常に出口戦略を用意すべし
ほろ苦い経験から学ぶ、クラウド “ベンダーロックイン”回避策
OracleやIBMやMicrosoftには、ベンダーロックインへの懸念を生み出した歴史がある。現在同様の懸念はAWSにも存在する。ユーザー企業は苦い歴史を繰り返さないようにしなければならない。
企業のIT意思決定者の大半は、ベンダーロックインに陥るとパブリッククラウドのビジネス価値を最大限に引き出せないと考えている。アプリケーションをパブリッククラウドへ移行したがらないIT責任者が多いのは、1社のクラウドに依存すれば柔軟性が損なわれるとの懸念があるからだ。
実際、Amazon Web Services(Amazon)のようなパブリッククラウド事業者による圧倒的な市場占有は業界にとってマイナスだと指摘する研究結果も幾つかある。Amazonによるロックインを警戒するIT管理者は、「Amazon Web Services」(AWS)の「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)や「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)といった汎用サービスは利用しても、データベースやアプリケーション開発環境など特定用途のサービスを避ける傾向にある。先々、そうしたサービスのあらゆる側面をクラウドが支配し、柔軟性を制限することへの懸念からだ。
併せて読みたいお薦めの記事
クラウドベンダーによるロックインの懸念
ロックイン名人からの脱却
だがこの状況は私たちにとって初めてではない。何年も前、企業はOracleやIBM、Microsoft製品への移行をめぐり、同じような懸念を抱いていた。懸念の核となるのはいずれも、「プロプライエタリなデータベースやOSに移行すると、そのプラットフォームに長期的にロックインされることにならないだろうか」という不安だ。かつてベンダーはこうした懸念に対し、安心できる答えを提供しようとした。そして誰も、「1つの技術を選べば、ロックインされる」という本当の答えは聞きたがらなかった。
ベンダーロックインに陥ると、技術を移行するコストは法外になる。格好の一例がOracleだ。ただしIBMやMicrosoftなど他のベンダーにも、多かれ少なかれ同じ問題がある。データベースをOracleに移行したにせよ、新しいデータベースを構築したにせよ、新たに別のデータベースに移行するには相当の費用と労力が必要だ。
Oracleのネイティブ言語やネイティブAPIで記述したストアドプロシージャやトリガーなど、ネイティブでプロプライエタリな機能を使用した場合、問題はさらに悪化する。だが全ての機能をフルに活用し、最大限に価値を引き出せるのでなければ、なぜテクノロジーを購入するのか。残念ながら、こうしたネイティブな機能は短期的なメリットを提供できる一方で、ロックイン状態を強める可能性がある。
あれから数十年がたった今も、クラウドに関しては真にオープンな技術はない。例えばクラウドベンダーが提供するデータベースは、APIやモデルなど、プロプライエタリな技術を使用する傾向がある。そのためデータを他のクラウドに移行するとなると、高くつく可能性がある。それほどプロプライエタリではないオープンで安価な技術もあるが、費用やリスクを理由に移行に踏み切らずにいる企業が多い。
場合によっては、AWSでOracleを実行したりクラウドサービス「Oracle Cloud」を利用したりなどして、従来のデータベースやアプリケーション開発プラットフォームをクラウドで実行しなければならない。そうした企業は高いライセンス料金を払い続けることになる。
過去の教訓を生かす
かつて企業向けソフトウェアにロックインされていた時代から、IT管理者はどのような教訓を学べるのだろうか。その知識をどう生かせば、クラウドベンダーによるロックインを回避できるのだろうか。
まず、常に出口戦略を用意しておくことだ。パブリッククラウドのクラウドネイティブなデータベースに移行するなら、その技術からどう撤退するかを考えておく必要がある。オープンな技術とクローズドな技術のどちらに移行するかは関係ない。どちらにもロックインの問題はある。出口戦略は必ずしもAmazonによるロックインのリスクを軽減するものではない。だが特定のベンダーに対する財務的および組織的なコミットメントは軽減できる。
次に、いずれは撤退できるクラウドプラットフォームを選ぶことだ。例えば、一流のクラウドデータベースベンダーであれば、ごくわずかなコストとリスクで他のプラットフォームに移行できるプロセスやツールを用意しているはずだ。
最後に、プロプライエタリな機能はなるべく使わないこと。ネイティブAPIは魅力的だが、他のクラウドプラットフォームでは使えない。アプリケーションは常に、明日にでも移行するつもりで開発する必要がある。ことによると、本当にそうなるかもしれないのだから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
7
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
8
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
9
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー