Column
融通の利かない態度がイノベーションを妨げる
規則を守るのは大事なことだ。だが、われわれが規則を使うのは、サービスレベルを向上させるためであって、仕事を妨げるためではない。
以下は本当にあった話だ。
前の会社に勤めていた時、社員のユーザー名はファーストネームの最初の1文字、ミドルネームの最初の1文字、苗字の最初の4文字を取って付ける規則になっていた。例えばわたし(Niel R. Nickolaisen)のユーザーネームは「nrnick@xxxxxx」だった。
その会社がブラッド・K・バターズ(Brad K. Buttars)という名の新しいマーケティングディレクターを採用した。ブラッドは、自分のユーザーネームを例外扱いにしてもらえないかと頼んできた。名刺を発注する際、「bkbutt」というユーザーネームは理想的とは言い難い(訳注:スラングでやや品のない言葉になる)と気づいたのだ。ブラッドはわたしに言った。「名刺の注文用紙に書いてみるまでは、自分のユーザーネームがどんな風に見えるか気づかなかった。でも『bkbutt』にはなりたくない」。わたしは、分かった、この件は任せてくれと請け負った。
わたしはディレクトリ管理者のライアンに電話し、事情を説明した。
わたし ライアン、ブラッド・バターズのユーザーネームを『bradb』に変えてもらえないか。
ライアン それはできません。
わたし どうして。
「社の規定違反になります」とライアンは言う。
わたし それは分かっているが、この件は例外扱いにする必要がある。
わたしは食い下がった。
ライアン しかしこの件を例外扱いにすれば、例外要求が殺到するでしょう。
わたし ライアン、例外を求める人はそれほど多いのか。
ライアン いえ、そんなことはありません。しかし例外扱いができると分かれば要求してくるのは確実です。
わたし ライアン、ほかの要求は退ければいいだろう。しかしブラッドが「bkbutt」のユーザーネームを使わなくて済むようにするのは例外に値するとわたしは思うが。
ライアン いや、それでもだめです。
わたし 何だって。
ライアン あなたがわたしに要求しているのは規則を破れということです。わたしにはそのつもはありません。
わたしは説得にかかった。
わたし ライアン。自分の地位を振りかざしたくはないが、この1件についてだけ規則は置いといて欲しいんだ。
ライアン あなたがわたしに規則破りを要求したと報告しなければならないようですね。
わたし 誰に報告するんだ。規則ポリスか?
ライアン わたしの上司にです。
わたしのいらいらが爆発した。
わたし ライアン。わたしが君の上司の上司だと説明しないといけないのか? 断固として言っておくが、君の選択肢は2つに1つだ。ブラッドのユーザー名を「bradb」に変えるか、ディレクトリ管理者を辞めるか!
ライアンはわたしの脅しに負け、例外を認めた。これについて何カ月も文句を言っていたが、そのうちおさまった。多分、ユーザーネームの例外要求が殺到しなかったので安心したこともあったのだろう。わたしは融通の利かないITを見るとライアンのことを思い出す。われわれIT業界の人間は、時に規則を重視するあまり顧客のニーズを直視しようとしない。規則を捨てて混沌を受け入れろと言っているわけではない。しかしわたしたちが規則を使うのは、サービスレベルを向上させるためであって、妨げるためではない。ハーバード大学のローレンス・カッツ教授の研究によれば、グローバル経済では融通の利く人物が報いられる。急速に変化する業務に長けた人材は、ルーティン業務の管理に長けた人材よりもはるかに貴重だ。
わたしたちのように変化の激しい顧客サービス中心の環境では、ITには適応とイノベーションの力が必要だ。適応性とイノベーションを制限する態度や規則に固執すれば、価値に制限をかけることになる。
本稿筆者のニール・ニコライゼン氏は、エネルギー/建設資材会社ヘッドウォーターズ(本社ユタ州サウスジョーダン)の戦略計画担当副社長。
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