指示に従って、公開情報によって確認できる記述と、Claudeが整理、解釈して記述した内容を分類。後者については製品責任者の確認が必要だと示した。サンキ氏は公式資料をClaudeに追加で与え、それを基に記述を修正させた。
4回の修正を経て、Claudeが生成した文書は、最初の依頼から約45分後には製品責任者へレビューを依頼できる状態になったという。
サンキ氏のClaude活用のポイントは、人間の仕事がなくなったわけではないことだ。調査やドラフト作成をClaudeに任せる一方、サンキ氏は情報の正確性を疑い、根拠となる資料を与え、何を資料に盛り込むかを判断する作業に時間を使った。
数カ月分のSlackから顧客要望を約26分で集約
2つ目は、複数のSlackチャンネルに散らばった情報の収集だ。
新機能を公開する際、過去にその機能を求めていた顧客を担当する営業担当者へ知らせたい場合がある。しかし、顧客からの要望はSlackや製品フィードバック用のシステムなどに分散し、数カ月分の履歴を調べなければならないことがある。
Anthropicの製品戦略・オペレーション担当ステフ・ソダーバーク氏は、このような場面で検索対象、該当する投稿の条件、希望する出力形式の例をClaudeに提示する。
その結果Claudeは、複数のチャンネルやSlack全体で約20回の検索を実行。約26分後、対象となる約24の顧客アカウントをまとめた。検索結果には、依頼した担当者のSlackアカウント、所属チーム、顧客アカウント、元の投稿へのリンクなどが含まれていた。
さらにソダーバーク氏は、前週にユーザー企業の顧客から報告された製品上の問題を横断的に調査する作業をClaudeに任せた。
インシデント、エスカレーション、サポート、製品フィードバックに関するSlackチャンネルを検索したClaudeは、約120件の情報を整理し、未解決23件、解決済み14件の問題を約50分でまとめた。
ソダーバーク氏がClaudeに再確認を指示すると、さらに15件の問題を見つけた。同氏によると、人力で同量の情報調査、分析、整理する場合、少なくとも1週間のフルタイム作業が必要だったという。
この事例が示すのは、AIに単純な検索キーワードだけを渡すのではなく、「どこを探すか」「何を該当情報と判断するか」「どの形式で出力するか」を明示することの重要性だ。
法務レビューを「1日以上」から「1件30分」に短縮
3つ目は法務レビューだ。Anthropicの法務部門では、ブログ、ランディングページ、メールなどのコンテンツを公開前にレビューしている。製品公開前には、通常業務に加えて数十件のマーケティング資料がレビュー待ちになる場合がある。
同社のプロダクトカウンセルモリー・ビジャグラ氏は、マーケティング資料をレビューするための専用Slackチャンネルを作成し、Claude Tagが事前確認を実行する仕組みを構築した。
マーケティング担当者がドキュメントへのリンクをチャンネルに投稿すると、まずClaudeがその内容をレビューする。裏付けのないマーケティング上の主張など、法務上確認が必要な箇所を検出するだけでなく、社内Slackや社内ナレッジ、公開Webの情報を使って事実関係も確認する。
修正が必要な場合は、Claudeが問題点と対応方法を示し、依頼者とのやりとりを進める。それでも法務担当者による判断が必要な項目のみ、担当者に確認を依頼する仕組みだ。
Anthropicによると、この運用によって、従来は1日以上かかる場合があったマーケティング資料の法務レビューを、1件当たり約30分まで短縮したという。
さらに特徴的なのが、運用中のフィードバックをClaudeへの指示に反映している点だ。あるニュースレターのレビューでClaudeが3つの確認事項を挙げた際、そのうち1件については、その後Claude自身が社内文書から必要な情報を見つけて解決した。
ビジャグラ氏は、今後は問題を指摘した時点でClaude自身が確認できる項目については、その場で検証するよう指示した。Claude Tagはこの指示を以後のレビューで利用するルールとして追加した。
さらにビジャグラ氏は、毎週金曜日に、その週の法務担当者からのフィードバックをClaudeに確認させ、共通の指示をどう更新すべきか提案させる運用も始めた。
AI導入のポイントは「別のAI画面を使わせる」ことではない
3つの事例に共通するのは、ユーザーが普段の業務と別の画面でAIを使っているわけではないことだ。
Slack上の議論から資料を作る。過去のSlackを検索して情報を整理する。Slackに投稿された文書を法務レビューする。AIを既存の業務フローに参加させることで、「AIに渡すために情報を集め直す」「別画面へコピー&ペーストする」といった作業を減らしている。
一方、AIに業務を任せれば自動的に成果が出るわけではない。Anthropicの事例でも、人間がAIの回答を検証したり、検索条件や出力形式を指定したり、最終的な法務判断を担当したりしている。
なおAnthropicは、これらの処理時間は個々の従業員が特定の作業で経験した結果であり、作業内容や接続するツール、Claude Tagの設定によって結果は異なるとしている。Claude Tagは記事公開時点でパブリックベータ版として提供されている。
本稿は、Anthropicが2026年8月28日に公開したHow Anthropic employees use Claude Tagを基に作成しました。
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