Zoomではなく「Teams」を使う理由は? 料金や機能の特徴は?:TeamsとZoomのどちらを選ぶべきか【前編】
「Microsoft Teams」は、Microsoft製アプリケーションと連携がしやすいユニファイドコミュニケーションツールだ。テレワーク中のコラボレーションツールとしてのTeamsのメリットと特徴とは。
近年はハイブリッドワーク(オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方)が普及したことで、コラボレーションツールの必要性は増すばかりだ。従業員同士がバーチャルにつながる手段として代表的なツールは2つある。ユニファイドコミュニケーション(UC)ツール「Microsoft Teams」(以下、Teams)と、Zoom Video Communications(以下、Zoom社)のWeb会議ツール「Zoom」だ。どちらも従業員のテレワークを支援するツールだが、使い勝手や備える機能、連携できるツールに違いがある。本連載は両者でできることとできないこと、セキュリティや利用料金における違い、導入事例を紹介する。
Teamsの歴史
Microsoftは2017年、人気ではあるものの時代遅れになりつつあった「Skype for Business」の後継ツールとしてTeamsを発表した。当初のTeamsは、サブスクリプション形式のオフィススイート「Microsoft 365」(当時は「Office 365」)の企業向けプランで利用可能なツールの一つだった。
Microsoftの狙いはシンプルだ。Microsoft 365にTeamsを組み込むことでユーザー企業がTeamsを採用しやすくなるよう仕向け、他社のコラボレーションツールよりも優位に立とうとしている。要するに同社は、企業のITリーダーが「Microsoft 365にすでにお金を払っているのだから、コラボレーションツールとしてTeamsを使ってもよいだろう」と思える状況を作ったのだ。
Teamsの特徴
利用料金とプランごとの違い
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TeamsとZoomを知る
TeamsはMicrosoft 365の小規模企業向け「Business」シリーズと、大企業向け「Enterprise」シリーズにバンドルされている。2023年12月時点での利用料金は、一番安い「Microsoft 365 Business Basic」プランの1ユーザー当たり月額6ドル(日本版は750円)から、一番高い「Microsoft 365 E5」プランの1ユーザー当たり月額57ドル(日本版は7130円)までとなっている。無料版の機能は有料版と同じだが、制限がある。例えば、利用できるファイルストレージ容量は有料版では1ユーザー当たり1TBだが、無料版ではチームで利用できるファイルストレージ容量は10GB、1ユーザー当たり2GBまでに制限される。無料版はWeb会議の録音・録画機能などの一部機能を利用できない。Teamsが備えるさまざまなコラボレーション機能をフルに活用したい企業は、有料版を選択すべきだ。
有料版が備える基本機能に加えて、幾つかのオプション機能を追加するためのアドオンライセンスを購入することも可能だ。これは電話、PBX(構内交換機)、PSTN(公衆交換電話網)、音声会議などの機能を利用したい場合の選択肢になる。購入できるアドオンライセンスは、契約するプランの種類によって異なる。例えばBusinessシリーズの3プランのいずれかを利用している企業の場合、通話プラン付きのアドオンライセンス「Microsoft Teams Phone with Calling Plan」(国内通話付きTeams電話)か、通話プランなしの「Microsoft Teams Phone Standard」(Microsoft Teams電話スタンダード)を選択可能だ。日本国内でTeamsでの電話発着信を利用する場合は、PSTN経由の直通電話番号とPSTNのルーティング(経路制御)にサードパーティーのサービスを使用することになるため、前者を選択することになる。Microsoft Teams Phone Standardのライセンス料金は、2023年12月時点で1ユーザー当たり月額8ドル(日本版は1000円)だ。
導入、管理のしやすさ
TeamsとZoomを比較した場合、Teamsの長所は、Microsoft 365の他のツールやサービスと同じように導入、管理できることだ。Microsoft 365はSaaS(Software as a Service)なので、企業がオンプレミスサーバやソフトウェアを用意する必要はなく、Microsoft 365の管理ポータルサイトを通じて管理できる。Microsoft 365をすでに導入しているなら、Teamsの導入と管理は容易だと言える。
