「第6回 教育ITソリューションEXPO」リポート
“タブレット派”も“紙と鉛筆派”も納得の学校向けIT製品とは?
教育現場のIT活用が進んでも、紙と鉛筆といった昔ながらの手段の良さはなくならない。こうしたアナログな手段のメリットや要素をうまく取り込んだIT製品を紹介する。
「タブレットや電子黒板は、紙や鉛筆の置き換えではない」――。ITの効果を引き出している教育機関に共通するのは、紙や鉛筆といった従来のアナログな手段を生かしつつ、その補完的な要素としてIT製品を活用するという姿勢だ。
映像や画像による多彩な表現力、情報共有の容易さなど、IT製品ならではのメリットは数多い。だが自分の考えを手元のメモにさっと書き残したり、付せんに書いて壁やホワイトボードに自由に貼り付けたりといった手軽さでは、アナログな手段に分がある。結局、デジタルとアナログ双方をいかに使いこなすかが重要になる。
2015年5月に開催された教育関係者向け年次イベント「第6回 教育ITソリューションEXPO」(以下、EDIX)では、デジタル教科書をはじめ紙からデジタルへの移行を支えるIT製品に混じり、アナログな手段の良さを巧みに取り入れたIT製品が展示されていた(写真1)。本稿では、EDIXの展示内容の中から、こうした製品をピックアップして紹介する。
紙のノートに動画を埋め込み“デジタルノート”化
紙のノートにできないことの代表例として、動画や音声といったマルチメディア要素の活用がある。これをデジタルの世界で可能にするのがデジタルノートアプリケーションだ。一般的なデジタルノートアプリは、文字入力から動画挿入まで全てデジタルの世界で完結する。情報の保管場所や入力手段が一本化できるので煩雑さは抑えられるものの、紙のノートからは独立してしまい、双方の良さを生かしにくい面もある。
最近では紙のノートをそのまま取り込み、そこに動画などデジタルならではの要素を付け加えることを可能にしたデジタルノートアプリが登場している。東芝情報機器のWindows 8/8.1タブレット用デジタルノートアプリ「dynaSchoolデジタルノート@クリエイターズ」は、こうした製品の1つだ。タブレットのカメラ機能で紙のノートを取り込み、余白部分に動画などを埋め込んで、紙とデジタルを融合させたデジタルノートを完成させることができる(写真2、3)。
主に、小学校など初等教育現場での利用を想定する。価格はオープンプライスだが、1ライセンス4000円程度で販売する。
“デジタル模造紙”をタブレットで実現
教室で班ごとに机を向かい合わせて、大きな模造紙に複数の学習者が考えを書き留めたり、ポスターなどの作品を仕上げたりする――。画面が小さなタブレットでは難しいこうした作業が容易にできることも、紙などアナログな手段が持つメリットだ。さすがに模造紙そのものをデジタル化するのは難しいものの、複数のタブレットを組み合わせて連動させることで、こうした作業をしやすくするIT製品も登場している。
こうした“デジタル模造紙”ともいえる機能を備えるアプリの1つが、日本インフォメーションのホワイトボードアプリ「AC Board」である。米Appleのタブレット「iPad」用アプリであるAC Boardは、写真やPDFファイルを「カード」として画面に配置し、位置や大きさを自由に変更して配置できる機能を持つ。その特徴は、最大4台までのiPadを連動させて、仮想的な1つの大画面を構成して、“デジタル模造紙”を実現できることだ。
例えば、4人の班で机と一緒に各自のiPadを向かい合わせれば、4台のiPadの画面を1枚の模造紙のように利用できる。ある学習者の端末で開いたカードを拡大して、他の学習者の端末の画面にまで表示したり、大きな1つのカードに複数人で同時に書き込みをしたりといったことも可能だ(写真4、5)。小型の「iPad mini」と通常のiPadとを組み合わせることもできる。
iPadのカメラ機能を使って付せんや名刺といった四角形のものを撮影すると、そのままの見た目でカードとして取り込めるスキャン機能など、アナログな手段とのつながりを意識した機能も備える。AC BoardはAppleの公式アプリストア「App Store」で販売されており、価格は720円(税込)。同様な機能を持つシステムには、世田谷区立砧南小学校が利用する「XingBoard」などがある(参考: iPadとデジタルペンが生む「児童の“頭の中”を丸見えにする授業」とは?)。
鉛筆で書き込める電子黒板も
タブレットと並び、教室内で使うIT機器の代表的な存在である「電子黒板」。その電子黒板と、アナログな筆記手段の代表格である鉛筆を組み合わせて活用できる製品がある。米Newline Interactiveの液晶ディスプレイ型電子黒板「TRUTOUCH X7」がそれだ。静電容量方式のタッチパネルを採用した70インチディスプレイを採用。タブレットのように指でタップして操作できる他、一般的な鉛筆をスタイラスペンのように使って文字を書き込むことができる(写真6、7)。
鉛筆で電子黒板を操作できることには、実利的なメリットもある。電子黒板では、画面への書き込みや画面操作に専用ペンを利用するのが一般的だ。だが専用ペンは一般的なホワイトボード用マーカーペンと比べると高価であり、調達も難しい。ペン先の位置特定に使うセンサーの種類によっては、専用ペンがないと画面への書き込みや操作ができなくなる電子黒板もあり、専用ペンの紛失時には授業に支障が出かねない。鉛筆など汎用の筆記具で書き込みや操作ができれば、こうした課題からも解消される。TRUTOUCH X7の価格は非公開だが、市場価格は約150万円。国内では販売代理店であるフォースメディアが販売する。
その他、紙に書いた文字や絵を即座にデータ化できるNeoLABのスマートペン「Neo smartpen N2」、電子ペーパーを使って紙のような文字のきめ細かさを再現したソニービジネスソリューションの「デジタルペーパーDPT-S1」など、アナログとデジタルを融合したり、アナログの良さをデジタルに取り入れたIT製品が展示されていた。アナログとデジタル双方の良さを生かしたこうした製品は、今後も充実していくと考えられる。
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