最新ストレージのトレンドは? ベンダー3社の“一押し機能”はこれだ:ストレージはどう進化しているのか【前編】
ストレージベンダーは近年、自社製品のデータ共有機能や管理機能を強化する傾向にある。本稿はPanzuraとQuantum、CTERA Networksの新製品の主要な機能を取り上げ、ストレージ市場の変化を説明する。
SDS(ソフトウェア定義ストレージ)を提供するベンダーからストレージハードウェアを提供するベンダーまで、ストレージベンダーは新機能を備えた製品の開発に力を入れている。特に充実しつつあるのはどのような機能なのか。
市場調査会社のThe Futurum Group でシニアアナリストを務めるデイブ・ラッフォ氏は次のように説明する。「オブジェクトストレージの普及やフラッシュメモリの改良に伴い、クラウドストレージへのアクセス速度が向上したことで、ストレージの設計においてオンプレミスストレージを選択する必要性が薄れている」。今後はオンプレミスストレージかクラウドストレージかに関わらず、特定の業界や用途向けの独自機能にユーザー企業の注目が集まると同氏は予測する。
従来のストレージは単にデータを保管するためだけのシステムだったが、ユーザー企業は必要な場所にデータを移動させる機能を重視する傾向にある。「以前は企業の事業部門ごとに選んでいたストレージを、アプリケーションごとに選ぶようになるなど、選び方も変化している」と、ラッフォ氏は市場の変化を解説する。
ストレージベンダー3社が発表、最新のストレージ製品の機能とは
ストレージベンダー3社の発表を基に、ベンダーがどのような新機能の強化を重視しているのかを見てみよう。
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2023年9月から10月にかけて、ストレージベンダーのPanzuraとQuantum、CTERA Networksは、ストレージ管理のための新機能や新製品を発表した。
Panzuraが発表したデータ管理製品「Panzura Edge」は、同社のクラウドファイルシステム「Panzura CloudFS」で管理するストレージへの、安全なリモートアクセスを実現する。Panzura Edgeは、CloudFSにファイル共有機能とセキュリティ機能を追加する。エンドユーザーはこれらのサービスを利用することで、ファイル共有の際に「Dropbox」や「Box」といったオンラインストレージサービスのようにファイル共有ができるようになる。
PanzuraはPanzura Edgeの開発に当たり、BoxとDropboxを意識している。機能の面では、シャドーIT(IT部門が関与しないIT活用)やデータ流出など、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)をはじめとしたサイバー攻撃へのセキュリティ対策に焦点を置いている。エンドユーザーのアクセス時の多要素認証やデータの暗号化、制限時間付きのファイル共有機能などがその一例だ。
Quantumは、コラボレーション機能を搭載したストレージサービスに加えて、クラウドコールドストレージサービスの新製品を発表した。同社の「DXi Cloud Share」は、バックアップ用アプライアンスの「Quantum DXi」と併用することで、オンプレミスのバックアップストレージで取得したバックアップデータをユーザー企業が利用中のクラウドサービスに移動し、階層化できる。
「FlexSync 3」は、Quantum製ハードウェア向けのデータ移行ツールだ。オンプレミスインフラで管理するバックアップデータを、パブリッククラウドまたはプライベートクラウドで稼働するストレージにレプリケーション(複製)できるようにする。同社のアーカイブデータ向けコールドストレージサービス「ActiveScale Cold Storage」は、Quantum製ハードウェアにオンプレミスインフラまたはクラウドインフラから取得したアーカイブデータのレプリケーションを実行する。Amazon Web Services(AWS)の「S3 Glacier Flexible Retrieval」や「Glacier Deep Archive」などのコールドストレージサービスと併用が可能だ。
ファイルシステムベンダーのCTERA NetworksはQuantumと同様に、ハイブリッドクラウド向けデータ管理ツールの「CTERA Enterprise File Service Platform」の新機能である「CTERA Fusion」をリリースし、ハイブリッドクラウドストレージの管理に力を入れる。
CTERA Fusionは、従来の同社のServer Message Block(SMB)やNetwork File System(NFS)ファイルシステムと同じファイルシステムを使い、「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)互換のオブジェクトデータをファイルデータとして読み書きできるようにする。これにより、顧客が人工知能(AI)アプリケーションの開発といった用途に利用するために、ファイルデータをS3のストレージにレプリケーションする必要がなくなる。こうすることで、ストレージコストを削減できる。
後編は、複数の専門家の見解を基に、ストレージベンダーの動向と、ストレージの機能が今後どう進化するのか考察する。
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