Web会議機能
画面共有、ホワイトボード、会議中のチャットなど、TeamsはWeb会議向けの機能を複数備える。より多くの視聴者に会議内容をストリーミングできる「ライブイベント」機能を使えば、最大同時参加者数1万人のWeb会議を開催可能だ。Microsoftは自社製品に加えて、複数のハードウェアベンダーと提携し、Teamsに適した音声機器、ビデオ機器などのWeb会議用ハードウェアをそろえている。TeamsはID・アクセス管理システム「Active Directory」と連携させてチームメンバーを管理したり、メールクライアント「Microsoft Outlook」の「予定表」と連携させたりすることもできる。
Teamsは多彩なWeb会議向け機能を備えるが、企業間というよりも同一企業内のWeb会議用に使用されることがほとんど、というのが筆者の私見だ。企業間でのWeb会議においては、Zoomや「Cisco Webex」などのWeb会議ツールを使用する方がよりスムーズにWeb会議を開催できると考える企業が珍しくない印象だ。とはいえ、新たなツールを導入するコストを避けるために、企業間のWeb会議にもTeamsを使用する企業があるのも事実だ。この点でのTeamsに対するZoomの優位性はわずかなようにも見える。
Microsoftが競合ツールとの差異化を図るために、Teamsで提供する機能の例を以下に挙げる。
- 会議参加者を小規模グループに分割できる「ブレークアウトルーム」
- 通話やWeb会議の録画・録音におけるコンプライアンス確保のためのポリシーの設定
- より没入感のある音響を実現する「空間オーディオ」
- 外線通話をTeamsで扱えるようにする「ダイレクトルーティング」
- 会議中のメモ作成機能と、作成したメモの共有機能
- 外部ユーザーをチームに招待し、外部ユーザーのアクセスを管理、制御できる「ゲストアクセス」
テレフォニー機能
Teamsのテレフォニー機能は、3つのカテゴリーに分けることができる。1つ目が、自社の電話システムをTeamsに完全に置き換えたい企業向けの「Microsoft 365 Business Voice」だ。Teamsで内線通話、内線のルーティング、ハントグループ(内線番号のグループ分け)、ボイスメールなどのUC機能を管理できる。
2つ目が、PSTNを介した外線通話だ。この仕組みを用いる場合、Teamsのユーザー企業はPSTNプロバイダー(電話通信サービスを提供する企業)を選択し、外線通話を処理するPSTNプロバイダーのゲートウェイ装置「セッションボーダーコントローラー」(SBC)を介して、Teamsを電話サービスに接続するダイレクトルーティングを使う。
3つ目が、PSTNを介した電話会議、またはビデオ通話と電話会議を組み合わせられる「Teams電話」を利用する方法だ。
連携機能
Teamsの大きなメリットの一つは、Microsoft Outlook、ファイル同期サービス「OneDrive」、メモツール「OneNote」などのMicrosoft 365の他のツールとシームレスに連携できることだ。ITサービス管理ツール「ServiceNow」、CRM(顧客関係管理)ツール「Salesforce」、プロジェクト管理ツール「Trello」などのサードパーティー製業務ツールとも連携可能だ。これらの連携により、業務プロセスの合理化、自動化につながる。
セキュリティとコンプライアンス
TeamsはMicrosoft 365のサービスの一つとして、他のMicrosoft 365サービスと同様のセキュリティフレームワークに従っている。アクセス保護として、Teamsは2要素認証、SSO(シングルサインオン)、通信時と保存時のデータ暗号化を採用している。EDR(エンドポイント脅威検知・対処)製品「Microsoft Defender for Office 365」によって、メッセージやファイルをスキャンすることも可能だ。
Microsoftは、Teamsユーザーの個人データを収集したり販売したりすることはないという点で、コンプライアンスは守られている。コンプライアンス機能としては、データ保管ポリシーの適用、eディスカバリー(電子情報開示)やリーガルホールド(訴訟に必要な証拠保全のための手順)に応じたデータ抽出や削除、コンテンツ検索、監査、レポート機能などをそろえる。
中編は、Zoomの概要を解説する。
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