1つの質問の裏で最大33回検索
「ChatGPT」は検索しまくり、「Gemini」は淡泊? AI検索の知られざる実態
生成AIが質問を受け取ると、その裏側でひそかに大量の検索を実行している。「ChatGPT」と「Gemini」の大規模なデータを分析すると、両者の間には明確な違いが存在した。生成AIは裏で何をしているのか。
エンドユーザーが対話型AIサービスに質問を投げ掛けると、その裏側でAIサービスが1つの質問を複数の検索クエリに分解して検索し、得られた情報を統合して回答を生成する。この仕組みは「クエリファンアウト」(QFO)と呼ばれる。従来のSEO(検索エンジン最適化)では、1つのキーワードに対して1つのWebページを最適化することが前提だったが、AIサービス自身が検索クエリを自動生成する現代において、その前提は崩れつつある。
生成AIがエンドユーザーに代わって情報を探す「AI検索」への最適化が課題として浮上している中、AI検索最適化事業を展開するQueueは2026年5月28日、QFOの実態に関する調査結果を発表した。同社が運営するツールの利用者を対象に、2026年2月5日から5月27日までの約3.5カ月間に投入された3万5482件のプロンプトを分析した。対象とした生成AIサービスは「ChatGPT」と「Gemini」だ。
調査の結果、生成AIは1つの質問に対して裏側で平均4.23回検索し、最大では33回に上ることが分かった。生成AIサービスによって、検索回数や挙動にはどのような違いがあるのか。
生成AIサービスごとに異なる検索の「量」と「質」
分析対象となった3万5482件のプロンプトのうち、73.5%に当たる2万6084件でQFOの発生が観測された。この発生率は、ChatGPTが74.0%、Geminiが73.1%と、両サービスでほぼ差がなかった。つまり生成AIが裏側で検索を複数回実行することは、特定の質問に対する特殊な挙動ではなく、生成AIサービスにおける標準的な情報収集のメカニズムであることが裏付けられた形だ。全3万5482件のプロンプトから生成されたサブクエリ(元の質問から細分化された個別の検索クエリ)の総数は11万487件に上り、1つの質問に対しておよそ3.1倍の検索が裏側で実行されている計算になる。
一方で、検索の回数やその分布には、サービス間で根本的な差異が見られた。1つの質問に対する平均QFO数を比較すると、Geminiの3.34回に対し、ChatGPTは5.29回と、ChatGPTの方が約1.58倍多く検索を実行していることが判明した。中央値で見てもChatGPTが4回、Geminiが3回と、ChatGPTの方がより多くの裏側検索を実行する傾向が明確に表れている。
この差は、QFOの回数が増えるほど顕著になる。QFOの回数を4つの階層に分けて分析した結果、7回以上の「高QFO」が発生したケースのうち、実に93.5%(2304件)をChatGPTが占め、Geminiはわずか6.5%(158件)にとどまった。11回以上の「超高QFO」に絞り込むと、ChatGPTが10.9%を占めるのに対し、Geminiは0.2%に過ぎず、その差は約55倍にまで拡大する。QFO回数の最頻値自体は3回であるが、全体としてGeminiのQFO回数は3回付近に集中する傾向がある。それに対して、ChatGPTは少数の高QFOプロンプトが平均を引き上げており、上位25%のプロンプトで7回以上、上位10%で11回以上のQFOが発生するなど、回数の多い右側に長いテールを持つ分布を示している(図)。特定の質問タイプに対して爆発的に多くのサブクエリを生成するChatGPTと、比較的安定した回数で検索を終えるGeminiというように、両者の情報収集アプローチは量だけでなく質的にも大きく異なっている。
条件指定が引き起こすクエリの「分解」
エンドユーザーが入力するプロンプトの詳細度とQFO数の関係についても、技術的な観点から異なる傾向が明らかになった。プロンプトの文字数が増え、内容が詳細になるほど、生成AIが裏側で発行するサブクエリの数は増加する。
具体的には、30文字未満の短文を入力した場合の平均QFO数は、ChatGPTで4.51回、Geminiで3.25回だった。これに対し、80文字以上の長文を入力すると、ChatGPTでは9.03回と約2.00倍に、Geminiでは6.11回と約1.88倍に跳ね上がっている。エンドユーザーが「予算」「地域」「用途」といった具体的な条件を書き込むと、生成AIはそれぞれの条件を別々のサブクエリに分解し、個別に検索してから情報を統合している。企業名や製品名を指定する単なる指名検索よりも、複雑な条件付き検索の方が、裏側で多くの検索行動を生み出しているということだ。
この挙動は、AIがユーザーの複雑な意図をいかにして満たそうとしているかを示すものであり、自社の情報がAIにどのように取得されるかを逆算する上で極めて重要な示唆を含んでいる。
サブクエリ単位での最適化が露出の鍵に
検索行動の起点が従来の検索エンジンから生成AIへと移行する中、今回の調査結果は、企業のデジタルマーケティング戦略に大きな転換を迫るものだ。これまで感覚的に語られてきた「生成AIが裏側で何回検索しているか」という議論について、定量的な違いが示された。特にChatGPTとGeminiでQFO挙動に1.58倍の違いがある点や、高QFO領域をChatGPTが独占している点について、「担当者が直視すべき現実だ」とQueueは強調する。
企業が今後、LLMO(大規模言語モデル最適化)、GEO(生成エンジン最適化)といった、生成AIの回答内での露出拡大を目指すためには、従来の「1つのキーワードに対して1つのページを最適化する」という考え方から脱却する必要がある。エンドユーザーが入力する1つの質問の裏で、生成AIがどのようなサブクエリを作るのかを予測し、その一つ一つのサブクエリに対して自社の情報が適切に取得、引用されるように、網羅的なコンテンツを設計することが求められる。マーケティング担当者やSEO担当者は、単一のキーワードを追う作業から、生成AIが裏側で発行する「見えないクエリ」を可視化し、それに対策を講じる業務へと、業務プロセスを変える必要がある。
生成AIサービスごとにQFOの傾向が異なるため、単一の施策で全てのサービスを網羅するのは難しい。それぞれの生成AIサービスが持つ情報収集の特性を理解し、サービス別の戦略を設計することが、これからのAI検索時代における露出の鍵になる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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