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中小企業の課題を解決するSaaSスイートの利点SOAとSaaSスイート、導入検討のポイント【SaaSスイート編】

ソフトウェアの新しい提供モデル、SaaS。SaaS型業務アプリケーションスイートを用いた企業情報システムの構築と運用の利点について解説する。

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期待ほど進まない企業ITの変革

 ITのコモディティー化が進むことで、企業の大小を問わずPCとインターネットは広く利用されている。一方で、各種業務のIT化による生産性の向上や経営における意思決定の迅速化は、期待されたほどではない。これは、特に業務ソフトウェアの利活用における要件と、それを実現するためのコストとのギャップによるところが大きいと考えている。

 PC、携帯電話そしてインターネットの普及を背景に、コンシューマーITは非常に早いペースでイノベーションが進んでいる。Yahoo!、Googleなどのポータルや検索はもとより、Webメールブログ、SNS、ほか多様なWebアプリケーションが生み出され、その利用が広がっている。また、eコマースやネットマーケティングは、インターネット黎明(れいめい)期の期待を超える勢いで日常生活に浸透している。

 一方で、企業ITの変革は期待ほど進んでいない。その大きな原因は予算と人材に起因する。特に中小企業におけるITの利活用は、会計あるいは販売管理の一部といった事務効率化のみを目的とした範囲にとどまっている。その理由として、高価なシステムの所有負担に見合う効果が不透明、IT専門要員の確保が困難なため使いこなせない、といった点が挙げられる。

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図1●国内企業のIT課題(出典:「CIO調査2008」IDC Japan,2008)

 インターネットを経由してソフトウェアを利用するSaaS(Software as a Service)は、上記の課題を解決する新しい企業ITの利用モデルとして、2006年ごろから日本でも普及が始まっている。総務省や経済産業省の政策においても、中小企業のIT利用促進の起爆剤として取り上げている。本稿では、中小企業のIT利活用における課題・要件を整理するとともに、それらのSaaSによる解決策について解説していく。

中小企業のIT利活用における課題・要件の整理

 調査会社各社によれば、中小企業におけるIT投資は大企業よりも高い伸び率を示している。PCや携帯電話、インターネットの普及により、日常的なWebや電子メールの利用も広がっており、中小企業経営者や従業員のIT利活用の外的環境も整ってきている。

 しかし、中小企業のIT利活用、特に業務ソフトウェアによる経営改革は期待ほどは広がっていない。それは、次に挙げる幾つかの課題を克服していないからだ。

情報システム運用負担とリスクの担保

 自社運用型の情報システムの導入に当たっては、まずサーバを導入し、サーバOS、データベース、そのほかの必要なミドルウェアの導入と設定を行い、その上で各種業務ソフトウェアの導入と設定を行う。さらに情報漏えいやデータ保護の観点から、セキュリティ対策ソフトウェアやデータバックアップなどの各種管理用ソフトウェアの導入と設定も必要になる。以上、自社運用型の情報システム導入にまつわる作業を簡単に列挙したが、これらはサーバOS上の管理設定との密接な関係はもとより、ソフトウェア間の相互作用も考慮する必要があり、豊富な専門知識と経験を要する。

 中小企業では、IT専門要員が不在または人数が極めて限られているため、この要件を自ら満たすことは困難だ。また、外部の有料サービスを用いても初期導入コストが増えることは言うに及ばず、正しく要件を満たせるかどうかの見極めは難しい。加えて、ハードウェアの保守、各ソフトウェアの修正パッチ適用やバージョンアップなど、利用継続に伴う運用負担をコストとして考慮する必要がある。さらに、保守作業に伴うサービス停止時間のコントロールやトラブル回避には、十分な事前準備が必要だ。中小企業におけるITは、使い始めることはもちろんのこと、使い続ける上での要件とコストの見極め、解決策の選定が課題となる。

予見しやすく管理しやすいコスト構造

 中小企業は上記のような運用負担やリスク管理によって発生する費用をあらかじめ把握し、適切な予算を組むことが求められる。しかし、運用のトータルコストを事前に見積もることは一般的に難しい。単純に管理要員の人件費と利用製品各種の年間保守料金を積み上げるだけでは、目的を達成できないからだ。

 例えば、取引件数や従業員数の増加が事前の予測を超える伸びを示し、システムの処理能力不足に陥った場合、急きょハードウェアの増強やソフトウェアライセンスを追加購入しなければならない。これを事前に想定するには、さまざまな変動要因を適切に予見する必要がある。また、あくまで「想定」に対する「備え」であるため、予算折衝において適当な予算額を獲得するための説得は難しい。また、新しいセキュリティインシデントの発生と緊急対策に要する費用をあらかじめ見積もっておくことは難しい上に、決して先送りができない事象である。情報システムが真に中小企業経営の基盤となるためには、定められた予算の範囲で一定のサービスレベルを維持し続けることが求められる。

経営環境の変化への迅速な対応

 企業経営の素早い変化にIT環境を合わせる、いやむしろ変革を加速することがIT利活用による期待効果の1つといえる。しかし実際には、ITが企業の成長の足かせとなってしまう場合すらある。

 そうならないためには、取引件数や従業員数の急増、事業領域の拡大に迅速に応えるスケーラビリティや柔軟性の確保が重要だ。自社運用システムの場合、処理能力や機能に余裕を持たせたサーバやソフトウェアの上位バージョンの利用が1つの解決策だが、それでは利用開始当初から余分なコストが掛かってしまう。経済状況が厳しい中では、企業は楽観的な成長予測よりも、むしろ慎重な需要見積もりに合わせたシステム投資を選択するだろう。

 しかし、もし予想を上回る勢いで事業が拡大した場合、システム能力不足に直面し、切迫した状況になってから急きょサーバの増設や入れ替え、ソフトウェアのアップグレードなどを行うことになる。結果として、想定外の追加コストと、長時間のシステム停止などによる機会損失が発生し、企業の成長を阻害してしまうのである。

 ITがより戦略的に利用されるためには、取引件数や従業員数といった経営環境の変化に適正コストで素早く対応できることが求められる。

迅速なROI

 ITを用いて新たに実装した業務プロセスやサービスは、その実装に要した時間・費用に対応した期待効果が設定される。当然、実装に掛かる時間・費用はできるだけ抑えられるべきであり、かつできるだけ早期に導入成果を生み出すことが期待される。そのため、導入設定やカスタマイズ作業の容易さはもちろんのこと、エンドユーザーにとっての分かりやすさ、使い勝手の良さが求められる。

ユニバーサルアクセス

 携帯電話やインターネットの普及により、時間と場所を問わず常に最新の情報にアクセスし、取引を行えることは必須要件となってきた。しかし、自社運用型のシステムでこれを実現するためには、モバイルアクセス用のゲートウェイやインターネットVPNへの投資をはじめ、セキュリティ強化や連続可用性の確保のための追加投資が求められる。

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