平均で7つのモデルを併用
“複数AI”の乱立で管理が崩壊する? F5が警告する「AIインフラ」の危険性
目的に合わせて複数のAIモデルを並行稼働させる「マルチモデル化」が標準になりつつある。こうした構成が運用管理の複雑さやリスクを生む中、安全にAIツールを活用するには何が必要なのか。
AIツールは試験的な導入段階を終え、日々の業務プロセスや意思決定に深く組み込まれる存在になった。ネットワーク製品ベンダーF5が発表した「2026年版 アプリケーション戦略の現状レポート」によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業の多くが、AIモデルを一から学習・開発するフェーズを終えている。既存のAIを実際の業務システムやサービスに組み込んでビジネスを動かす実運用段階に進んでいるという。
同調査は、世界中の1100人を超えるIT意思決定者を対象に実施された。回答者の67%は予算権限を持つIT意思決定者であり、39%はCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)といったCレベルの経営幹部だ。調査結果によると、回答企業の78%が独自の推論サービスを自社で運用している。一方で、日本企業における推論の運用割合は35%にとどまるものの、アプリへのAI組み込み率は4~6割に達しており、国内外を問わずAIツールを一時的な流行から不可欠なインフラへと位置付けていることが分かる。企業は本番環境において平均7つのAIモデルを同時に運用、または評価していることも明らかになった。
特定の目的に特化した複数のAIモデルを使い分けるマルチモデル化が事実上の標準になる一方で、運用管理やセキュリティの課題も浮き彫りになりつつある。分散システムと化したAI推論システムを安全に拡張し、イノベーションの恩恵を享受し続けるためには、どのようなアーキテクチャが求められているのか。
AI活用の壁は“性能”ではない
ハイブリッドインフラの普及も、この複雑さに拍車を掛けている。回答者の93%がハイブリッドクラウドまたはマルチクラウドでシステムを運用しており、86%がオンプレミスシステム、パブリッククラウド、コロケーションの全てのインフラ構成にまたがってアプリケーションを実行している。マルチモデルAIが広く採用されるようになった背景には、こうしたインフラの分散化と同じく、ビジネス要件と技術要件の双方が多様化しているという事実がある。
回答者の98%は、自律的にタスクをこなす「AIエージェント」のアクセスを処理できるよう、社外向けアプリケーションの改修を進めている。64%が、AIエージェントに対してシステムポリシーや設定の自動調整を許可している。AIエージェントは単なる助言システムから、設定された制約の範囲内で稼働する「実行エンジン」へと役割を大きく変えている。
しかし、複数のAIモデルを並行して運用することは、従来の分散システムと同様の複雑さをもたらす。回答者の52%が、AIモデルを業務に適応させるために「マルチモデルオーケストレーション」を利用している。これは、単一の高性能なAIモデルが存在しないためではなく、APIの互換性維持や費用最適化、コンプライアンス要件といったビジネス上の要請を満たすためだ。企業は、それぞれのタスクや処理内容に応じて、複数のモデルへリクエストを動的に振り分ける高度な仕組みを構築している。
多様なAIモデルへのリクエストが飛び交う環境では、モデル自体の性能よりも、トラフィックをいかに制御・監視するかが成功の鍵となる。実際、回答者の77%が、普及が進むAIエージェントの身元確認やアクセス制御に関して、新たな課題が生じると予測している。AIツール導入の障壁として、コンピューティングリソースの費用が筆頭に挙げられており、十分なスキルの確保がそれに続いている。
こうした背景から、企業はAI推論システムの提供と保護に向けて、既存のアプリケーション配信技術を応用し始めている。回答者の88%が、推論サービスのデリバリーとセキュリティ確保のために何らかのサービスをすでに導入している、または1年以内に導入すると答えている。企業は、パフォーマンスや可用性、セキュリティの確保に関して、AIシステムを従来の重要な業務システムと同等の高い水準で管理しようと試みている。運用データはシステム稼働に欠かせない要素になり、システムの可観測性はもはや付随的な機能ではなくシステムの一部となっている。
具体的には、認証管理の強化やAPIアクセスの集中制御機能が導入の最前線に立っている。AIツールによる意思決定の迅速化や業務効率の向上を実現するには、入力されるデータを精査し、不正な指示を実行させる「プロンプトインジェクション」の防止など、システムへの入り口部分を最適化することが最も効果的だと考えられているからだ。
組織横断的なAIツール活用が進む現在、部門ごとに個別のツールを乱立させることは、システムの複雑性とセキュリティリスクの拡大を招きかねない。複数のモデルやシステムをまたいで管理窓口を一本化し、システム全体を俯瞰(ふかん)できる可観測性を備えたコントロールプレーンの整備が、次世代のインフラを支える。AIツールがもたらす運用の負荷や複雑さを早期に認識し、強固な管理体制を先んじて構築することが、データ主導のビジネスにおいて競争優位性を実現するためには重要だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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