使われ続ける「Zoom」はもう“単なるWeb会議ツール”じゃない?:脱コラボレーションツール化するZoom【第1回】
コラボレーションツールベンダーZoom Video Communicationsの、EMEAにおける売上高は減少傾向にある。同社が今後も事業の成長を継続させるためには、何が鍵になるのか。EMEA責任者の見方は。
コラボレーションツールを提供するZoom Video Communicationsにとって、「Microsoftの製品を使用しない」「Microsoftの製品が好きではない」と考える企業の社内コミュニケーションを、いかに支えられるかが鍵になる。Zoom Video CommunicationsでEMEA(欧州、中東、アフリカ)の責任者を務めるフレデリック・マリス氏は、「ベンダーとして成功するには欧州市場が重要だ」と語るが、EMEAにおける同社の売上高は、米国市場に比べて楽観視できる状況ではない。
Zoom Video Communicationsに入社する前、マリス氏は「AutoML」(自動機械学習)を専門とするAI(人工知能)ベンダーDataRobotでEMEA担当のバイスプレジデントを務めていた。企業としての成長を促進するためには、EMEAにおけるさまざまな業務を監督し、包括的な視野で首尾一貫した計画を立案する人材が必要だとZoom Video Communicationsが判断したと同氏は捉えている。では今後、「Zoom」はどうなるのか。
今後も使われる「Zoom」は単なる“Web会議ツール”じゃない?
マリス氏は、販売パートナーが売上高の創出に大きな役割を果たすと考えている。製品のローカライズ、セキュリティやデータ主権(データの制御と管理に関する権利)の機能強化も視野に入れている。欧州での売上高が減少傾向にあるZoom Video Communicationsにとって、売上高を増加に転じさせることが重要だ。
Zoom Video Communicationsの2023年度(2022年2月〜2023年1月)の売上高は、米国市場では前年同期比10%増を記録。一方、EMEAでは同9%減となった。原因は、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機や、コンシューマー向け事業の不振などにある。アジア太平洋地域の売上高は5%減だった。
2024年度第1四半期(2023年2〜4月)もEMEAにおける同社の売上高は落ち込み、前年同期比8%減だった。この落ち込みは、ロシアによるウクライナ侵攻に加えて、従業員の約15%に当たる1300人を削減する計画が遅延したことなどに起因するものだ。
Zoom Video Communicationsは2つの課題に直面している。コラボレーションツール市場における競争激化と、企業としての成長の鈍化だ。投資情報誌「Investor’s Business Daily」は、同社が将来成功を収めるかどうかは、同社が提供してきた既存のWeb会議ツールを、顧客のビジネスを強化するための多様なツール群に変えることができるかどうかに懸かっていると指摘する。
マリス氏によると、法人市場での同社の売上高は増加傾向にあるという。2024年度第1四半期は前年同期比13%増だった。総売上高に占める法人市場の比率は、前年同期は52%だったのに対し、2024年度第1四半期は57%に上昇した。「法人市場でZoomの魅力を高め続けることが重要だ」とマリス氏は語る。
第2回は、Zoom Video Communicationsがコラボレーションツールを提供するだけのベンダーから脱却しようとする取り組みを紹介する。
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