直下型地震や計画停電を耐え抜くためのキーワード“クラウド型DR”とは?:月額10万円のシステム丸ごとバックアップで事業継続に挑む
自然災害や停電時などの事業継続は、地域や企業規模を問わずシステム管理者共通の課題だ。迅速にシステムを復旧させたいが、コストは抑えたい。こうした現場の悩みを解決する災害・事業継続対策サービスが登場した。
天災や事故による被害からの迅速な回復に加え、被害を最小限に食い止めるための対策であるディザスタリカバリ(DR)。そのシステム面での取り組みは、データを保護するためのバックアップ環境の整備と、システムをできる限り早期に復旧するための仕組みの確立が柱となる。
DRの大切さを浮き彫りにしたのが、2011年3月の東日本大震災だ。震災をきっかけにDRの整備や見直しを始めた企業は多い。TechTargetジャパンが2012年3月に実施した読者アンケートでも、BCP(事業継続計画)策定時に対象とするリスク項目について聞いたところ、「サーバ停止などのITシステム障害リスク」を挙げた回答者は69.3%に達した。
今後は首都直下型地震の発生や夏の計画停電も予想されており、DRの見直しは喫緊の課題といえる。だが、DRに必要なシステムの構築を進める企業の多くは、DR支援製品やサービスを導入する段階で多くの課題に直面することになる。
ディザスタリカバリの理想と現実
ここで、既存のDR支援製品やサービスの現状を整理しよう。各社が提供するDR支援製品/サービスは、データのみをバックアップするタイプと、システム全体をバックアップするタイプの2つに大別できる。
前者はデータの保護は実現できるものの、被害を受けたシステムを復旧するには代替ハードウェアの調達に加え、OSやアプリケーションのインストールといった膨大な作業が発生する。さらに、再構築したシステムを安定稼働させるためには1カ月以上要することも珍しいことではない(図1)。
後者については、万一の際にバックアップシステムに切り替えることで、極めて短期での復旧が可能となる。ただし、バックアップ対象が多様なため、必要なシステムの構築に数千万円程度掛かることがある。
双日システムズのプラットフォームソリューション本部で担当部長を務める谷川勝敏氏は、「従来の対策には一長一短があるのが実情だ」と語る。「データのバックアップはシステムの再稼働まで視野に入っていないため、迅速な復旧が確約されているわけではない。一方、システム全体のバックアップを自社で遠隔地に構築するのはコストが高く、計画から実行までに多大な時間を要してしまい、中堅・中小企業にとって現実的な対策とはいえない」(谷川氏)
こうした中、双日システムズは2011年11月、データとシステムの双方を安価にバックアップできるサービスを開始した。クラウドベースのDRサービス「nDRクラウドサービス」がそれだ。
データとシステム双方の保護を低コストで実現
nDRクラウドサービスでは、データとシステムを双日システムズのデータセンターに用意したDRサイトにバックアップできる(図2)。具体的には、ノベル株式会社のDR支援製品「PlateSpin」を利用し、ユーザー企業の拠点にあるサーバのイメージデータを取得。データはIP-VPNやIPsec VPNなどセキュアな回線を利用しDRサイトに送信する。その後は毎日、更新されたデータなどの差分データのみをバックアップする仕組みだ。「基幹システムやグループウェア、ワークフローなど、一般企業での業務継続に必要といわれるシステムの保護であれば、膨大なコストをかけてリアルタイムにバックアップを取る必要もない。こうしたシステムにnDRクラウドサービスは最適だ」と谷川氏は説明する。
障害発生時は、バックアップしたイメージデータをDRサイトにあるサーバに展開してシステムを仮稼働させる。DRサイトでの仮稼働は3カ月まで継続でき、その後はDRサイトにバックアップしたイメージデータをユーザー企業のサーバに展開、もしくはIaaS(Infrastructure as a Service)などのクラウドへ移行することでシステムを完全復旧する。
nDRクラウドサービスの最大の魅力は、初期費用28万円、月額費用10万円からという利用料金の安さにある(図3)。
双日システムズのプラットフォームソリューション本部PSビジネスプロモーション部で技師を務める白鳥精康氏は「万一のための備えであるDRに対して積極的にコストを割くことは難しいのが現実だ。コスト面でDRに二の足を踏む企業を後押しするために料金を抑える努力をした」と説明する。
低料金を実現できた理由は何か。谷川氏は、「当社が培ってきた技術力やノウハウに加え、双日グループのシナジーを生かした」と説明する。同社は以前から手掛けてきたユーザー企業向けのストレージシステム構築サービスにおいて、低コストなストレージシステムを構築するノウハウを蓄積してきた。加えて、データセンター事業者のさくらインターネットとシステムインテグレーターの日商エレクトロニクスという双日グループ2社の協力により、データセンターの運用コストを極限まで抑えることができたという。
大阪と北海道の2つのデータセンターを選択可能に
簡単にDR環境を整備できるだけでなく、運用の手間が軽減できる点もnDRクラウドサービスのメリットだ。サービスの利用に必要なエージェントをユーザー企業のサーバにインストールする作業から、DRサイトの運用までを双日システムズが一手に担う。そのため、ユーザー企業はVPNゲートウェイ機器の設置などわずかな作業だけで済む。なお、接続する回線はユーザー企業が自由に選択することができる。
ユーザー企業のシステムによっては、バックアップの手順やツールの設定などで工夫が必要な場合もある。双日システムズはこれを踏まえ、導入前の検証作業を無料で実施する。双日システムズのプラットフォームソリューション本部PSビジネスプロモーション部で主任を務める川本政文氏は「利用開始後の不具合のリスクも事前検証により発見できる」と説明する。加えて、復旧時のシステム切り替えのリハーサルのために、一時的なDRサイトの稼働を有料で実施するなど、運用まで視野に入れた支援体制を持つ。
双日システムズは、DRサイトを用意するデータセンターの選択肢を拡充することも検討している。現在選択できるデータセンターは大阪・堂島にあるデータセンターのみだが、北海道・石狩のデータセンターも選択可能にすることを計画中だ。石狩は、首都直下型地震の発生が予想される東京や大阪と比べて地震が発生しにくく、30年以内に震度6弱以上の地震に見舞われる確率は0.1〜0.3%程度とされる。より強固なDRを実現するならば、石狩データセンターは有力な選択肢の1つになるだろう。
同社はユーザー企業のニーズに応じて、nDRクラウドサービスに他のソリューションやサービスを連携させて提供するケースもあるという。東栄住宅はnDRクラウドサービスの基盤を活用し、ファイルサーバとグループウェアのデータのバックアップシステムを自社の拠点とクラウドの双方に設けることで、バックアップの冗長化を実現したという。
システム全体のバックアップとシステムの復旧までを低料金で実現するnDRクラウドサービスは、ユーザー企業がDRに取り組む上で不可欠な存在となるはずだ。
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