TLCやQLCではなく「第1世代SSD」こそが“最強”だった理由:SSDの大容量化は良いことばかりではない【後編】
SSDの用途が広がってきた背景にあるのは、SSDの容量を増やす技術の進化だ。だが、SSDの大容量に伴うデメリットを避けるために、「第1世代のSSD」を選ぶこともある。
SSDの容量を増やす技術の進化に伴い、SSDは次第にさまざまな用途で使われるようになった。だが、SSD大容量化には幾つかのデメリットが伴うことから、初期のSSD、いわば「第1世代のSSD」をあえて選ぶこともある。SSD大容量化の技術に関係するメリットとデメリットとは何か。第1世代のSSDが好まれるのはどういう場合か。
TLCやQLCではなく「第1世代SSD」こそ最強なのはなぜか
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SSDが搭載するNAND型フラッシュメモリには幾種類かの記録方式があるが、「疑似SLC」(pSLC:pseudo-SLC)については一般的な記録方式と同じに見ることはできない。
一部のSSDが搭載している疑似SLCモードは、NAND型フラッシュメモリの初代の記録方式である「SLC」(シングルレベルセル)を復活させる使い方だ。SLCは、1つのメモリセル(記憶素子)に1bitを記録する。疑似SLCにすることで、読み書き速度の改善や、耐久性の向上といった利点が得られる。ただし疑似SLCに変更することにはデメリットもある。保存容量が減少することと、コスト効率が低下することだ。
1つのメモリセルに複数bitを記録する方式の一つに、「QLC」(クアッドレベルセル)がある。QLCは、1つのメモリセルに4bitを格納する。容量で見れば、QLCはSLCよりもはるかに大きな容量を確保することが可能だが、デメリットもある。SLCに比べて読み書き速度が低下することや、耐久性が低下することだ。そうしたデメリットを補うための選択肢として、一部のSSDベンダーは疑似SLCという機能を組み込んでいる。
疑似SLCの機能が組み込まれることがあるのは、以下の記録方式によるNAND型フラッシュメモリ搭載のSSDだ。
- MLC(マルチレベルセル)
- 1つのメモリセルに2bitを格納
- TLC(トリプルレベルセル)
- 1つのメモリセルに3bitを格納
- QLC(クアッドレベルセル)
- 1つのメモリセルに4bitを格納
疑似SLCの想定用途
企業がSSDを必要とするほとんどの用途では、TLCのようなより大容量を確保しやすいSSDが適してるものの、SLCあるいは疑似SLCを使う方が望ましい用途もある。以下はその一例だ。
- 特別な耐久性の高さが要求される用途
- データが生成される場所の近くで演算処理をするエッジコンピューティング
- モノのインターネット(IoT)
- 遠隔地にサーバとストレージが設置されていて、その機器のメンテナンスのために訪問することがほとんどないようなケース。例えば軍事、石油、ガスなど
- 読み書き性能の高さが要求される用途
- 大量のデータを高速に処理する必要のあるトランザクション(一連の処理をまとめて実行すること)など要件が厳しいプロセス
疑似SLCの機能を搭載するSSDの価格は、基本は一般的なSSDよりも高額に設定されている。その点を加味しても、疑似SLCは非常に特殊な用途向けのSSDだと言える。
疑似SLCを提供するベンダー
主に組み込みシステムや、産業用、IoT用などを対象に疑似SLCを搭載する製品を提供するベンダーは以下の通り。
- ATP Electronics
- 疑似SLCを内蔵した組み込みSSD(組込みシステム向けのSSD)の製品を提供している。
- 疑似SLCにすることで、同等のTLC製品の耐久性を10倍上回ると主張している。
- Hyperstone
- 疑似SLCモードをサポートするフラッシュメモリコントローラーを提供している。
- Sabrent
- 幅広い分野で活用できるように、全てのフラッシュストレージに疑似SLCのキャッシュを搭載している。
- Silicon Power Computer & Communications
- 3D(3次元)NAND型フラッシュメモリをベースとした、耐久性を特徴とした疑似SLC搭載SSDを提供している。
- SMART Modular Technologies
- MLCまたはTLCをベースとする疑似SLC搭載のSSDを提供している。
- Swissbit
- 幅広い産業を対象にした、TLCまたは疑似SLCのセグメントに分割可能なSSDを提供している。
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