可視化、自動化、標準化でITILに沿った運用を支援する「Senju Family 2013」:運用自動化製品紹介【第7回】
運用自動化機能にフォーカスし、統合運用管理製品ベンダー7社を取材する本連載。今回は野村総合研究所の「Senju Family 2013」を紹介する。
野村総合研究所(以下、NRI)は2013年2月5日、統合運用管理製品の最新バージョン「Senju Family 2013」を発表した。ユーザー部門や開発部門からの要求に効率的に対応するためのサービスデスク機能や運用自動化機能などを強化。NRI自身のデータセンター運用管理ノウハウを反映し、運用現場のニーズをきめ細かくくみ取った製品に仕上げているという。
これまでの記事
- 第1回 “日立の運用ノウハウ”を簡単に導入・活用できる「JP1 Automatic Operation」
- 第2回 構成情報に基づいて自動運用を最適化する「Systemwalker Runbook Automation」
- 第3回 プライベートクラウドの実現を視野に入れた「WebSAM vDC Automation」
- 第4回 全体最適に向けた自動化を実現する「HP Operations Orchestration software」
- 第5回 ユーザーのITリソース入手をセルフサービス化する「CA Automation Suite for Clouds」
- 第6回 ITILに準拠した運用管理作業を自動化する「IBM SmarterCloud Foundation」
NRIのデータセンター運用ノウハウを自動化テンプレートとして提供
Senju Family 2013は、システムの稼働状況監視やジョブ実行・管理など、各種運用管理作業を一元的に行える「Senju Operation Conductor」と、サービスデスク機能や問題管理、構成・変更管理機能などによってITILに沿った運用管理を支援する「Senju Service Manager」、マルチベンダー製品に対するハブ機能や、運用スタッフ、開発スタッフ、経営層など、立場・役割に応じたシステム運用情報提供機能などを持つ「Senju Enterprise Navigator」の3製品で構成する。このうち運用自動化の核となるのがSenju Operation Conductorだ。
Senju Operation Conductorは、物理/仮想サーバのCPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率をはじめ、300種類以上の監視項目に対応。監視した稼働情報をグラフなどで可視化する「キャパシティー管理」機能や、エージェントレスでシステムの構成情報を自動収集して一元管理できる「構成管理」機能などを持つ。
「どの仮想サーバが、どの物理サーバにひも付いているか」など、物理/仮想が混在した環境の構成情報も正確に把握できる。サーバ、ネットワークなどシステムを構成する各管理対象について、マルチベンダー製品に対応している点もポイントだ。
そうした機能群のうち、あらかじめ設定した手順に沿って運用管理作業を自動化するRunbook Automation機能を提供するのが「イベント管理」機能だ。仮想サーバのプロビジョニングや障害対応など、「複数のツールを使った、複数のステップを踏む作業」を自動化できる。
イベント管理機能の特徴は2つ。1つは専用のGUIツールを使ってあらかじめ用意された各種運用作業部品を選択。ドラッグ&ドロップ操作で画面上に配置し、線でつないでいくだけで複数のツールを使った複雑なステップを踏む作業を自動化できること。
運用作業部品は「リソース容量確認」「関係者へのメール通知」といった「コマンド」単位で用意。これを基に2つの粒度で運用手順を定義できる。具体的には「仮想サーバのプロビジョニング」など、“各種コマンドをつなげた一連の作業”である「チャプター」単位、複数のコマンドやチャプターを組み合わせて、条件分岐も含めた複雑な作業手順を設定する「ブック」単位だ。
これによって運用手順を定義することで、例えば「ユーザー部門からの仮想サーバ配備要求を受けて、運用管理スタッフが空きリソースを確認。関係者の承認を得た上で、自動的にプロビジョニングする」など、“人が判断するステップも含めた一連の作業”も自動化できる。
2つ目の特徴は、各種運用作業部品とともに、「レシピ」と呼ばれる“よく行う作業手順”のテンプレートを用意していること。NRI自身のデータセンター運営やSIerとしての経験から得られた運用ノウハウをベストプラクティスとして提供するもので、「監視テンプレート」「構成管理テンプレート」「障害対応テンプレート」など30種類の基本テンプレートを用意。これらを基にユーザー企業の要望に応じてカスタマイズして提供する。なお、「コマンド」単位の運用作業部品の数は非公表だが、こちらも要望に応じて開発・カスタマイズできるという。
NRI 営業担当部長 千手事業部の寺井忠仁氏は、「運用を自動化するためには、システム構成や運用プロセスの可視化、標準化が前提条件となるが、可視化、標準化には多大な手間と時間がかかる。Senju Operation Conductorはシステム構成を可視化できる他、NRIの豊富な運用ノウハウをテンプレートとして用意している。運用プロセスの標準化、自動化のハードルを大きく下げられることに加えて、可能なプロセスから段階的に標準化、自動化を図ることで、運用効率の着実な向上が狙える」と解説する。
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3製品の連携で、ITILに沿ったシステムの自動運用を実現
一方、Senju Service Managerは前述のように、ユーザー部門や開発部門からの要求を一元的に受け付けるサービスデスク機能をはじめ、申請処理のワークフロー機能やインシデント管理、問題管理、構成/変更管理機能などを持つ。
Senju Enterprise Navigatorは、役割・立場に応じたシステム情報を提供する「マルチビュー」機能や、マルチベンダーの運用管理製品を連携させる「ハブエンジン」機能などを提供する。これらをSenju Operation Conductorと連携させることで、ユーザー部門や開発部門からの要求をサービスデスク機能によって一元管理し、自動的かつ迅速に応える環境が整うという。
例えば仮想サーバのプロビジョニングの場合、業務部門のエンドユーザーがSenju Service Managerのサービスデスク画面を通じてリクエストを申請すると、Senju Operation Conductorのイベント管理機能が、Senju Service Managerのワークフロー機能を使って承認フローを回す。承認され次第、Senju Operation Conductorが設定された運用手順に基づき、Senju Enterprise Navigatorのハブ機能を通じて各種運用管理ツールを制御しながら、自動的に仮想サーバのプロビジョニングを行う。同時にSenju Service Managerがシステムの変更、構成管理も行う。これにより、運用管理のベストプラクティス集、ITILに沿った自動運用を支援する仕組みだ。なお、昨今はサービスデスク機能や変更、構成管理に対するニーズが大きいことから、Senju Service Manager はSaaS版でも提供している。
「ポイントは、物理/仮想環境や、SaaS、IaaSといったパブリッククラウドが混在したハイブリッドな環境でも一元管理し、自動運用プロセスを実行できること。3製品によって運用プロセスを標準化、自動化することで、迅速なサービス提供とコスト削減、さらに人的ミスの抑止による運用管理の品質向上も狙える点は大きなメリットといえる」
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なお、ジョブスケジューラはSenju Operation Conductorの一機能として用意している。こちらも専用のGUIツールにより、条件分岐などを含んだ複雑なジョブフローでも効率的に定義できる。
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