大規模アーカイブを支えるテープストレージ事例【後編】
大学計算センターがアーカイブに「クラウド」ではなく「テープ」を選んだ理由
テキサス大学オースティン校のテキサス先端計算センター(TACC)は、大規模アーカイブシステムのストレージをQuantumのテープライブラリに移行し大きな成果を得た。テープライブラリならではの課題とメリットとは。
University of Texas at Austin(テキサス大学オースティン校)のTexas Advanced Computer Center(TACC:テキサス先端計算センター)は、「Ranch」という大規模アーカイブシステムを運用し、研究者向けにデータ保管サービスを提供している。
TACCは10年以上、Ranch のインフラにOracleの階層型ストレージ管理製品「Oracle Hierarchical Storage Manager」(Oracle HSM)を利用していた。爆発的に増加するデータに対処し、ユーザーにアーカイブ容量を適切に割り当てる――。その方法を模索していたTACCは、Ranch のインフラをDataDirect Networksの分散型RAID技術「SFA Declustered RAID」(DCR)を搭載したブロックストレージシステム「SFA14K」と、Quantumのテープライブラリ「Scalar i6000」に移行。新しい保管ポリシーを策定することで、アップロードデータの増加と独自のテープ形式による諸問題を解決できたという。
前編「大学の計算センターが『毎月2PB増えるストレージ』を刷新 最大の課題は」に続き、後編はTACCのRanch移行プロジェクトの詳細な手順について深堀りする。
「ストレージは無制限」という考えを捨てさせる
アーカイブの移行には、Quantumのテープライブラリ「Scalar i6000」のクオータ(共有ストレージの上限容量)管理機能が役に立った。この機能によってユーザーへの厳密な容量割り当てを実現し、ユーザーがRanchで使用しているデータ量を確認できるようになった。Ranchの管理を担う上級システム管理者フランク・ドウマ氏は、クオータ管理機能について次のように説明する。「これはユーザーに対して『ストレージは無制限』という考えを捨てさせ、許可された容量を超えてアップロードしないようにする方法だ」
TACCは、Quantumのテープライブラリを2018年春に最初に購入し、その年の終わりの頃に使い始めた。ドウマ氏と、TACCの大規模システム担当でシニアシステム管理者兼マネジャーであるジュンソン・ヘオ氏は、「Ranchは10年以上もOracle HSMを使用していたため、テストと実装には特に注意を払った」と口をそろえる。全てのデータを新しいQuantum製品の環境に移行する必要があり、移行プロセスは完璧でなくてはならなかった。
Quantum製テープライブラリへの移行の責任は、TACCとユーザー側にあった。TACCは2020年3月まで、古いライブラリへのアクセスを読み取り専用に設定し、ユーザーに新しいQuantum製テープライブラリへの読み取り/書き込みアクセス権を与えた。保持すべきファイルを新しいアーカイブに選択的に移動するかどうかはユーザー次第だ。このようにデータ移行をユーザーに委ねたため「移行の進捗(しんちょく)度は不明だ」とドウマ氏とヘオ氏は言う。
Ranchにとって大きな課題は、Quantum製テープライブラリをニアライン(利用頻度の高いオンラインと長期保存を目的とするオフラインの中間)ではなくアーカイブとして使用するように、ユーザーを教育することだった。多くのユーザーはテープ媒体の制限を理解しておらず、Ranchからの割り当てをオンラインファイル同期サービス「Googleドライブ」のようなものとして扱っている、とドウマ氏は述べる。「Quantumのテープライブラリをニアラインのように扱うと、全ユーザーにとって好ましくない影響が出る。アーカイブとして使用すべきであり、永久に保存される無制限のストレージと考えてほしくない」とドウマ氏は語る。
Quantum製テープライブラリの実装は、TACCのユーザーコミュニティーへの注意喚起にもなった。ドウマ氏によると、この移行によってユーザーはTACCのポリシー変更を理解し、不要なファイルのアップロードを自重し、現在のRanchの利用方法に注意を払うようになったという。
Ranchは膨大な量のデータをアーカイブする必要があるため、パブリッククラウドへの移行は現実的ではない。「クラウドからデータを取り出すのにかかるコストは天文学的だ。データが科学研究に使用されることを考えると、遅かれ早かれ全てのデータを取り出す必要が生じる可能性が高い」とドウマ氏は述べる。
テープストレージは、このような大量のデータをアーカイブするための媒体として利用されている。サーバとバックアップデータとの間にエアギャップ(ネットワークからの物理的な隔離)を作ることができ、保管に電力は不要で、発熱もない。
UNIX系OS「Oracle Solaris」と同様に、テープストレージの利用経験があるIT管理者を見つけるのは「ますます難しくなっている」とドウマ氏は言う。同氏は「これはマーケティングの問題であり、テープストレージを新世代のIT技術者にアピールすることが必要だ」と考えている。
「21歳のエンジニアに『テープ環境で働いてみないか』と誘っても興味を示さない。一方テープライブラリの見学ツアーをすると、ロボットが行き来する環境に誰もが興味津々だ」とドウマ氏は言う。
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大規模アーカイブを支えるテープストレージ事例
テキサス大学オースティン校のテキサス先端計算センター(TACC)は、研究者向けに「Ranch」という大規模なアーカイブシステムを運用していたが、それを支えるストレージの容量管理と運用スタッフ確保の問題に直面した。TACCがこれらの課題にどう取り組み、どのように解決したかを追う。
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