「入社後定着率」はなぜ隠されるのか
“実績多数”は信用できる? エンジニアが転職エージェントに抱く不信感の正体
ITエンジニアの転職市場が活発化する一方で、転職エージェントから客観的に検証可能なデータを確認できた利用者はごく一部だった。転職エージェントの実績数値に対する不信感の正体とは。
IT人材の不足を背景に転職市場は活発な状態が続いている。転職エージェントを利用するITエンジニアにとっても、外部から支援の質を測る共通の指標が確立されていないのが実態だ。
エンジニア向け転職支援サービス「キッカケエージェント」を運営するキッカケクリエイションは2026年8月24~25日、転職エージェントの入社後定着率の開示に対する意識調査を実施した。調査対象は、直近3年以内に転職エージェントから面談以上の支援を受けた20~39歳のITエンジニア329人だ。
同調査によると、回答者の86.4%が「最も高い数値でなくても、算出方法と対象期間を示し定期更新するエージェント」を信頼できると回答した。一方で、ITエンジニアが直近の利用で算出方法や対象期間とともに実績を確認できた割合は、わずか10.3%にとどまった。転職支援の質を確かめる客観的な手掛かりが不足している現状が浮き彫りになった。
転職エージェントの選定基準は、単純な求人数からどのように変化しているのか。調査結果から、ITエンジニアが求める情報開示の在り方を探る。
裏付けのない実績への不信感
転職エージェントを選定する際、利用者はどのような情報を重視しているのか。選定時に確認した情報に関する設問では、「自分の希望に合う求人の有無」が53.5%で首位となった。「ITエンジニアの転職支援の専門性」(46.5%)、「一般に公開されていない求人の有無」(37.4%)が続く。一方、「転職支援の実績を示す数値」を確認した割合は17.9%にとどまり、主要な確認項目の中で最も低かった。
この背景には、実績数値の透明性の欠如がある。直近で利用した転職エージェントで、入社後定着率やキャリア相談の満足度などの実績数値を確認できたかどうかを尋ねたところ、「数値ではなく、実績の説明だけを受けた」が41.3%を占めた。「数値は確認できたが、算出方法は不明だった」という回答も25.8%に上る。算出方法や対象期間と共に数値を確認できた割合は10.3%に限られ、大半の利用者が裏付けのある検証可能なデータを参照できていないのが実態だ。
利用者が求めている情報は多岐にわたる。転職エージェントに公開してほしい実績を上位3つまで尋ねたところ、「提案した求人に対する満足度」が44.1%で最多だった。次いで「入社後の短期離職率」(38.0%)、「キャリア相談の満足度」(35.9%)、「入社後の定着率」(32.8%)が上位に挙がる。
自由回答では、「実際の登録使用者数と、それに対する転職成功者数」や「離職者の理由」といった、より踏み込んだデータを求める声も寄せられた。これらは、単なる成功事例のアピールではなく、失敗や離職を含めた客観的な実態を知りたい利用者の切実な要望を示している。
「定着率」の開示が信頼に直結する理由
実績データの不透明さが課題になる中、特定の指標を開示する姿勢そのものが、企業への信頼感を左右している。入社後定着率を開示している転職エージェントは、開示していないエージェントよりも信頼できるかを尋ねた設問では、「非常にそう思う」(29.8%)と「ややそう思う」(55.6%)を合わせた割合は85.4%に達した。
定着率の開示が信頼につながる理由のトップは、「求人と本人の相性を見極める力が読めるから」(54.8%)だ。次いで「転職の決定件数だけを追っていないから」(46.3%)、「入社後まで見据えて支援していると感じるから」(37.4%)が挙げられた。数値そのものの良しあしだけでなく、開示できる事業者であれば、入社後のミスマッチを防ぐために丁寧にマッチングをしているはずだという期待感が反映されている。
ただし、提示された数値を無条件に信用するわけではない。入社後定着率を信頼できる情報として受け取るために、数値と併せて公開してほしい内容を尋ねた結果、「集計の対象となった人数」(47.7%)と「集計の対象となった期間」(42.6%)が上位を占めた。「『定着』と見なす時点や定義」(32.8%)や「集計した時期や更新日」(31.6%)を求める声も多い。
これらの結果から、業界内で最も高い数値ではなくても、算出方法と対象期間を示し、定期的に更新している転職エージェントを信頼できると答えた割合は86.4%(「非常にそう思う」28.3%、「ややそう思う」58.1%)に上る。見栄えの良い数値を単発で掲げるのではなく、どのような前提条件で算出したかを継続的かつ正直に開示する姿勢が評価されている。
数値の高さよりも「前提条件の明示」と「誠実な専門性」
今後、転職エージェントを選ぶ際に重視する項目として、最も多く支持を集めたのは「業界や職種への専門性が高い」(49.5%)だ。「転職しない方が良い場合はその助言をくれる」(40.7%)、「求人票に載らない情報を教えてくれる」(38.3%)といった項目も上位に入った。
ここで注目すべきは、「入社後の定着率などの実績を開示している」の項目が28.0%の支持を集めた点だ。過去の選定時に「転職支援の実績を示す数値」を確認した割合(17.9%)と比較すると、10.1ポイントも上回る。現状では実績データを確認する手段が乏しいものの、今後の選定では情報開示を重視する傾向が強まっている。
自由回答を見ても、「企業の情報を、良いところだけでなく、良くないところも誠実に教えてくれること」や「自身の理想とするキャリアプランが描けるか」といった意見が目立つ。いずれも、表面的なデータには表れない企業の内部事情や、個人のキャリアに寄り添う姿勢を求めている。
IT人材の流動性が高まる中、転職エージェントが選ばれる基準は明確に変化している。規模や転職決定件数といった数値の大きさを競うフェーズは終わりつつある。算出の前提条件まで開示し続ける誠実な姿勢と、求人票には表れない現場の実像を語れる専門性。この両輪を併せ持つことが、ITエンジニアから信頼を獲得するための条件だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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