IBM調査で判明
データ侵害コストが過去最高に AI防御は“悪用の脅威”を超えられるか?
IBMが発表した最新レポートで、データ侵害による世界平均の被害額が過去最高を更新したことが判明した。AI技術を悪用した攻撃がますます盛んになる中、組織はどのように対処すべきなのか。
AI技術の発展はサイバー攻撃の専門知識の壁を下げ、攻撃の速度と規模を拡大させている。AIを利用した攻撃は2025年比で56%増加し、組織はかつてない水準の脅威に直面している。
日本IBMは「2026年データ侵害のコストに関する調査レポート」日本語版を公開した。本調査は調査会社Ponemon Instituteが実施し、IBMが分析を担当した。2025年3月から2026年2月にかけてデータ侵害を受けた16の国と地域の602組織を対象とし、3558人の情報セキュリティ担当者や経営幹部にインタビューしたものだ。
調査結果によると、データ侵害で生じる修復費用や損失額などを合わせた費用について、世界全体の平均費用は2025年比で12%増の499万ドルとなり、2005年の調査開始以来、過去最高額を記録した。被害額増加の要因は、攻撃の迅速化に対して検出や封じ込めに時間を要していることにある。
AI技術を巡るサイバー空間の攻防が激化する中、被害を最小限に食い止めるための具体的なアプローチとはどのようなものか。
「シャドーAI」が引き起こす問題
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サイバー攻撃の動向
攻撃者は、AIツールをフィッシングメールの自動生成、ソースコード内に潜む脆弱(ぜいじゃく)性の高速スキャン、大規模な攻撃スクリプトの自動実行のための主要なツールとして利用している。これによって、従来のサイバー攻撃に不可欠であった専門的な知識や準備時間が大幅に削減された。ディープフェイクによるなりすましやAI技術を悪用したマルウェアによって、攻撃の経済性が大きく変化している。
組織内における未承認のAIツール利用、いわゆる「シャドーAI」の存在も構造的な弱点となっている。調査によれば、従業員が未承認のAIツールを使用することに起因するインシデントの発生率は、2025年調査の20%から43%へと倍増した。シャドーAIに起因する侵害に関連する平均費用は539万ドルに上り、データの喪失や業務の中断といった深刻な被害を引き起こしている。
攻撃対象となるAIモデルの提供元によっても被害額に差異が見られた。サードパーティーのベンダーが提供するオープンソースのAIモデルが関連する侵害の平均コストは563万ドルだった。対して、社内でトレーニングされたモデルが関連する侵害は498万ドルだ。組織はAI技術を導入する際、AIモデルの出どころに応じたリスク評価と厳格なアクセス制御を実装する必要がある。
導入の判断軸と選定理由
データ侵害の影響を抑制するための合理的な判断軸は、事案をいかに早期に特定し封じ込めるかにかかっている。侵害の事実を攻撃者からの通知によって初めて認識した場合、対処が後手に回り、平均費用は512万ドルに達する。攻撃者への開示までに機密情報が掌握され、重要システムへの足掛かりを構築されてしまうためだ。
社内のIT部門やセキュリティチームが自ら侵害を特定した場合、平均費用は501万ドルだった。特定と封じ込めに要する期間も平均209日であり、世界平均の247日を大きく下回る水準で対処を完了させることができていた。高度な監視ツールを活用するマネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)が特定した場合、平均費用は486万ドルまで減少する。内部の人員を強化するか外部の専門機関を利用するかの判断は、有事における財務的損失を直接的に左右する。
データの保存場所に関する技術的な課題も対応速度に影響を与える。オンプレミスやパブリッククラウドなど複数の環境にデータが分散して保存されている場合、解決までに要する期間は平均256日と長期化する。企業はデータの分散化による可用性向上の利点を得る一方で、インシデント発生時の複雑な追跡作業という運用上の負荷を抱えることとなる。保存時および移動時におけるデータ暗号化の徹底が、被害を局所化するための重要な対策となる。
従来アプローチとの差異
攻撃の高度化に対抗するため、防御側における技術的アプローチも転換点を迎えている。人間の処理能力や手動設定に基づく従来の運用から、AIエージェントを組み込んだ自律的な運用への移行が始まっている。調査対象組織の74%が、セキュリティオペレーションセンター(SOC)へのAIエージェント導入や適用範囲の拡大を再検討している。
具体的な適用領域として、大量のログから真の脅威を見つけ出すアラートの優先順位付けにAIエージェントを導入する組織が60%に達した。加えて、自動対処と封じ込めが56%、システムへのペネトレーションテストが52%を占めている。これらは、従来の静的なルールベースの防御では対処が困難な未知の攻撃手法に対し、アルゴリズムがリアルタイムで最適解を導き出す。自動化された高速な攻撃に対して、同等の処理速度で即座に反撃を加えることが可能となる。
AIエージェントは単なるパターンの照合にとどまらず、ネットワーク内の異常な振る舞いを学習し、自律的に防御策を展開する機能を持つ。セキュリティ運用全体でAI技術や自動化技術を活用している企業は、侵害に伴う出費を平均で約200万ドル削減している。人間の対処速度を超える攻撃に対して、同等の速度で反撃を加える仕組みの構築が、最新のアプローチの核心だ。
今後の展望
サイバー攻撃の初期侵入経路として、フィッシング攻撃や有効なアカウントの悪用が猛威を振るっている。フィッシング攻撃による世界平均の対処費用は529万ドルと、全攻撃手法の中で最高額を記録した。組織が保有する非人間アイデンティティー(NHI)の保護も急務であり、APIキーやサービスアカウントのライフサイクル管理システムを導入する動きが加速している。
本調査は、量子コンピュータを悪用した攻撃から組織を守るために設計された耐量子計算機暗号プロジェクトの普及状況も分析した。RSA(Rivest-Shamir-Adleman)や楕円曲線暗号といった従来型の暗号化方式は、将来的に解読される脅威にさらされる可能性が指摘されている。先進的な企業は使用中の暗号化技術を棚卸しし、次世代の暗号アルゴリズムへの移行計画の策定に着手している。
組織は単一の防御ツールに依存するのではなく、データ主権の確保から最新の暗号化技術の導入までを見据え、多層的な防御体系を構築する必要がある。最先端の人工知能による脅威には高度なAIモデルをもって対抗するという技術水準の底上げが、次世代のセキュリティ対策の必須要件となる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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