HP分社化までの道のり
そのときHPの歴史が動いた――歴代CEOたちの戦略の変遷を振り返る
米Hewlett-Packard(HP)の過去を振り返ってみると、HP Inc.とHewlett Packard Enterpriseへの分社化に至る重大な分岐点があったことが分かる。
シリコンバレーの立役者だった米HPは、近年、幾つもの重大な分岐点を経験し、2015年11月、ついにHP Inc.とHewlett Packard Enterpriseという2つの企業に正式に分割された。
最初にその案が出たのは、今回の分社化の約5年前のことだ。2010年、当時のCEOだったレオ・アポテカー氏は、その8年前の2002年に吸収合併した米Compaqを主体とするPC・プリンタ部門を分社化することを提案した。アポテカー氏はソフトウェア分野出身だが、HPが「どの方向へ向かうべきか」分かっていたと米ITコンサルティング会社Pund-ITのアナリスト、チャールズ・キング氏は話す。
米カリフォルニア州シリコンバレーを築いたHPは、1995年のデビッド・パッカード氏の著書のタイトルにもなった“HPウェイ”と呼ばれる社風で有名だ。キング氏によると、シリコンバレーの「最も優秀で最も聡明な」人材を採用することでも知られていたという。HP社員のほとんどは最後までHPで働くつもりだった。同社はどんなことをしてでもレイオフを回避しようとしていたという。
「だが、状況は大きく変わった」とキング氏は語る。
1990年代末ごろ、HPは1つの転換点を迎えた。カーリー・フィオリーナ氏のCEO就任とCompaqの吸収合併だ。この2つの出来事が、最終的にエンタープライズ事業とコンシューマー製品事業を切り離す決断につながったと業界ウオッチャーらは見ている。
フィオリーナ氏は米AT&Tでは業績を上げたが、HPのテクノロジーにはさほど精通していなかった。共同創業者ウィリアム・ヒューレット氏の息子でCompaq買収に反対だったHP役員のウォルター・ヒューレット氏とは公然と対立した。
キング氏によると、フィオリーナ氏はデータセンターからデスクトップまであらゆるものを提供する「グローバルテクノロジー企業」を作ろうとしたのだという。CompaqとHPを1つにすることで、不動の市場シェアを獲得する考えだった。
2005年、フィオリーナ氏が職を追われたころには、HPは「ぼろぼろの状態」に陥っていた。「散々に破壊され、昔の栄光は見る影もなかった」(キング氏)
その後CEOに就任したマーク・ハード氏は、HPの製品にはあまり詳しくなかったものの、バランスシートに強かったとキング氏は話す。だが、在任期間は短く、その退任はまるでテレビドラマのような見出しで報じられた。後任のレオ・アポテカー氏の在任期間はさらに短く、同氏が実施した企業向けインフラソフトメーカー、英Autonomyの買収は後に度々批判された。
2010年代に入ってからメグ・ホイットマン氏がCEOに就任したが、米eBayでの経歴はHPの事業と関連性がなく、キング氏は「興味深い」人事だったと評する。ホイットマン氏は2011年、社内検証の結果、個人向けシステム部門を維持することが顧客と株主とパートナーにとってベストであるという結論に達し、PC部門を分社化する計画を覆した。だがその3年後、HP経営陣は、PC部門のHP Inc.とエンタープライズ部門のHewlett Packard Enterpriseという2つの企業に分社化することを決定した。ホイットマン氏はこの戦略で事業を立て直し、競合他社に対抗する考えだ。競合のうちの1社である米Dellは、HPとは逆の戦略を進めており、米EMCを買収する計画で規模を拡大しようとしている。
「2、3年もすれば、今回の分社化も1つの重大な分岐点と見なされるだろう。現時点では、メグ・ホイットマン氏の成し遂げた実績だ」(キング氏)
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