同じSSDでもなぜ「NVMe」接続はSASやSATAとは“別物”なのか?:駆逐するSSD、生き残るHDD【第4回】
SSDの接続に使われる「NVMe」は、SATAやSASとは何が違い、なぜSATAやSASとは別物の技術だと見なせるのか。SSDをより深く理解するための基本を解説する。
SSDをより深く知る上でとりわけ重要であり、ストレージの購入や運用においても頻繁に接することになるのが「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)だ。これがストレージの接続に関わる仕組みであることを知っている人は少なくない。
NVMeは「SATA」(Serial ATA)のような類似する規格とは何が違い、そうした規格とは“別物”だと見ることができるのはなぜなのか。その根拠となる点を解説しよう。
「NVMe」がSASやSATAとは“全然違う”理由はこれだ
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駆逐するSSD、生き残るHDD
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SSDとHDDの今後を左右する動向
フラッシュストレージ専用に開発された転送プロトコルがNVMeだ。汎用(はんよう)インタフェースである「PCle」(PCI Express:Peripheral Component Interconnect Express)を介した転送を前提にしている。NVMeはSSDを接続するための規格の一つとして使われている。
NVMeが登場する以前、SSDは接続規格としてSATAや「SAS」(Serial Attached SCSI)を採用することが一般的だった。SATAやSASは、HDDが主流だった時代に使われるようになった技術だ。NVMeが広く使われるようになる中でも、SATAやSASは現役だ。2024年現在、いまだに使われ続けており、ベンダー各社は2.5型や3.5型のフォームファクターのストレージを搭載するストレージアレイを提供している。
SSDのパフォーマンスを引き出すためのインタフェースで活躍しているのがNVMeだ。もともとNVMeは、SATAやSASなどHDDが使用するインタフェースに頼るのではなく、SSDにおけるデータ読み書きのパフォーマンスをより引き出せるようにするために開発された。
NVMeが革新的だったのは、キュー(命令の列)とバッファー(一時的な記憶領域)を、SSDが搭載する記憶媒体である「NAND型フラッシュメモリ」に最適化したことだ。キューの並列処理を実施することで、より高速に転送できるようになった。これはHDDに使われてきたSATAやSASを、SSDにも使用するのとは全く異なる発想だった。
ストレージベンダーは、NVMeを通信規格の「イーサネット」(Ethernet)や、光ファイバーや同軸ケーブルを使うデータ転送技術「ファイバーチャネル」(Fibre Channel)でも使えるようにした。この技術は「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)と呼ばれる。NVMe-oFによって、物理的に離れたデバイス間でのNVMe接続が可能になる。
NVMe-oFはイーサネットやファイバーチャネルの他にも、インタフェース規格「InfiniBand」や通信プロトコル「TCP」(Transmission Control Protocol)、メモリ同士で直接データ転送をする技術「RDMA」(Remote Direct Memory Access)などを介して転送する仕組みを備える。
次回は、SSDとHDDのパフォーマンス面での違いを解説する。
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