IT予算不足を打破する次世代インフラ戦略
HCIの更新費用が高過ぎる──九工大が直面した「ライセンス高騰」の抜け道
ライセンスやハードウェア費用の高騰が、更新予算を圧迫している。「HCIの更新費用が足りない」という悩みに直面した九州工業大学が選んだ、「予算内でインフラを強化する」秘策とは。
「数年前に導入したHCI(ハイパーコンバージドインフラ)の保守切れが迫っているが、リプレースの見積もりを見てがくぜんとした」――。昨今の著しいソフトウェアライセンスやハードウェア価格の高騰によって、こうした悲鳴が各所のIT部門から上がっている。かつて「運用が楽になる」「スモールスタートできる」ともてはやされたHCIだが、更新のタイミングで跳ね上がる膨大なコストが、いまやIT予算を圧迫する要因になりつつある。
九州工業大学も、まさにこの「HCI更新の壁」に直面した組織だ。同大学は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を機に、講義室に教育用PCを設置する方法を廃止し、学生個人のPCを利用するBYOD(Bring Your Own Device)方式に移行した。これに伴い、オープンソースソフトウェア(OSS)の学習管理システム(LMS)「Moodle」の利用が急増したが、旧インフラでは容量が不足していた。今後のAI(人工知能)技術活用に向けたデータ一元管理システムも求められていたが、旧来のHCI製品では、必要な性能を予算内で確保することが困難になっていたのだ。
予算不足の中で費用抑制と拡張性を重視した九州工業大学が、ハイパーバイザーとして白羽の矢を立てたのが、OSSの「Proxmox Virtual Environment」(以下、Proxmox)だった。
予算増額なしで「HCIの限界」をどう突破したのか
九州工業大学は、教育研究環境を支える仮想化インフラを刷新した。構成要素としてはProxmoxと、NetAppのオールフラッシュストレージ「NetApp AFF C250」を採用した。2026年3月26日、導入を支援したネットワールドが発表した。新インフラは2025年3月末に本格稼働を開始しており、Moodleが稼働するサーバなど100台以上の仮想サーバを集約。従来課題だった性能、容量不足を解消し、将来のAI技術活用を見据えたデータ管理システムとしても運用する。
九州工業大学情報基盤センターは、情報システムやネットワーク、セキュリティの研究とともに、学内デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を担っている。同大学はハードウェアのサポート終了に伴い、仮想化インフラのリプレースを計画していた。
背景には、コロナ禍を経て加速した教育現場の変化がある。同大学では講義室のPCを廃止し、学生が個人のPCを持参するBYOD方式に移行した。これに伴い、OSSのMoodleの利用が急増したが、旧インフラでは容量が不足。一部のサーバやデータを別環境に切り離して運用せざるを得ない状況だった。また、教員が保有する研究データが学内に散在しており、今後のデータ分析やAI技術活用に向けて一元管理するインフラが求められていた。しかし、昨今のハードウェアやライセンス費用の高騰によって、従来のHCI製品では、必要な性能を予算内で確保することが困難になっていた。
新しいインフラの選定に当たっては、費用抑制と拡張性を重視し、ハイパーバイザーにOSSのProxmoxを採用した。国内での導入事例はまだ限定的だったが、検証を経て採用を決定。構築を担当した三井情報は、Proxmox環境での安定性を考慮し、接続方式にNFS(Network File System)を選択した。ストレージには、九州工業大学で運用実績があり、高い信頼性と性能を持つNetApp AFF C250を組み合わせた(図)。
新システムの導入によって、学内サービスのレスポンスは向上した。NetApp AFF C250が提供する高いI/O(入出力)性能によって、スループットは約200~300MBpsを記録。仮想マシン(VM)の迅速な起動が可能になった他、高負荷時でも安定したサービスを提供できるようになった。
データ管理面では、NetAppの独自OS「ONTAP」が備えるデータ保護機能を活用。教育研究データを取り扱うVMを、安全かつ一元的に管理できるデータストアを構築した。これによって、将来的なビジネスインテリジェンス(BI)やAI技術活用で想定される大規模な負荷にも耐え得る、性能と運用性を確保した。
今回の刷新は、前回調達時とほぼ同等の予算規模で実現しながら、性能と容量を大幅に拡張することに成功した。Proxmoxの採用でライセンス費用を抑えつつ、NetAppによる強固なデータ管理システムを構築したことで、費用最適化と高度な教育研究環境の両立を実現した。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「九州工業大学、ProxmoxとNetAppで仮想化基盤を刷新 性能向上とコスト抑制を両立」(2026年3月27日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[ポールトゥウィン株式会社] 開発スピードと品質を両立、DONUTSが実践する「ハイブリッドなQA体制」の構築術 -
製品レビュー
[ポールトゥウィン株式会社] 開発スピードと品質は両立できる? DONUTSの「ジョブカン」に学ぶQA戦略 -
市場調査・トレンド
[レッドハット株式会社] 「プラットフォームエンジニアリング」調査レポート:利点・課題・未来像を詳説 -
市場調査・トレンド
[レッドハット株式会社] 生成AI活用のためのテクノロジー基盤、構築に際しての7つの検討事項とは? -
製品資料
[レッドハット株式会社] ビジネスの現場へのAI導入と活用、何から始めてどのように進めるべきか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
4
「企業におけるAIの運用」に関するアンケート
-
5
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
6
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
7
本当にそのIBM iに問題はない? ブラックボックス化と属人化を防ぐ第一歩
-
8
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
9
「シェルコード」とは? 凶悪なマルウェア感染を可能にする手口
-
10
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
3
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
4
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
5
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
6
AI活用を停滞させる「2:6:2の壁」を乗り越えるためのポイントとは?
-
7
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
-
8
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
9
複雑な組織構造で一度は頓挫した電子化、東京女子医科大はどう全学展開したか
-
10
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー