「ローコード/ノーコード」の真の目的とは? 会社を変える“市民開発者”たち:ローコード/ノーコード開発の利点と注意点【第3回】
事業部門の従業員がアプリケーションを開発できるようになることを期待して、企業はローコード/ノーコード開発ツールに目を向けている。メリットはそれだけではない。実際の導入事例を交えて説明する。
最低限のソースコードを記述する「ローコード開発」、ソースコードを記述しない「ノーコード開発」は、ITを専門としない従業員によるアプリケーション開発を可能にする。こうした開発体制に魅力を感じた企業が、次々にローコード/ノーコード開発ツールを導入し始めた。だが有識者に言わせれば、それは「主な目的ではない」という。実際にローコード/ノーコード開発ツールを使った企業の事例を交えて、そのメリットを確認しよう。
ローコード/ノーコード開発ツールを使ってみた企業の声
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連載:ローコード/ノーコード開発の利点と注意点
ローコード/ノーコード開発事例
シドニー・マディソン・プレスコット氏は、かつてSpotify Technologyでグローバルインテリジェントオートメーションリーダーを務めていた。プレスコット氏によると、市民開発への移行によってSpotify Technologyはまず経理部門のスキルアップを実施した。「CoEの開発者による自動化と並行して、経理部門による独自の自動化も実装した」とブレスコット氏は振り返る。
UiPath社のセールスエンジニアリングバイスプレジデントであるマニッシュ・パテル氏は、Spotify Technologyの取り組みを「われわれが市場で見ていることの典型的な例」だと表現する。「自動化を第一に考えている顧客企業が、ローコード/ノーコード開発ツールに魅力を感じるようになりつつある」とパテル氏は話す。
パテル氏はUiPath社の顧客企業である、スウェーデンの銀行Ikano Bankを例に挙げる。Ikano Bankは、異なる国にある7つの支店で迅速に自動化を拡大するために、40人の市民開発者の社内チームを構築したという。
デジタルトランスフォーメーション(DX)コンサルティング企業embracentでデジタルプラクティスリードを務めるガレス・カミンズ氏は、「スキルを有する人材不足を補うことがローコード/ノーコード開発ツールの主な目的ではない」と語る。ただし「熟練した開発チームがタスクから解放され、開発がスピードアップするのであれば、間違いなくメリットの一つだ」とも語る。ローコード/ノーコード開発ツール市場のリーダーの一社であるMicrosoftは、同社のローコード/ノーコード開発ツール群「Microsoft Power Apps」の月間利用者数が2022年時点で700万人を超えると主張している。Microsoft Power Appsを利用するITコンサルティング企業Accentureは、同社の従業員がデータ管理業務に費やす時間が短くなり、ビジネス成果をより早く達成できるようになったと説明する。
企業向けソフトウェアベンダー大手のほとんどは、ローコード/ノーコード開発ツール市場の動きに反応し、何らかの形でローコード/ノーコード開発機能を提供中だ。SalesforceやServiceNow、Oracle、SAPといったERP(統合業務システム)関連ベンダー各社は、自社製品を通じてローコード開発を可能にしている。
ERPベンダーのUnit4にとって、ローコード開発は既存のコアアプリケーションよりも迅速に、顧客企業特有の要件に応えるツールやデータでワークフローを充実させることだ。「ローコード開発ツールはERPの機能拡張に役立つ」と、同社CTO(最高技術責任者)のクラウス・イェプセン氏は語る。
「ERPを変革したい企業は、ローコード開発ツールを使うことで、従来のコアシステムを標準化された形で残しつつ、コアシステムを拡張、連携、カスタマイズ可能だ。これにより拡張機能がコアシステムに組み込まれるのを待つ時間が減り、ERPの変革からより素早く恩恵を得られるようになる」(イェプセン氏)
次回は、ローコード/ノーコード開発ツールのメリットをより引き出すための注意点を紹介する。
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